防衛的悲観主義と戦略的楽観主義の話、その1その2その3の続きです。
今回もアダム・グラント教授がLinked inで紹介していた研究を見ていくんですが、主に楽観主義の人が戦略的楽観主義を取った場合のメリットについてです。
では早速行きましょう。



保険営業の仕事で防衛的悲観主義と戦略的楽観主義を調べてみた…!

ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマン博士の1986年の研究によると、防衛的悲観主義と戦略的楽観主義における保険営業の仕事のパフォーマンスと離職率について調べてみたそうです。
この研究は保険営業の仕事をしている方197人を対象に2つの実験を行ったそうで、それぞれの概要は以下な感じ。

  • 実験1:実験参加者が防衛的悲観主義の人か戦略的楽観主義の人かを調べたのち、横断研究を用いて営業成績との関係を見比べてみた。
  • 実験2:保険代理店の新入社員を対象にして防衛的悲観主義の人か戦略的楽観主義の人かを調べた。その後1年間追跡調査し、離職率をチェックした。

皆さんもご存知の通り、保険営業の仕事は要らないと言われてもすぐに気持ちを切り替えられる回復力と忍耐力を必要とするきつい仕事です。このような仕事に防衛的悲観主義と戦略的楽観主義のどちらが向いているのか調べたってことですね。
2つの実験から分かったことは、

  • 戦略的楽観主義の人は防衛的悲観主義の人よりも、入社後2年間で37%も多く保険を販売していた…!
  • 戦略的楽観主義の人は防衛的悲観主義の人よりも、入社後1年間で離職した人が半分だった…!

とのこと。
保険営業の仕事は1件1件の売れた売れなかったにこだわらず、どんどん数をこなしていかなければならない仕事なんで、やっぱり戦略的楽観主義の人と相性がいいみたいですね。
それに対して数ではなく一つ一つの質で勝負する防衛的悲観主義の人には、相性が悪いみたいです。確かに、1件ダメだった…のようなネガティブな出来事を経験しただけで生産性が落ちちゃったりするんで、断られる(失敗する)のが普通の仕事である保険営業の仕事は当然うまくいかないし、退職にもつながりますわな。



戦略的楽観主義はネガティブな出来事にこだわらない…!

マーティン・セリグマン博士の2006年の書籍によると、防衛的悲観主義と戦略的楽観主義では物事がうまくいかない時の考え方や視点が違うそうです。
なんでもネガティブな出来事が起きた時、防衛的悲観主義の場合は、

  • 原因は自分のせいだと思ってしまう(プレゼンが上手くいかなかった時はそれが自分が下手だからだと思ってしまう)
  • ずっと続くと思ってしまう(決して良くならないと思ってしまう)
  • 皆に知られてしまうと思ってしまう(同僚や家族からの信頼を失うと思ってしまう)

といった感じになってしまうそうな。
一方で、ネガティブな出来事が起きた時、戦略的楽観主義の場合は、

  • 原因は自分のせいだけではないと思える(プレゼンが上手くいかなかった時はそれは聴く側の準備不足だった可能性があると思える)
  • 練習して改善できると思える
  • 他で挽回し、家族で楽しい夜を過ごせると思える

といった感じとのこと。
こうしてみると、やっぱり皆が戦略的楽観主義に憧れるのは分かりますな。また、それぞれが自分に合っていない戦略を取ってもかなりまずそうなのも納得ですね。