【まとめ】コレステロールの誤解と正しい対策法
以前に卵って毎日3個ぐらい食べると良いよ~ってことを書きました。
その際にコレステロールは気にしなくてOKだよってことも合わせて書いたかと思います。
短期と長期の研究でその傾向に違いがあった…!
まずは短期的にみた場合と長期的にみた場合はどうなのか…?って話から…。
2003年のマーストリヒト大学のメタ分析によると、動物性脂肪を摂取した場合、短期的にはコレステロール値を上げる結果となったんだそうな。
これだけみると、あれ、やっぱ、まずいじゃん…!っと思うのですが、それは早計でして、というのも、長期的にみるとまた違った結果になるんですよ~。
2011年の研究によると、長期的にみた場合、コレステロール値は変わらなかったそうです。つまり、確かに脂肪によってコレステロールは変動するんだけど、長期的にみれば元に戻るから気にしても仕方ないってことになりますね。
系統的レビューの結果でもコレステロールを食べてもコレステロール値は変わらなかった
更に2009年のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の系統的レビューによると、ハイコレステロールな食事を食べても、
- 約80%の人は、血中のコレステロール値は変わらなかった
- 残りの約20%の人は、血中のコレステロール値が上がった。しかし、それは一時的に
- 善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)の値が上がるだけで、結果として心臓への影響はなかった
とのこと。
つまり、気にしなくて良いってことはかなり信じて良さそうな感じ。
コレステロール食と、冠状動脈性心疾患(CHD)、脳卒中、心血管疾患のリスクとの関係
2010年の小児病院オークランド研究所の前向きコホート研究のメタ分析によると、コレステロール食と、冠状動脈性心疾患(CHD)、脳卒中、心血管疾患のリスクとの関係について21の研究をピックアップし、データを解析したそうな。サンプル数は347,747人で追跡調査期間は5〜23年間とのこと。なかなか大規模ですね~。
結果、コレステロール食と冠状動脈性心疾患(CHD)、脳卒中、心血管疾患のリスク増加に関連性はないとしています。また、仮にあったとしてもそれは微量とのこと。気にするレベルじゃないってことですね。
食事のコレステロール摂取量が増えたのに、善玉コレステロールが増えた…!
2012年のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアエスピーニョ病院センターの臨床試験の系統的レビュー・メタ分析によると、糖質制限ダイエットと心血管疾患の関係について調べたそうです。データを精査したところ、17の臨床試験に対応する合計23の研究が基準を満たしていたそうでこれらを使ったらしい。サンプル数は肥満患者1,141人で、結果、炭水化物を減らすとコレステロールの摂取量が多くなるが、にもかかわらず、善玉コレステロールが増えていたとのこと。
う~ん。食事のコレステロールが影響するって説だと矛盾する結果ですね~。
日本人を対象に調べてみたら…。
2010年のJACC Studyの研究によると、日本人の男女58,453人にアンケートを実施し、飽和脂肪酸(お肉の脂肪)の摂取量が、心血管疾患による死亡リスクと関係があるのかを調べたそうです。日本人を対象としているのが嬉しいですね~。早速結果を見てみると、
- 飽和脂肪酸の摂取量と心血管疾患には関係がなかった…!
- どころか、脳卒中の死亡率とは、逆相関していた…!(=死亡率が減っていた…!)
とのこと。
日本人でも結果は変わらなそうですねー。
他にも納得できる研究結果がある
因みに以前にも紹介しましたが卵とコレステロールの関係を調べた研究をみてもそれは頷けるかと思います。一応挙げておくと、
- 卵のコレステロールは気にしなくていい(FITDAYの記事)
- 1日1個以上の卵を食べても問題なし(2004年のウェイクフォレスト大学の研究)
- 卵を食べると善玉コレステロールの数字が上がった(2012年のコネチカット大学の研究・1994年のコペンハーゲンの民間クリニックの研究)
- 卵を食べても悪玉コレステロールの数字に変化がなかった(2008年のコネチカット大学の研究・1984年のハーバード大学の研究)
- 卵に含まれるオメガ3脂肪酸が血中の中性脂肪を下げる(2007年のビクトリア州の保健社会福祉省の研究・1993年のアルバータ大学の研究)
といった感じで、いずれにしても気にしなくてもいいのかな~という印象。むしろ、逆に良いって感じの研究もありますし…。
日本政府もアメリカ政府も食事で摂取するコレステロールは気にしなくてOKだと言っている…!
実は日本政府もアメリカ政府も食事で摂取するコレステロールは気にしなくてOKだよ…!って言っております。例えば日本では、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」を5年更新で作成しておりますが、「「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書」によると、
- 摂取されたコレステロールの吸収は個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。
- 食事から摂取されるコレステロールは体内で作られるコレステロールの1/3~1/7を占めるに過ぎない。
- コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少なく摂取するとコレステロール合成は増加する。
- このためコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない。
とのこと(125ページに書いている)。
アメリカ政府もこの立場は同じでして、「アメリカ人のための食生活指針2015-2020年版」では、食事から摂取するコレステロールは血中コレステロールの量と因果関係はないとして摂取目標量を削除しております。
理由はセットポイント
なぜ、このように時間の経過とともに元に戻るのかと言うと、体にはセットポイント機能が備わっているから。セットポイントとは自分のデフォルト状態に体が戻ろうとする自動調節機能のこと。因みに体内で使われるコレステロールの内訳は、
- 約75%…体内で生成される
- 約25%…食事からとったもので補てんする
そうです。
んで、このバランサーの担い手が、肝臓となります。
肝臓は、
- 食事のコレステロール量が多い:体内の生成量を少なくする
- 食事のコレステロール量が少ない:体内の生成量を多くする
そうです。
この機能がある限りは、基本的に2,3週間でコレステロール値は元の数値に戻ってしまうみたいですので、気にせず食べていいのではないかと思う次第です。
いったい何が体内の悪玉コレステロールを増やしているのか…?
まず、炭水化物を食べると、肝臓は余った炭水化物を脂肪に変えつつ、VLDLに入れて、体内の脂肪細胞や筋肉に運びます。また、肝臓はVLDLにコレステロールを入れます。そして、VLDLは多くの脂肪を運ぶ性質があるんですよ。つまり、炭水化物を食べると肝臓はVLDLコレステロールというものを生成するってことですね。
んで、VLDLが脂肪(トリグリセリド)を脂肪細胞や筋肉に運ぶと、中密度リポタンパク質(IDL:HDLとLDLの中間)となります。このIDLはコレステロールとともに肝臓に戻ることができるので、肝臓はそれを後で使用したり、取り除くことが出来ます。しかし、これは出来るってだけで、そのほとんどのIDLは血中に残り続けます。
この残り続けたIDLが非常にやっかいで、ほとんど全てがコレステロールであり、なんと、巷では、悪玉コレステロール(LDL)と呼ばれております。そして、血液中の総コレステロールの割合の約4分の3がこいつです。
まとめると、
- たくさん炭水化物(糖質)を食べる
- VLDLコレステロールが生成される
- VLDLが脂肪細胞や筋肉に運ばれると、中密度リポタンパク質(IDL)になる
- 実はIDL=悪玉コレステロール(LDL)…!
って感じ。
そう、つまり、食事のコレステロールの影に隠れていた、諸悪の根源である悪玉コレステロールの増える原因は炭水化物(糖質)だったんです…!
だから、食事からとる脂肪やコレステロールは関係がなかったんですよね。つまり、コレステロール食は冤罪だったという訳です(笑)。哀れコレステロール食さん…。
この辺は、2000年のミネソタ大学ツインシティーズ校のレビューにも載っていまして、1950年代後半から1960年代初頭に行われた研究から脂肪摂取を減らすことが良いとしてきたけど、実は、炭水化物が原因だった…!と書かれており、未だに周知があんまされていないのが悲しい所ですね…。冤罪被害は尚も続いております…。
植物ステロール(植物のコレステロール)は健康にいいのか…?
2008年のザールラント大学病院の研究や2008年の国立ポズナン医科大学の研究によると、植物ステロール(植物のコレステロール)の摂取で心疾患と死亡率が大幅にアップしたそうです。理由は、血管内皮細胞の機能が壊れてしまうからとのこと。しかし、一方で、一応メリットも見つかっておりまして2009年のザールランド大学病院の研究によると、植物ステロールは血中のコレステロール値を下げるそうなんですよね。
つまり、コレステロール値を下げる効果はあるんだけど、心疾患と死亡率をアップさせてしまうという諸刃の剣なのが植物ステロールってことですね。
これを聞くとあんま健康に良さそうに思えないんですが、今でも植物ステロールの商品は売られておりまして、それもトクホ(特定保健用食品)の商品として、様々な商品が販売されているんですよね(具体的な商品名を知りたい方はリンクを見てください)
正直この当たりを買うなら、糖質を気にした方が良いと思いますが…。
コレステロールの対策まとめ
最後にコレステロールの対策をまとめて行こうと思います。
まず、コレステロールの数字を下げたいなら、第一の対策は食事です。更にいえば、脂肪やコレステロールは恐れずに食べ、炭水化物の摂取量を減らすのが重要となっております。また、卵やホエイプロテインなどのタンパク質も肝臓の働きを助け、コレステロール値を改善するのに効果がありますし、プロテインレバレッジの効果も見逃せません。
以上を踏まえると、
- 卵やホエイプロテインなどタンパク質を積極的に摂取していく…!
- 炭水化物(糖質)の摂取量を減らす(全く食べないのは良くないので、最低摂取量を気にしつつ、カロリーの質の良い、炭水化物の食材を食べる)
行動療法(オペラント学習・臨床行動分析)や悪習慣のところで書いた通り、良い習慣を身に付けるよりも悪い習慣をやめるのは難しいため、代替行動の強化がおすすめ。ということで、ただ単に「炭水化物を食べるのを減らす」ではなく、「卵とホエイプロテインなどタンパク質を多く食べる」の方がよろしいかと思います。
また、ハビットチェーンを利用しつつ、炭水化物も「食べない」ではなく、「カロリーの質の高い炭水化物を食べる」に置き換え、その後、減らすという2段階式を使うことによって習慣化がしやすいのではないかな~とも思います。
第二にすべき対策は睡眠です。
睡眠不足と肥満などの不調は関係が深いです。詳しくは、
をご覧いただきたいのですが、兎に角、睡眠の質の向上が重要です。具体的には、毎日7~9時間決まった時間に寝るのがベストとなります。
をご覧いただきたいのですが、兎に角、睡眠の質の向上が重要です。具体的には、毎日7~9時間決まった時間に寝るのがベストとなります。
第三の対策が運動です。
また、歩くことも意識するのも重要です。私も実践しておりますが、おすすめなのがスマホに歩数計アプリを入れて、可視化(見える化)してゲーミフィケーションの要素を取り入れることです。やっぱモチベーションが違うんですよね~。
それらが終わった後に更にもう一押ししたい…!ってなってから、初めて週2でHIITなどの運動をやるぐらいで良いんじゃないのかな~と思う次第です。
個人的考察
ということで、コレステロールの高いor低い食べ物を気にするのではなく、セットポイントを下げる、狂ってしまったセットポイントを正常に戻すことを意識しつつ、上記、対策をするのがよろしいかと思います。
また善玉コレステロールは、飽和脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸(オレイン酸など)で増やすことができます。飽和脂肪酸は 牛肉や豚肉、ラム肉の脂肪部分、乳製品、なんかに多く含まれており、モノ不飽和脂肪酸はオリーブオイルやナッツ、アボカドに多く含まれております。
コレステロール値が気になる方はお試しになってはいかがでしょうか…?
コレステロール値が気になる方はお試しになってはいかがでしょうか…?