昨日の続きです。
今回も就活の面接等の自己アピール(自己PR)をどうすれば良いのか考えていきます。


質問からの自慢が良い印象を呼ぶ…!

2009年のハイファ大学の研究によると、自慢話(自己PR)とその印象について調べてみたそうです。
なんでも先行研究によれば、相手の質問に答えた自慢ってのは良い印象を与えるみたいなんですよね。なんで、

  • 相手から質問があったか…?
  • 自分が上手く会話を持って行って相手に質問させたか…?

に関係なく、質問に続く自慢は総じて良い印象を与えるんじゃないか…?と研究者は仮定したみたい。
この仮説を検証する為、2つの実験を行っております。


まずは一つ目の実験から見ていきます。
この実験はイスラエルの大学生105人(平均年齢23.64歳、女性72%男性26%2人は性別未回答)を対象に行われたそうで、参加者は以下の4つの実験条件にランダムに割り当てられたそうな。

  1. 自分から会話を始めた+質問ありパターン
  2. 自分から会話を始めた+質問なしパターン
  3. 相手から会話を始めた+質問ありパターン
  4. 相手から会話を始めた+質問なしパターン

それぞれの詳しい内容は以下のようになっておりました。


自分から会話を始めた+質問ありパターン

参加者には以下の話を想像してもらったそうです。
アヴィとダニーは数年前からの知り合いで、同じ大学に通っています。講義と講義の間の休憩中にカフェで二人は出逢いました。コーヒーを飲みながら、前の週に何をしたか、週末の計画はどうかについて話しました。
その時の会話がこちらです。

  1. アヴィ:最近、勉強の調子はどう…?
  2. ダニー:すんごい大変。アヴィは…?
  3. アヴィ:すんごい大変。統計学の成績が貼り出されていたけど見た…?(自分から会話を始めた)
  4. ダニー:見た見た。掲示板の前を通りかかった時にね。成績はどうだった…?(質問あり)
  5. アヴィ:実は最近、学校の成績が良いんだよね…!今回の成績はA+だったの…!
  6. ダニー:そうなんだ、あ、講義が始まるからいかないと…!
  7. アヴィ:行こう…!


自分から会話を始めた+質問なしパターン

参加者には以下の話を想像してもらったそうです。
アヴィとダニーは数年前からの知り合いで、同じ大学に通っています。講義と講義の間の休憩中にカフェで二人は出逢いました。コーヒーを飲みながら、前の週に何をしたか、週末の計画はどうかについて話しました。その時の会話がこちらです。

  1. アヴィ:最近、勉強の調子はどう…?
  2. ダニー:すんごい大変。アヴィは…?
  3. アヴィ:すんごい大変。統計学の成績が貼り出されていたけど見た…?(自分から会話を始めた)
  4. ダニー:見た見た。掲示板の前を通りかかった時にね。(質問なし)
  5. アヴィ:実は最近、学校の成績が良いんだよね…!今回の成績はA+だったの…!
  6. ダニー:そうなんだ、あ、講義が始まるからいかないと…!
  7. アヴィ:行こう…!


相手から会話を始めた+質問ありパターン

参加者には以下の話を想像してもらったそうです。
アヴィとダニーは数年前からの知り合いで、同じ大学に通っています。講義と講義の間の休憩中にカフェで二人は出逢いました。コーヒーを飲みながら、前の週に何をしたか、週末の計画はどうかについて話しました。その時の会話がこちらです。

  1. アヴィ:最近、勉強の調子はどう…?
  2. ダニー:すんごい大変。アヴィは…?
  3. アヴィ:すんごい大変。
  4. ダニー:統計学の成績が貼り出されていたけど見た…?(相手から会話を始めた)成績はどうだった…?(質問あり)
  5. アヴィ:実は最近、学校の成績が良いんだよね…!今回の成績はA+だったの…!
  6. ダニー:そうなんだ、あ、講義が始まるからいかないと…!
  7. アヴィ:行こう…!


相手から会話を始めた+質問なしパターン

参加者には以下の話を想像してもらったそうです。
アヴィとダニーは数年前からの知り合いで、同じ大学に通っています。講義と講義の間の休憩中にカフェで二人は出逢いました。コーヒーを飲みながら、前の週に何をしたか、週末の計画はどうかについて話しました。その時の会話がこちらです。

  1. アヴィ:最近、勉強の調子はどう…?
  2. ダニー:すんごい大変。アヴィは…?
  3. アヴィ:すんごい大変。
  4. ダニー:統計学の成績が貼り出されていたけど見た…?(相手から会話を始めた)(質問なし)
  5. アヴィ:見た…!実は最近、学校の成績が良いんだよね…!今回の成績はA+だったの…!
  6. ダニー:そうなんだ、あ、講義が始まるからいかないと…!
  7. アヴィ:行こう…!


上記の話を読んでもらった後、参加者にアンケートを実施し、アヴィの印象を5段階で評価してもらったそうです。因みに評価項目は社交的か、傲慢か、操作的か、深く考えるタイプか、自慢好きか、利己的か、良好な社会的関係かだったとのこと。
更に参加者はアヴィとダニーの新密度も5段階で評価してもらったらしい。
合わせて、参加者はアヴィに

  • どのぐらい良い印象を思ったか…?
  • どの程度友達になりたいか…?

も聞いてみたそうです。
結果、

  • 質問なしよりも質問ありの方が、自慢が少なく、好感が持てると思われた…!
  • 自分から会話を始めた場合は、質問ありの時のみ効果的だった…!
  • 相手から会話を始めた場合は、質問あり・なしに関わらず、本人(=アヴィ)は比較的ポジティブに捉えられていた…!

とのこと。
つまり、自分から会話を始めた+質問なしパターンの場合のみ、自慢は嫌な感じに受け取られた…!ってことですね。確かに上記の4パターンで一番嫌な自慢に感じましたな。
それ以外の自分から会話を始めた+質問ありパターンや相手から会話を始めた+質問ありパターン、相手から会話を始めた+質問なしパターンは大丈夫っと…。
ではなぜこのような結果になったかと申しますと、研究者曰く、

  • 相手から会話を始めた場合の後の自慢は、おそらく謙虚の範囲に含まれるから
  • 相手から会話を始めたことは、質問をすることと同等であると認識されるから
  • 質問に答えて自慢することも、おそらく謙虚の範囲に含まれるから

だそうです。


二つ目の実験は、基本的に一つ目の実験と同じ感じなんですが、今回は、後で思い出すよう指示したという違いがございます。
この実験はイスラエルの大学生61人(平均年齢22.78歳、女性68%男性30%1人は性別未回答)を対象に行われたそうで、先程と同じように参加者を4つの実験条件にランダムに割り当てたそうです。その後もおんなじ感じで、割り当てられた1パターンの内容を読んでもらったみたい。但し、この時点では後でこの会話を思い出すように言われると参加者は知りませんでした。
参加者が読み終わった後、会話の最初の一行が書かれた紙が配られ、残りを思い出して書くよう指示されたそうです。会話の内容を思い出して書いてもらった用紙は、2人の独立した審査員がチェックしたそうで、

  • アヴィの今回の成績がA+だったことが書いているか…?
  • アヴィが今回の成績を答える前に、質問があったか…?
  • 会話を始めた(試験の成績について話し始めた)のは、アヴィとダニーのどちらだったか…?

を確認したとのこと。
結果、

  • アヴィの今回の成績がA+だったことを思い出すことについて4パターンに違いはなかった。
  • 質問ありパターンの場合、質問を思い出せることが多かった…!
  • しかし、自分から会話を始めた+質問ありパターンと相手から会話を始めた+質問なしパターンに有意差はなかった…!
  • 自分から会話を始めた+質問なしパターンの時が、自分(アヴィ)から会話を始めたことを思い出す唯一の条件だった…!
  • 他の3パターンでは、相手(ダニー)から会話を始めた時を思い出す傾向にあった…!

だったそうです。
自分から会話を始めた+質問ありパターンと相手から会話を始めた+質問なしパターンに有意差がないのは、一つ目の実験にあった、相手から会話を始めることと質問をすることは同等と認識されるってのを裏付ける感じですね。
また自分から会話を始めた+質問なしパターンという、謙虚の範囲に含まれない場合にのみ、会話の詳細に注意が向いたのも面白いところ。自分からこの話題を出しといて、聞きもしない自慢話をされりゃ~嫌な感じとして注意が向く(記憶に残る)ってのは分かりますな。



個人的考察

この2つの実験の結果から、研究者は最後にこう述べております。

  • 初デートから就職の面接に至るまでの色々な状況で、人々は自慢話として受け取られることなく、相手に自己アピールできないかとジレンマに悩む。今回の研究は、このジレンマの解決策を提示した。研究結果によれば、私たちのベストな行動は、相手に私たちの自慢できることに関する質問をしてもらえるよう促すことだ。

つまり、自慢したいことを相手から質問してもらえるよう上手く会話を持っていくのが、自己アピールで良い印象を与えるベストな方法ってことですね。こりゃ、自慢するときはなかなか戦略的にいかんといけませんな。



参考文献