【まとめ】牛肉(赤身肉)・豚肉・鶏肉の各メリット・デメリット・肉の質・AGEs
一昔前まではダイエットに肉は厳禁…!って話がございました。
しかし、今その話を信じている人はかなり少ないのではないでしょうか…?肉をたくさん食べて高タンパク食にした方がむしろ痩せる…!なんて話もありますしね。
そこで今回は肉の各メリット・デメリットについて掘り下げていきたいと思います。
牛肉・ラム肉などの赤身肉のそれぞれのメリット・デメリット
牛肉、ラム肉などの赤身肉には、鉄分や亜鉛、ビタミンB群、ミネラルなどが豊富に含まれております。また、赤身肉の鉄分(ヘム鉄)はタンニン(鉄分の吸収をブロックする働きがある)の影響を受けづらく、そのため、効率よく体に吸収されやすいというメリットがあるんですよね。つまり、野菜や穀物から摂れる鉄分(非ヘム鉄)よりも良いということです。
…なんだけど、注意点もあって、高温で焼くなどするとAGEs(=終末糖化産物。タンパク質を高温で熱すると出来る老化物質。強い毒性があり糖尿病を引き起こす)が大量に出てしまうなんてデメリットもあります。
う~ん。この辺は悩ましいですね~。生で喰うわけにもいかんですし(笑)
ということでこの当たりの対策は後半に書いておきます。
豚肉のメリット・デメリット
豚肉にはチアミン、ナイアシン、ビタミンB6、ミネラルなどが多く含まれているそうです。また、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は平均で、オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸=1:10ということで牛肉より劣る形となっております。しかし、その分メリットもありまして、AGEsの量は牛肉よりも豚肉の方が少ない傾向があるとのこと。鶏肉のメリット・デメリット
鶏肉にはナイアシン、ビタミンB6、ミネラルなどが多く含まれているそうです。更にイミダペプチド(疲労回復成分)が入っているのも大きなポイントで良い感じ。また、AGEsの量も赤身肉に比べて少ないのも特徴です。
…なんだけど、万能なお肉ってのはないみたいで、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は平均で、オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸=1:18と3つの肉の中では最下位でかなり悪い感じ。
牛肉(赤身肉)・豚肉・鶏肉のランキングをまとめると…。
では最後に牛肉(赤身肉)・豚肉・鶏肉をランキングにしてまとめてみたいと思います。
- 栄養面
- 1位:牛肉(赤身肉)
- 2位:豚肉
- 3位:鶏肉
- オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率
- 1位:牛肉(赤身肉)
- 2位:豚肉
- 3位:鶏肉
- AGEsの量
- 1位:牛肉(赤身肉)
- 2位:豚肉
- 3位:鶏肉
- 総合ランキング
- 1位:牛肉(赤身肉)
- 2位:豚肉
- 3位:鶏肉
このような結果ですね。
ということで健康面を考えると牛肉になりますが、他にも検討すべき事項が残っております。
忘れちゃならない「肉の質」問題
まずは「肉の質」問題の基本から。
いきなり結論から言うと代表的な問題は飼育環境となります。カロリーの質のところでも以前挙がっていたように、肉は飼育環境によってかなり変わってしまうみたいなんですよね。
例えば、成長を促進させるためにホルモン剤を使ったり、病気にならないよう抗生物質を混ぜたエサを与えたりすることがあるんですが、それらをすれば当然肉の質は下がります。
これは牛でも豚でも鶏でも同じです。
また、普通の店で売られている普通の鶏肉は、劣悪な成育環境でのケースが多いそうで、特に注意が必要とのこと(その分お安く手に入りますが)。逆に価格は高くなりますがグラスフェッドで飼育された肉は質が高くなります。
それらを考慮するとランキングは簡単にひっくり返ってしまいます。
つまり、上記ランキングにプラスアルファを付け加えるなら本当の1位はグラスフェッド牛ってことになりますね。
とはいえ私のような貧乏人にはグラスフェッド牛を毎日食べるなんていう人生は破たんとイコールなんで(笑)、そこらへんは懐と相談しつつ、食べていくしかないよな~ってのが現実的な落としどころのラインかと思います。
30年にわたる「肉の質」研究を見直してみた…!
では更に「肉の質」について詳しく見ていきましょう。
一般的に飼育環境は大きく2つに分かれまして、
- グラスフェッドビーフ:放牧牛のこと。自然環境の中で自由に暮らし、牧草のみ食べて育つ牛のお肉のこと
- グレインフェッドビーフ:穀物牛のこと。制限された環境の中で、穀物を食べて育つ牛のお肉のこと。基本的にスーパーで売っている牛肉はこちら
となっております。
そして安価なのがグレインフェッドビーフで、高価なのがグラスフェッドビーフなんですが、そもそもその他に何が違うの…?ってことで見ていきたいと思います。
2010年のカリフォルニア州立大学のレビュー論文によると、30年にわたる様々な「肉の質」の研究を見直してみたそうです。この研究は牛肉のみに焦点を当てておりますが、基本的に他のお肉でも同じことが言えるかと思います。
では早速ポイントを見ていきましょう…!
牛肉にはオメガ3脂肪酸もオメガ6脂肪酸も含まれている…!但し…。
まず一つ目のポイントは牛肉に含まれるオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸です。基本はオメガ3脂肪酸の摂取を積極的に、それ以上にオメガ6脂肪酸の摂取を減らそう…!って感じなんですが、グラスフェッドビーフとグレインフェッドビーフのどちらの牛肉にも脂肪酸は含まれております。
んが、しかし、グラスフェッドビーフとグレインフェッドビーフでは、その比率が結構違うんですよね。以前に書いた通り、このオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は非常に大事で、なるべく1:1に近づけられるようにしていくと良いんですよ。では、実際どれぐらい違うのかというと、
- お肉の種類の比率=オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸
- グラスフェッドビーフ=1:1.53
- グレインフェッドビーフ=1:7.65
って感じ。
まぁ、グラスフェッドビーフの方がオメガ3脂肪酸が多いのは分かるとしても、平均的な比率が5倍違うってのは衝撃的ですよね~。
グラスフェッドビーフに含まれる飽和脂肪酸は健康にも良い…!
グラスフェッドビーフに含まれる飽和脂肪酸(脂身)は健康にも良いらしく、主に下記の3つの脂肪酸が含まれているんだそうな。
- ステアリン酸
- ミリスチン酸
- パルミチン酸
植物性の共役リノール酸と違い動物性の共役リノール酸は体に良い…!
共役リノール酸は、植物油や乳製品などに多く含まれる不飽和脂肪酸(常温で液体の油)の一つで、一般的にそのほとんどがオメガ6脂肪酸となっております。つまり嫌われ者ですね(笑)。しかし実は共役リノール酸には脂肪燃焼効果があったりするんですよね。しかしデメリットがはるかに上回っているため話題になる事はなかったりします。
但し、共役リノール酸と一口に言っても、植物性と動物性では構造が違うそうで、牛肉やバター(ギー)などの乳製品に含まれるものはメリットが結構上回っているんですよ。
まず、植物性でみられるようなデメリットはありませんし、更に、
- 脂肪燃焼効果が高い
- 抗酸化物質の含有量が多い
- がん・アテローム性動脈硬化(心血管疾患)、糖尿病の発症を減らしてくれる
といった感じ。
そしてグラスフェッドビーフは、グレインフェッドビーフに比べて共役リノール酸の含有量が約2〜3倍っていうんだから見逃せませんよねー。
そしてグラスフェッドビーフは、グレインフェッドビーフに比べて共役リノール酸の含有量が約2〜3倍っていうんだから見逃せませんよねー。
グラスフェッドビーフには、抗酸化物質の他にもビタミンなどの含有量が多い…!
上記に書いたようにグラスフェッドビーフは、グレインフェッドビーフに比べて抗酸化物質の含有量が多いんですが、実はビタミンなどの含有量も多かったりするんだそうです。具体的には、- ベータカロテン
- ビタミンA
- ビタミンE
- グルタチオン
- スーパーオキシドジスムターゼ
などの含有量が多いとのこと。
これらはいずれも抗酸化作用が認められているものばかりでして、グラスフェッドビーフには、かなり期待して良さそうな感じ。
特にオメガ3脂肪酸の弱点である酸化に超弱いってところをこの抗酸化作用がガードしてくれるのが嬉しいところ。これを踏まえれば、5倍の差にも納得がいきますなー。
ということで、お肉の質にはなるべくこだわっていきたいですね~。
但し、お金が(泣)
忘れちゃならない「AGEs」問題
AGEs(Advanced Glycation End Products)は、タンパク質と糖が熱により合体した(糖化反応(メイラード反応)した)生成物の総称で、ご存知、代表的な老化物質となっております。
老化物質なんで、皆さんが歳を取った際に嫌だな~と思うこと(例えば肌のハリやツヤがなくなり、シミ、しわができる、たるむなど)が起きるわけですよ。更に糖尿病なんかも起きやすくなるなど血管や脳にも良くないんですよね。
そんな嫌われ者のAGEsは、お肉を焼くと生成されやすく、特に高熱調理はご法度。大量のAGEsが生成されます。つまり、加工食品に良くある揚げ物全般、唐揚げやフライやトンカツ、更にフライドポテトやパンケーキなどが危ない食べ物となります。
そんなAGEsと縁遠いように感じるのがベジタリアン(ビーガン)の方々…って気がするんですが、どうやらそうでもないみたいなんですよね…。
ベジタリアン(ビーガン)とお肉を食べる人のAGEsを調べてみた…!
2001年のスロバキア医科大学の研究によると、低温調理したお肉を食べる人とベジタリアンのAGEs(終末糖化産物)を比較してみたそうです。実験は、健康なベジタリアンを3つに分けたグループとお肉を食べるグループに分けたそうな。因みに各グループはこんな感じ。
- ビーガングループ
- ビーガンとベジタリアンの中間グループ
- ベジタリアングループ
- お肉を食べるグループ
3つのベジタリアングループの平均実施期間は1年ということです。
では、結果を見てみましょう…!
- お肉を食べるグループの方が3つのベジタリアングループよりもAGEsが明らかに低かった…!
意外ですねー。
なんでも、ベジタリアンは食事から摂取するAGEsが少ないのにお肉を食べる人たちよりも体内のAGEsレベルは高かったみたいです。
では、なぜこういった現象が起きるのかですが、可能性として、
- ベジタリアンはお肉を食べない代わりに野菜と果物を食べる。果物には果糖が大量に含まれている。果糖は体内で処理できる許容量を超えやすい物質である。また果糖はブドウ糖の約7倍のAGEsを作り出す働きがある
- お肉を調理すると確かにAGEsが出てしまう。しかし、高温で焼いた場合と低温で焼いた場合のAGEsの量はかなり違う。つまり調理法によってかなり差が出る
- 更にお肉にはカルノシンが含まれている。1998年のキングス・カレッジ・ロンドンの研究や2005年のウィリアムハーベイ研究所の研究によると、カルノシンはAGEsの生成を防ぐ効果があるみたい
といった形となっております。
ベジタリアンは果糖を含めて考えると高くなりそうですし、逆にお肉は調理法+カルノシンでダメージを抑えられるみたいですねー。
う~ん。難しい…。
カルノシンは鶏肉に多く含まれている成分なんで、私はバランスよく食べつつ、ちょっと鶏肉を多くし、揚げ物は避けていくって路線を取りたいと思います。
AGEsにはレモンか酢で決まりだ…!
2010年のマウントサイナイ医科大学の研究によると、AGEs(終末糖化産物)を減らすにはどうすれば良いのかを調べてみたそうです。まず、現代の食事は高温で焼いたり、揚げたりなど熱処理したものが主流で、これらには高レベルのAGEsが含まれております。そして高レベルのAGEsを含む食事を摂取することによって、酸化ストレスによるダメージと炎症が体内で起きてしまいます。また、酸化ストレスや炎症は糖尿病や心血管疾患の発症に関係しているとも言われております。
つまり、
- 食べ物を熱処理する
- 高レベルのAGEsを含む食べ物ができる
- 食べて、酸化ストレスや体内炎症が起きる
- 糖尿病や心血管疾患に…!
という流れになってしまうんですよね。
これをどう防げばいいのかを調べたのが今回の研究になります。
では、早速結果を見てみましょう…!
ということで、茹でずに焼いたり揚げたりしたものはヤバそうで、特に動物の肉はかなりヤバい感じ。対して、野菜や果物、全粒穀物、牛乳などの炭水化物はそこまで調理の影響がないみたいですね。う~ん。唐揚げや焼肉はやっぱだめかー。逆にじゃがバターや蒸かしたサツマイモは良い感じですね。
更にこの研究では具体的な調理の対策、おすすめの調理法についても書かれておりまして、これが非常に参考になる訳ですよ。では引き続き見ていきましょう…!
- 蒸かす調理法、短時間の調理法、低温調理法、レモンや酢などの酸性成分を使用したマリネにすると、AGEsが大幅に減少した…!
- 動物の肉(牛肉)をマリネに約1時間つけておくと、AGEsが半分程に減少した…!
マリネってすごいですねー。これを見ると、唐揚げにレモンをかけまくるのは非常に理に適っていていいのかも(健康を気にするならそもそも唐揚げを食べるべきではないのですが)
因みになぜレモンや酢などの酸性成分がAGEsに効くのかというと、酸性成分がタンパク質をほどよく分解し、糖とくっつくのを邪魔してくれるためとのこと。これはありがたいですわ~。
更にこの酸性成分(マリネ)は他にもメリットがあるそうで1998年のルンド大学の研究によると、お肉を高温調理すると発生する発がん性物質を9割以上も減らせる効果があったそうです。う~ん。肉を喰うならレモンやお酢で決まりですね…!
あと、低温調理法ならサラダチキンなんかが代表例。もしコンビニでご飯を買うならこちらを選ぶのもアリかと思います。
忘れちゃならない「ヘテロサイクリックアミン」問題
2010年のヴァンダービルト大学の研究によると、高温調理した肉とガンリスクの関係について調べてみたそうです。
そもそも、
- 焼く
- 揚げる
- グリルやバーベキューをする
といった高温調理法で肉を料理すると、高温料理中にクレアチンやクレアチニン、アミノ酸、糖なんかから、ヘテロサイクリックアミン(HCA:Heterocyclic amines)という発がん物質が作られてしまうんですよね。
んで、動物実験によれば、大量のヘテロサイクリックアミンは乳腺や肺、結腸、胃、前立腺なんかの腫瘍の発生率をアップさせてしまうんだとか。
そして、ヘテロサイクリックアミンは肉の料理する温度と時間が大きく関係しており、高温で長時間調理すればするほど、多く作られてしまうらしい。これが揚げ物ヤバいぜ…!と言われる大きな原因の一つですね。
また、肉の種類も関係しているみたいです。
では、人間だとどうなのか…?ってことで既存の先行研究をまとめてみたのが今回のレビュー論文になります。
まず研究者たちは、肉の摂取と調理法におけるガンリスクに関する研究をピックアップし、次にそのピックアップした研究の参考文献もチェックしたそうな。結果、質の高い研究が21件見つかったとのこと。次にそれぞれの研究結果をレビューしてみたらしい。
そのまとめが以下のようになっておりました。
- 結腸がん・直腸がん:7件の研究でピックアップされていた。1999年にスウェーデンで行われた初期の研究を除くと、肉の摂取量・ヘテロサイクリックアミンと結腸がん・直腸がんのリスクには正の相関関係があった…!また、ヘテロサイクリックアミンが多いとガンリスクが30%アップしたという研究や高温調理した肉を好む人の中でガンリスクが3倍も高かったという研究結果があった…!
- 乳がん:3件の研究でピックアップされていた。いずれも高温調理による肉の摂取量・ヘテロサイクリックアミンの量と乳がんリスクは正の相関関係があるという結果だった…!また高温調理した肉を好む女性は乳がんリスクが4.6倍にまでアップしたという研究もあった…!
- 前立腺がん:4件の研究でピックアップされていた。高温調理の肉の摂取量と前立腺がんリスクは正の相関関係あった…!詳しく見てみると、未加工の赤身肉や白身肉を大量に摂取しても前立腺がんのリスクはアップしていなかったが、加工肉の摂取量とは関係があった…!
- 膵臓がん:3件の研究でピックアップされていた。すい臓がんは人間にとって最も致死率の高いガンの一つだが、グリルやバーベキューで焼いた赤身肉や鶏肉の摂取量・ヘテロサイクリックアミンと膵臓がんリスクは正の相関関係があった…!但し、ある研究では赤身肉や高温調理した肉、加工肉の大量摂取した男性では膵臓がんリスクがアップしていたが、女性ではアップしていなかった。また、男性の膵臓がんリスクが約2倍にアップしたという研究もあった。
- 肺がん・胃がん・食道がん:4件の研究でピックアップされていた。いずれも肉の摂取量・ヘテロサイクリックアミンと肺がん・胃がん・食道がんリスクには関係性はありそうだが、研究例が少なく詳しくは不明であった。
これらを見ると、高温調理→ヘテロサイクリックアミンが増加→ガンリスクがアップ…!ってのはどうやらありそうですねー。
ということで、やはり肉の調理法は気を付けていきたい感じ。
揚げ物を回避し、低温調理法をメインにしていきたいですねー。
個人的考察
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の理想比率はオメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸=1:1なんですが、現代の食事ではまず不可能な数字で、加工食品やファストフードがはびこっている現在では大体、オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸=1:10~40になるそうです。