社内研修「利用者の人数(実利用者数や開所日数、延利用者数など)、定員超過利用減算(150%・125%減算)、人員基準と常勤換算」
毎月恒例の月1社内研修が令和3年6月22日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。
はじめに
就労移行支援や就労継続支援B型なんかの障害福祉サービスを展開していると調査票なんかで利用者の人数や人員基準・常勤換算について聞かれることがあります。
しかし、これがなかなか大変でして、まず、利用者の人数。利用登録者や実利用者数、延利用者数とどれを答えていいのかイマイチ分からない場合があったりします。また、それぞれの意味についても分かりづらく、最初の方は結構苦労した記憶がありますね~。
そして、人員基準・常勤換算もなかなか難しい。ルールの改定に次ぐ改定で結構ごちゃごちゃになってきておりまして、特に今回は施設外就労のユニットが廃止されましたんで、少しはマシになったものの、やはり、初めての人にはちょっと分かりづらい感じとなっております。
改定に次ぐ改定にも対応し、一つにまとまっていて便利なのが「障害者総合支援法 事業者ハンドブック 指定基準編」と「障害者総合支援法 事業者ハンドブック 報酬編」です。この業界ではおなじみの書籍ですね。
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因みにこれら2冊は毎年7,8月ぐらいに今年版が発売されますんで、まだ2021年版は出ていません(2021年6月22日現在)。また、利用者の人数や人員基準・常勤換算については、各調査票や各都道府県なんかで解釈が微妙に異なっている場合もありますんで、詳しくは行政に聞くしかないんですが、今回の研修では厚生労働省のPDFを中心に一般的な内容について学んでいきたいと思います。
そこでまず参考になるのが厚生労働省のページの「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定について」です。
具体的には、
になります。
いずれも最終改正が令和3年3月30日に行われた最新版なんで、困った際はまずこちらのPDFをダウンロードして検索をかけて調べてみると便利かと思います。
利用者の人数を数える際の各名称・意味
まずは、利用者の人数を数える際の名称と意味について書いていきます。これは主に調査票で聞かれることが多いので、ぜひ押さえておきたいですね~。
利用登録者(利用登録者数)
利用登録者(利用登録者数)とは、利用契約を結び現在在籍している人の合計人数のことを言います。つまり、利用契約を行って現在所属している人ですね。「障がい者支援について考える その12「障害福祉サービス受給者証・自立支援医療受給者証・障害者手帳について知ろう…!」」で紹介した、障害福祉サービス受給者証の事業者記入欄に事業所の名称や契約日なんかが書かれている方とも言えます。
因みに入院などで月に一度も出勤しない人も利用登録者に含まれます。
実利用者数(実人数)
実利用者数(実人数)とは、利用登録者のうち、指定された期間中、一度でも実際に利用した人の合計人数のことを言います。実績記録票で通所したことが証明できる人とも言えますね。つまり、工賃発生の有無は関係ない為、例え、工賃が発生していなくてもサービスを提供したのであれば実利用者数に含まれる可能性が高いです。
因みに調査票の回答の際、月や年度で期間を聞かれることが多かったりします。
開所日数
開所日数とは、事業所を開けて、利用者さんを受け入れた日のことを言います。多くの事業所は日曜日なんかをお休みしていますんで、その場合は「月の日数-日曜日=開所日数」となります。例として、2021年6月で考えてみると、
- 30日(2021年6月の日数)-4日(日曜日の数)=26日
となるので、2021年6月の開所日数は26日となります。
因みに土日祝日関係なく事業所を開所している場合はそのまま月の日数が開所日数になります。
延利用者数(延人数)
延利用者数(延人数)とは、指定された期間中の利用日数の合計のことを言います。例えば、6月にAさんが20日間、Bさんが10日間通所した場合、6月の延利用者数は30(人)となる感じですね。
因みに利用定員数を用いて計算すると、その事業所が受け入れできる最大延利用者数を出すことができます(コロナなどによる例外措置を除く)。こちらについては後述に詳しく記載しております。
因みに利用定員数を用いて計算すると、その事業所が受け入れできる最大延利用者数を出すことができます(コロナなどによる例外措置を除く)。こちらについては後述に詳しく記載しております。
1日の平均利用者数(1日の平均実利用者数・1日あたり平均利用者数・前年度の平均実利用者数)
1日の平均利用者数(1日の平均実利用者数・1日あたり平均利用者数・前年度の平均実利用者数)とは、「延利用者数÷開所日数」のことを言います。
因みに、前年度の平均実利用者数で今年度の人員配置の必要職員数が決まります(前年度の平均実利用者数が0人の場合を除く)
因みに、前年度の平均実利用者数で今年度の人員配置の必要職員数が決まります(前年度の平均実利用者数が0人の場合を除く)
1日当たりの利用実績が150%を超えると減算・直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えると減算
次に、1日当たりの利用実績が150%を超えると減算って話と直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えると減算って話について書いていきます。この2つは聞いたことはあってもイマイチ良く分からないってパターンが多かったりする項目の一つですね。まず、根拠となっているものについては、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」の「日中活動サービスにおける定員超過利用減算の具体的取扱い」の減算事由となります。
ここに書いてある内容を簡略化して、
- 1日当たりの利用実績が150%を超えると減算
- 直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えると減算
と言ったりします。
なんでこんなルールがあるのかと言うと、例えば、ドームみたいなところで一気に大量の人を集めて、支援、後は1ヶ月間何もしないなんていう極端な支援ってなんか変ですよね…?一方で、精神の方に多いですが、当初通所する日だったのに体調不良でお休みになってしまったり、いきなり通所したりしてしまうパターンってのもありますよね…?
では、基本的には利用定員の範囲内に収めるとして、どこまで例外は認められるの…?って話になりますんでそれを決めたのが上記の150%、125%になります。
この150%、125%をもうちょい詳しく、分かりやすくまとめてみると下記のようになります(クリック又はタップで画像が拡大されます)
定員超過利用減算になるか実際に計算してみよう…!
では、150%と125%が分かったところで、定員超過利用減算になるか実際に計算してみようと思います。
1日当たりの利用実績が150%を超えているか計算してみよう…!
まずは、1日当たりの利用実績が150%を超えているか計算してみたいと思います。
これは簡単ですぐできるかと思います。
- 利用定員10名の場合=10名×1.5(150%)=15名を超えるとダメ(16人以上でアウト…!)
- 利用定員20名の場合=20名×1.5(150%)=30名を超えるとダメ(31人以上でアウト…!)
- 利用定員8名の場合=8名×1.5(150%)=12名を超えるとダメ(13人以上でアウト…!)
直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えているか計算してみよう…!
次に、直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えているか計算してみたいと思います。算数が苦手な方もレッツトライ…!
最初は過去3ヶ月間、事業所が利用定員の125%(最大人数)まで受け入れたら、利用実績がいくつになるのか計算してみたいと思います。
利用定員は一般的な数の20名とします。
2021年6月現在から考えて、直近の過去3ヶ月間を計算します。つまり、3月、4月、5月ですね。
日曜日以外を開所している事業所として考えていきます。つまり、開所日数は、
- 3月の開所日数:27日(31日-4日=27日)
- 4月の開所日数:26日(30日-4日=26日)
- 5月の開所日数:26日(31日-5日=26日)
とします。
では、上記例に則って計算していきましょう…!
【3月の125%の場合の延利用者数】
- 20名(利用定員)×125%(1.25)×27日(開所日数)=675
【4月の125%の場合の延利用者数】
- 20名(利用定員)×125%(1.25)×26日(開所日数)=650
【5月の125%の場合の延利用者数】
- 20名(利用定員)×125%(1.25)×26日(開所日数)=650
つまり、過去3ヶ月間、事業所が利用定員の125%(最大人数)まで受け入れたら、利用実績は、
- 675+650+650=1975
ということで、上記事例で考えた場合、過去3ヶ月間、事業所が利用定員の125%(最大人数)まで受け入れたら、利用実績は1975になります。これを超えたらアウト…!ってことですね。
因みに一気に行うなら、
- (3月の開所日数27日+4月の開所日数26日+5月の開所日数26日)×20名(利用定員)×125%(1.25)=1975
になります。
後は、実際の事業所の3月、4月、5月の延利用者数を足します。そして先程の125%利用実績を超えていないかチェック…!
- 3月の延利用者数+4月の延利用者数+5月の延利用者数≦1975
これでOKです。
因みに7月になれば直近の過去3ヶ月間は4月、5月、6月に変わりますのでまた計算し直し、8月になれば直近の過去3ヶ月間は5月、6月、7月に変わってまた計算し直しと段々畑のように毎月計算三昧になります。
つまり、1,2,3月→2,3,4月→3,4,5月→4,5,6月…って感じで毎月計算になるんですが、超大変。
メンドイのが超嫌いな私は、エクセルで自動計算するようにしちゃってますね~。これおすすめです。
人員基準(人員配置規定)と常勤換算(常勤換算方法)
人員基準(人員配置規定)とは、その事業所に最低何人、このような役割のスタッフを配置してね~というルールのことを言います。
例えば、利用者20人に対してスタッフが1人だけだったら、ちゃんと支援なんかできそうにないですよね。じゃあ、ぶっちゃけ、どのような役割の人が最低何人いるんだ…?ってなりますんで、そこで最低基準を定めたよ~ってのが人員基準になります(余談ですがコロナでルールの緩和がされていたりします)
んで、その人員基準を出すときに使うのが常勤換算(常勤換算方法・常勤換算法)という計算方法になります。
人員基準については「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」に定められております。
そして、実際に人員基準が満たされているかを分かるようにするために一覧表にしたのが「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」となります。因みに従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表は都道府県で書式が若干違いますが、大体項目は似ております。
「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」を用いながら役割等を見てみよう…!
人員基準は改正に次ぐ改正でルールがかなり加筆修正されておりまして、2021年4月現在では下記な感じとなっております。「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」と合わせてご覧ください。
- 管理者:(非常勤OK・兼務OK)実務経験2年以上又は役員クラス(と同等の人)
- サービス管理責任者:定員60人以下で一人以上配置。※一人以上は常勤
- 就労支援員:定員を15で除した数の配置(例:定員10名だと、10÷15=0.66…)0.6以上配置。※令和3年度から常勤を一人以上配置しなくてOK
- 職業指導員・生活支援員:それぞれ一人以上配置。前年度の平均実利用者数を就労移行支援は6、就労継続支援B型は7.5で除した数以上で配置(人員配置7.5:1の場合)。一人以上は常勤(どちらか片方でOK)
- 目標工賃達成指導員:非常勤OK。合計で1.0以上いくこと
- 前年度の平均実利用者数を6で除した数≦職業指導員・生活支援員・目標工賃達成指導員の常勤換算後の合計人数にする
- 上記項目4,5,6について、就労継続支援B型の場合は「目標工賃達成指導員対象施設の配置状況」に当てはめてみると分かりやすい
- 調理員:2Hで配置
【就労移行支援・就労継続支援B型の配置について】
- 就労移行支援に配置:管理者・サービス管理責任者・就労支援員・職業指導員・生活支援員・調理員
- 就労継続支援B型に配置:管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員・目標工賃達成指導員・調理員
【勤務形態(常勤・非常勤・専従・兼務)について】
- 「 常勤・非常勤、専従・兼務の考え方」が分かりやすい(下記表:クリック又はタップで画像が拡大されます)
- 注意事項としては「常勤≠正社員」と言うこと
「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」を使って実際に計算してみよう…!
人員基準は前年度の平均実利用者数から計算して出します。つまり、前年度の延利用者数が少なければ今年度の必要スタッフの最低人数も減りますし、逆に前年度の延利用者数が多ければ今年度の必要スタッフの最低人数も多くなります。
しかし、実際、急にスタッフを募集しても集まらない事なんて普通です。
そこで、もし、前年度の平均実利用者数が最大だったら、職業指導員・生活支援員は何人必要かを計算することによって、確保すべきスタッフの人数を割り出すことができます。これにより、利用定員を変えなければ、前年度の平均実利用者数に振り回されることなく職員を配置できるということです(コロナによる緩和措置を除く)
では、現在の利用定員の最大人数が前年度通所したら、職業指導員・生活支援員はどれぐらい配置しなければいけないのか計算してみたいと思います。
因みに計算はこれが最後です(笑)
今回は利用定員が20名だとします。
現在の利用定員の最大人数が前年度通所した場合(前年度の平均実利用者数が最大の場合)の計算は、「直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えると減算」ルールを守っている場合、利用定員×125%となります。
それを踏まえて考えると下記のようになります。
【就労移行支援の場合】
- 20名(利用定員)×125%(1.25)÷6=4.166…→4.1(小数点第二以下は切り捨ての為)
【就労継続支援B型の場合】
- 20名(利用定員)×125%(1.25)÷7.5=3.333…→3.3(小数点第二以下は切り捨ての為)
令和2年度まではこれに更に複雑な「施設外就労のユニット」ってのがあったんですが、令和3年度の報酬改定で廃止されたんでかな~り楽になりました。
それと先程登場した「直近の過去3ヶ月間の利用実績が125%を超えているか計算」同様、こちらも毎月問題ないか、エクセルで自動計算するようにしておくと、管理がめんどくないんでおすすめです。
個人的考察
上記は調査票や毎年4月頃に提出する前年度の利用実績の際に使います。また、給付費算定の届出の際にも記入する用紙がありますんで、是非覚えておきたいところですね~。
参考文献
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