【加筆内容】2023~2024年のドイツ栄養学会のアンブレラレビューを見てみよう! その1「タンパク質の摂取と骨の健康」
今回から何度かに分けて2023~2024年に発表されたドイツ栄養学会のアンブレラレビューを見ていきたいと思います。
アンブレラレビューは非常にエビデンスレベルの高い研究方法でして、その結論は信頼が高いんですな。そしてドイツ栄養学会は立て続けにアンブレラレビューを出しまくったみたいなんですよ。
ドイツ栄養学会がタンパク質の摂取と骨の健康の関係についてアンブレラレビューしてみた…!
2023年のドイツ栄養学会の研究によると、タンパク質の摂取と骨の健康の関係についてアンブレラレビューで調べてみたそうです。
そもそもタンパク質は、
- 骨の健康の維持(2008年のジュネーブ大学病院の研究)
- 筋肉量の維持(2021年のコーク工科大学の研究)
に重要な役割を持っております。
では、実際に成人や高齢者がタンパク質を積極的に摂取した場合、骨折リスクや骨密度、骨ミネラル含有量なんかに効果があるのか今回評価してみたんだとか。
ということでまず研究者たちは、2008年11月1日から2021年8月17日までに発表された系統的レビューをPubMed、Embase、コクランで検索してみたそうです。すると7,336件もの研究がヒットしたそうな。
続いてこの中から重複している研究や除外基準に該当している研究を除いていったそうで、最終的に11件の系統的レビューが基準を満たしていたらしい。
この11件の系統的レビューの特徴は、
って感じだったそうです。
んで、まず11件の系統的レビューのタンパク質摂取量の範囲と種類についてはこのようになっておりました。
【コホート研究の系統的レビュー】
- 1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質1.2g(高タンパク質摂取)と1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質0.21~0.95g(低タンパク質摂取)を比較していた。
- 1日に摂取する三大栄養素のうちのタンパク質の割合が17.4〜30.8%(高タンパク質摂取)と5.6〜19.9%(低タンパク質摂取)で比較していた。
- タンパク質摂取量は1日に50.1gより多いタンパク質摂取(高タンパク質摂取)と1日に68.0gより少ないタンパク質摂取(低タンパク質摂取)で比較していた。
- 動物性タンパク質摂取については、1日に20.6gより多いタンパク質摂取(高タンパク質摂取)と1日に51.0gより少ないタンパク質摂取(低タンパク質摂取)で比較していた。
- 植物性タンパク質摂取については、1日に13.3gより多いタンパク質摂取(高タンパク質摂取)と1日に18.0gより少ないタンパク質摂取(低タンパク質摂取)で比較していた。
【RCTの系統的レビュー】
- タンパク質摂取グループは1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質1.01~1.69gで、コントロールグループは1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質0.67~1.1gだった。
- 1日に摂取する三大栄養素のうちのタンパク質の割合について、タンパク質摂取グループは20~30%、コントロールグループは14~18%だった。
- タンパク質摂取量について、タンパク質摂取グループは1日に20.4~45.0gのタンパク質摂取、コントロールグループは1日に0~2.1gのタンパク質摂取だった。
- 動物性タンパク質のみの場合、タンパク質摂取グループは1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質1.2gで、コントロールグループは1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質1.1gだった。
- 動物性タンパク質のみの場合、1日に摂取する三大栄養素のうちのタンパク質の割合について、タンパク質摂取グループは25~30%、コントロールグループは15~18だった。
- 動物性タンパク質のみの場合、タンパク質摂取グループは1日に40mg~45gのタンパク質摂取、コントロールグループは1日に0~2.1gのタンパク質摂取だった。
- 植物性タンパク質のみの場合、タンパク質摂取グループは1日に18~40gのタンパク質摂取、コントロールグループは1日に0gのタンパク質摂取だった。
全体的に見た雑感は、もうちょい高タンパク質摂取の範囲やグループは高めにしてほしかったな~という印象ですね(1.6g、体重60kgの人だと1日100gぐらい摂取してほしいので)
では、タンパク質の摂取と骨の健康について結果を見てみましょう…!
- 全体:系統的レビューから得られるタンパク質摂取と骨の健康の研究データは信頼できる結論を導くには不十分であった…!
- 骨折リスク:関係なさそうな感じだったがよく分からなかった。もしかしたら高タンパク質摂取により股関節の骨折リスクを減らせるかもしれない。
- 骨密度:全身の骨密度、股関節骨密度、腰の骨密度ともに関係なさそうな感じだったがよく分からなかった。
- 骨ミネラル含有量:関係なさそうな感じだったがよく分からなかった。
- 骨代謝:関係なさそうな感じだったがよく分からなかった。
う~ん。なんだかパッとしない結論ですね。でもこれがリアルな感じがするとも言えますな。
但しこの結果から、タンパク質は骨の健康に無意味…!とらなくてOK…!とはなりません。
研究者も、
- 欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN:European Society on Parenteral and Enteral Nutrition)などの専門家グループのガイドラインでは、加齢に伴う筋肉の減少を遅らせるために、現在推奨されているタンパク質量(1日に体重×1.0~1.5g)よりも高いタンパク質摂取をすでに推奨しているため、今後の研究では、65歳以上の高齢者の骨の健康に対するタンパク質摂取量の増加の影響に焦点を当てるべきである
としており、もっと調べる必要があるよね~とおっしゃっておりました。