「認知行動療法の共通基盤マニュアル」のポイントを抑えよう!その5「強迫・強迫症・強迫性障害の基礎理解とアプローチ」
具体的には認知行動療法マップ(CBTマップ)の「認知行動療法の共通基盤マニュアル」を私なりにまとめたものです。
強迫・強迫症・強迫性障害の基礎理解
日常生活において、私たちは「鍵をかけたかどうか」、「ガスコンロの火を消し忘れたかどうか」など、不安に感じた際に、施錠の確認やガスコンロの確認を行っている。料理中に生ものに手が触れたのではと気になれば、石鹸を使って手を洗うかもしれない。このような不安を解消するための行動は、日常生活で見られる普通の行動である。強迫症・強迫性障害においては、強迫観念から生じる不安を解消するための行動(強迫行為)によって不安は一時的に中和されるものの、強迫行為を繰り返すほど不安は増大し、より強烈なものになる。そして駆り立てられるような非常に強い不安によって、強迫行為はさらに増えていく。その結果、一日の大半の時間を強迫行為に費やしたり、強迫症・強迫性障害との闘いに全エネルギーを費やすことで疲労困憊したりと、強迫症は日常生活に大きな支障を及ぼすようになっていく。
つまり、強迫症・強迫性障害は、強迫観念(何度もしつこく浮かび、不安や不快感を引き起こすような考えやイメージ)と強迫行為(強迫観念による不安や不快感を中和させるための反復的な行為や思考)、またはそのいずれかが生じて、日常生活に支障が生じる疾患である。
そして、強迫症・強迫性障害における回避行動や巻き込みにも注意が必要である。
回避行動、巻き込みとは、
- 回避行動:嫌悪や恐怖を覚える対象を避けること
- 巻き込み:家族などに強迫行為を強要したり保証を求めたりすること。例えば、「手がきちんと洗えていることを家族に保証してもらう」、「ものを落としていないか家族に一緒に確認してもらう」、「汚染強迫のためにドアノブに触れられない本人に代わって、家族がドアを開ける」など
である。
頻繁な回避行動や巻き込みは症状をさらに重症化させ、また本人が自覚していないこともあるため、家族に同席してもらい、これらを共有することが望ましい。
強迫・強迫症・強迫性障害のアプローチ
強迫症・強迫性障害の症状改善のための対策としては、薬物療法と、暴露反応妨害法(Exposure and response preveution:ERP)が有効となる。まず暴露法と反応妨害法とは、
- 暴露法(暴露療法・エクスポージャー):これまで恐れたり避けたりしてきたこと(回避行動)にあえて立ち向かうこと
- 反応妨害法:不安を下げるためにしてきた強迫行為をあえてしないこと
を言う。
そしてこの2つが合わさったものを暴露反応妨害法という。
暴露反応妨害法を繰り返せば繰り返すほど、不安や不快な気持ちのマックス度が下がり、より短い時間で不安が下がるようになる。最終的なゴールは不安や不快をゼロにすることではなく、不安に馴れ(馴化)、不安への耐性をつけることもポイントとなる。
個人的考察
以上「強迫・強迫症・強迫性障害の基礎理解とアプローチ」でした。
次回から、いよいよ実践編に入っていきます。
