前回、運動にゲーミフィケーションは役立つのか調べた東大の研究を見てみました。
今回は、運動にゲーミフィケーションが使えるのか調べた質の高い研究を見てみます。



運動にゲーミフィケーションは役立つのか…?RCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみた…!

2022年のグルノーブル・アルプ大学の研究によると、運動にゲーミフィケーションは役立つのか…?RCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみたそうです。
これまで運動にゲーミフィケーションが使えるのか調べた先行研究はいくつもあったんですが、よく指摘されていたのが質の高い研究が不足しているということ。そのため、ランダム化比較試験(RCT)で調べた方が良い…!という話が挙がる事が多かったんですよね。また、メタ分析も行われていないって感じでした。
しかし近年の研究により、十分なRCTがそろった…!メタ分析を行う時が来た…!ってことで、今回研究者たちは行ってみることにしたんだとか。
ということで、研究者曰く、

  • この研究は、ゲーミフィケーションによる身体活動への介入の効果を定量化した初めての研究だ

とのこと。この一文だけでワクワクしてしまいますな(笑)
また、この研究では、ゲーミフィケーションの運動効果だけでなく、長期的な効果、どんな人にも使えるのか…?ってのもチェックしていて大変よろしい感じでした。では一緒に見ていきましょう…!
まず研究者たちは、2010年1月1日(2010年はゲーミフィケーションという用語が広まった時)から2020年12月31日までに発表された該当する先行研究をPubMed、Embase、Scopus、Web of Science、コクランという5つのデータベースを用いて検索してみたそうな。またこの時ランダム化比較試験(RCT)の研究に絞って検索してみたとのこと。すると3,110件もの研究がヒットしたんだとか。
続いてこの中から、重複しているものや質の低い研究を除いていったそうで、最終的には16件の研究がメタ分析の基準を満たしていたらしい。この16件の研究の概要は以下な感じでした。

  • 年齢:9〜73歳、平均35.7歳
  • 総サンプル数:2,407人
  • サンプル幅:20〜602人
  • 成人の割合:67%(18件中12件)
  • 青年(18歳未満)の割合:33%(18件中6件)
  • 慢性疾患(肥満、2型糖尿病、心血管疾患)の方の割合:22%(18件中4件)
  • 方法:スマートフォンアプリが10件、ウェブベースが3件、その両方が4件
  • 実験期間:1~24週間、平均11.8週間、一番多かった実験期間は24週間

また研究は、

  • ヨーロッパ:6件
  • アメリカ:4件
  • オーストラリアとニュージーランド:3件
  • カナダ:3件(但しメタ分析に使われたのは1件)
  • アジア:2件

から選ばれておりました。
因みにアジア2件のうちの1件がイスラエル、1件が日本でした。日本の研究は2014年の大阪工業大学の研究とのことで、ご興味のある方はリンクから飛んでご覧くださいませ。
続いて使われたゲーミフィケーションのテクニックも見ておきます。

  • 1位:バッジ、メダル、トロフィーなどの報酬とランキング:72%(18件中13件)
  • 2位:レベル:50%(18件中9件)
  • 3位:ポイントまたはスコア:39%(18件中7件)

ゲーミフィケーションの王道な方法がつかわれていたみたいですね。
因みにチームプレイ、SNS、メッセージ機能などの他者との交流機能が含まれているものも非常に多かったみたい(83%、18件中15件)
それと身体活動の測定方法は様々で、総身体活動時間やMVPA時間(中~高強度運動時間)、座り時間、1日の歩数、歩行時間や活動時間(分)などなど。
最後に追跡調査については、6件の研究で行われておりまして、実験終了後12~30週間(平均14.4週間)行っていた様子。
これらのデータを基にメタ分析をかけてみた結果、以下のことが分かったそうです。

  • 全体的に見ると、介入後の全ての身体活動結果(MVPA時間(中~高強度運動時間)、1日の歩数、活動時間、歩行時間)は統計的に有意な小~中程度の効果(SMD=0.43)を与えていた…!
  • 同様に介入前後においても統計的に有意な効果(SMD=0.38)を与えていた…!
  • 大きなバイアスリスクなどを除外した結果も同様で、ゲーミフィケーションによる介入は身体活動に統計的に有意な小~中程度の効果(SMD=0.42)を与えていた…!
  • 成人と青年、健康な方と慢性疾患を持つ方の間で統計的な有意差は見られなかった…!
  • 年齢や性別、BMIなどの変数も関係なかった…!
  • つまり、ゲーミフィケーションの運動効果は様々な方に効果がある可能性が高かった…!
  • ゲーミフィケーショングループは何もしていないグループよりも統計的に有意な効果(SMD=0.58)があった…!
  • ゲーミフィケーショングループはゲーミフィケーションしていない運動グループよりも統計的に有意な効果(SMD=0.23)があった…!
  • ゲーミフィケーションによる追跡期間後の総身体活動時間(MVPA+1日の歩数)は統計的に有意ではなかった(SMD=0.09)
  • ゲーミフィケーション介入後、総身体活動時間(MVPA+1日の歩数)は12~24週間(平均14週間)、統計的に有意な非常に小~小程度の効果(SMD=0.15)を与えていた…!
  • つまり、長期的な効果はあるものの非常に弱かった…!
  • 2件の研究を除外して、ゲーミフィケーションの1日の歩数アップ効果を調べてみると、統計的に有意な効果(SMD=0.49)があった…!
  • この効果は、1日当たり1,609.56歩増えることを意味していた…!
  • ゲーミフィケーションは中~高強度運動時間(MVPA時間)に統計的に有意な影響を与えなかった(SMD=0.09)

この結果に研究者曰く、

  • 平均12週間のゲーミフィケーション介入が総身体活動に対して統計的に有意な効果をもたらした。この効果は小~中程度であり、ゲーミフィケーション介入が健康な方と慢性疾患の方の両方で身体活動を促進するのに役立つだろう

としています。



個人的考察

ゲーミフィケーションを取り入れることによって、様々な方の運動量がアップするというお話でした。また、ゲーミフィケーションの実験終了後も3ヶ月半ぐらいは効果が続くみたいです。但し、それ以上の長期的効果はあんまり期待しない方が良いのと、時間の経過とともに効果が弱くなっていくのは注意しておくと良さげでした。
それとこの研究では、ゲーミフィケーションで1日約1,600歩増える…!ってのも素晴らしいかと。
やっぱゲーミフィケーションは運動にも使えそうですね…!



参考文献