【加筆内容】地中海式ダイエットの質の高い研究を見ていく!31「がんリスクの研究の3度目のアップデート版」
これまで地中海式ダイエットとがんリスクの研究について、
- 地中海式ダイエットの質の高い研究を見ていく!8「心血管疾患(CVD)・がん予防はどうか?」
- 地中海式ダイエットの質の高い研究を見ていく!12「がんリスクの研究のアップデート版」
- 地中海式ダイエットの質の高い研究を見ていく!20「がんリスクの研究の2度目のアップデート版」
って感じで見てきましたが、またまたアップデートしてみたよーってのが今回の研究です。
2014年の地中海式ダイエットとがんリスクの研究の3度目のアップデートを見てみよう…!
2020年のヴァルミア・マズールィ大学の研究によると、地中海式ダイエットとがんリスクの関係について系統的レビュー・メタ分析で調べてみたそうです。そもそもこの研究チームは過去に地中海式ダイエットとがんリスクの関係について調べて、更に2回のアップデートを行っております。
その詳細については、
をご覧いただくか以前の記事をご覧いただきたいと思います。
んで、最後のアップデートからあんまり期間が経っていないんですが、研究者によれば以下の理由から再度アップデートすることにしたらしい。
- 2017年のドイツ人間栄養研究所の系統的レビュー・メタ分析の発表以降、新たな前向きコホート研究とケース・コントロール研究がたくさん発表された。
- 新しい研究のいくつかには、以前になかったがんタイプについて調べていた。
これらの理由から、今回3度目のアップデートをすることに決めたそうです。
ということでまず研究者たちは、2020年4月までに発表された先行研究をランダム化比較試験(RCT)、ケース・コントロール研究、前向きコホート研究に絞って検索してみたそうな。因みにデータベースはPubMedとScopusを使用したとのこと。次に検索した物の中から重複したものを除いたそうで、3,720件の研究が残ったんだとか。その後、質の低い研究を除外していったそうです。更に2017年のドイツ人間栄養研究所の系統的レビュー・メタ分析で使われた83件の研究も再チェックしたらしい。
その結果、今回の検索により2017年のドイツ人間栄養研究所の系統的レビュー・メタ分析で使われなかった新たな研究が44件も見つかったそうな。これら44件の研究と前回の研究の再チェック後の研究を含めたところ、全部で117件の研究となり、総サンプル数は3,202,496人となったそうです。
では系統的レビュー・メタ分析の結果を見てみましょう。地中海式ダイエットを忠実に守る人は以下な感じだったそうです。
- 全てのがん死亡リスク(1件のRCT):25%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 全てのがん死亡リスク(18件の前向きコホート研究 ):13%低かった…!(エビデンスレベル中)
- 胆道がんリスク(1件の前向きコホート研究):56%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 膀胱がんリスク(以下4件をまとめた):13%低かった…!
- 膀胱がんリスク(1件のケース・コントロール研究):34%低かった…!
- 膀胱がんリスク(3件の前向きコホート研究):11%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 悪性リンパ腫(血液がん)リスク(以下4件をまとめた):6%低かった…!
- 悪性リンパ腫(血液がん)リスク(2件のケース・コントロール研究):11%低かった…!
- 悪性リンパ腫(血液がん)リスク(2件の前向きコホート研究):5%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 乳がんリスク(1件のRCT):59%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 乳がんリスク(以下23件をまとめた):6%低かった…!
- 乳がんリスク(11件のケース・コントロール研究):13%低かった…!
- 乳がんリスク(12件の前向きコホート研究):3%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 結腸直腸がんリスク(以下17件をまとめた):17%低かった…!
- 結腸直腸がんリスク(7件のケース・コントロール研究):36%低かった…!
- 結腸直腸がんリスク(10件の前向きコホート研究):8%低かった…!(エビデンスレベル中)
- 子宮内膜がん(子宮体がん)リスク(以下4件をまとめた):33%低かった…!
- 子宮内膜がん(子宮体がん)リスク(3件のケース・コントロール研究):42%低かった…!
- 子宮内膜がん(子宮体がん)リスク(1件の前向きコホート研究):2%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 食道がんリスク(以下3件をまとめた):36%低かった…!
- 食道がんリスク(1件のケース・コントロール研究):74%低かった…!
- 食道がんリスク(2件の前向きコホート研究):15%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 胆嚢がんリスク(1件の前向きコホート研究):58%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 胃がんリスク(以下7件をまとめた):30%低かった…!
- 胃がんリスク(3件のケース・コントロール研究):37%低かった…!
- 胃がんリスク(4件の前向きコホート研究):23%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 神経膠腫(グリオーマ)リスク(1件の前向きコホート研究):24%高かった…。(エビデンスレベル超小)
- 頭頸部がんリスク(以下9件をまとめた):44%低かった…!
- 頭頸部がんリスク(8件のケース・コントロール研究):46%低かった…!
- 頭頸部がんリスク(1件の前向きコホート研究):27%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 肝臓がんリスク(以下4件をまとめた):36%低かった…!
- 肝臓がんリスク(1件のケース・コントロール研究):49%低かった…!
- 肝臓がんリスク(3件の前向きコホート研究):33%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 卵巣がんリスク(1件の前向きコホート研究):9%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 膵臓がんリスク(以下4件をまとめた):20%低かった…!
- 膵臓がんリスク(1件のケース・コントロール研究):52%低かった…!
- 膵臓がんリスク(3件の前向きコホート研究):8%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- 前立腺がんリスク(以下11件をまとめた):2%低かった…!
- 前立腺がんリスク(5件のケース・コントロール研究):24%低かった…!
- 前立腺がんリスク(6件の前向きコホート研究):2%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 肺がんリスク(5件の前向きコホート研究):16%低かった…!(エビデンスレベル小)
- 皮膚がんリスク(1件の前向きコホート研究):17%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- がん生存者の全死亡リスク(8件の前向きコホート研究):25%低かった…!低い
- がん生存者のがん死亡リスク(4件の前向きコホート研究):4%低かった…!(エビデンスレベル超小)
- がん生存者の再発リスク(1件の前向きコホート研究):39%低かった…!(エビデンスレベル超小)
とのこと。
上記で黄色+太字の物はエビデンスレベルがまぁまぁって感じの物です。
続いて、有意差について見ていきます。
上記のガンリスクの中で有意に低かったものは以下な感じとのこと。
これに対して、有意差のなかったものは以下な感じとのこと。
- 全てのがん死亡リスク※
- がん生存者の全死亡リスク
- 乳がんリスク※
- 結腸直腸がんリスク※
- 頭頸部がんリスク
- 肺がんリスク※
- 胃がんリスク※
- 膀胱がんリスク※
- 肝臓がんリスク※
- 悪性リンパ腫(血液がん)リスク※
- 食道がんリスク
- 膵臓がんリスク
- 前立腺がんリスク※
※の付いたものは先程ご紹介したエビデンスレベルがまぁまぁの物です。
まとめると、
まとめると、
【信頼度が中ぐらいで効果がありそう】
- 全てのがん死亡リスク:13%~25%低そう…!
- 結腸直腸がんリスク:8%低そう…!
【信頼度が少ぐらいで効果がありそう】
- 膀胱がんリスク:11%低そう…!
- 乳がんリスク:3%~59%低そう…!
- 胃がんリスク:23%低そう…!
- 肝臓がんリスク:33%低そう…!
- 肺がんリスク:16%低そう…!
のような形となります。
これら以外はエビデンスレベルが低すぎてよく分からん、もしかしたら効果があるかも…?ってところか、そもそも有意差がなさそうって感じです。
個人的考察
こうやって同じ研究を何度もアップデートするものを追ってみていくのも結構面白いですよねー。