毎月恒例の月1社内研修が令和3年1月13日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。





認知行動療法の基礎と展開 第9回目「神経行動療法への展開」

今回の月1社内研修では「神経行動療法への展開」の動画を1.5倍速で視聴しました。





しせつちょうのメモ帳

今回の講義内容のポイントを私なりにまとめておきます。
参考程度にどうぞ。

  • 神経行動療法は2007年のピッツバーグ大学の研究により有名になった。
  • 上記研究では、DBT(弁証法的行動療法:境界性パーソナリティ障害の方に有効な治療法。日常生活全体を治療環境として使っていくぐらい集中的に行う治療法)を行っている大うつ病(だいうつびょう)患者6名に、認知コントロール訓練(CCT)を1日35分、2週間で合計6回行った。結果、うつ症状と反芻思考が改善した。
  • 認知コントロール訓練(CCT:Congnitive Control Training)とは、注意トレーニングワーキングメモリを調査・アップさせるトレーニングのこと。
  • 上記研究では、同時に脳の血流の変化も調べていた。CCTの介入前後で扁桃体(アーモンドのような形をしている。感情を司る部分)と背外側前頭前野(記憶や認知など思考を司る部分)の反応が変化していた。
  • 自分とネガティブについて問う課題では血流増加量が減少した≒ネガティブに巻き込まれ辛くなっていた≒反芻思考が改善した。
  • 難しいワーキングメモリのトレーニングでは血流増加量が増加した≒ワーキングメモリがアップした≒うつ症状になりにくくなった。
  • 認知機能は、注意機能、ワーキングメモリ、実行機能からなっているが、特に注意機能、ワーキングメモリのトレーニングが実用化されており効果も認められている。また、ADHDの子どもを対象にした研究でそれらのトレーニングを行うと症状の改善が見られた。
  • 注意機能やワーキングメモリのトレーニングはBDNFを出して行うと効果が上がる可能性がある。
  • BDNFを効率良く分泌させるには、運動ブルーベリー亜鉛などがある。
  • 2007年の大連理工大学のRCTによると大連理工大学の学生80人を2グループに分け、一方に1日20分、5日間のマインドフルネス訓練を行わせた。結果、注意機能が高まり、ネガティブが減って気分の改善が見られた。
  • 2010年の大連理工大学のRCTによるとオレゴン大学の精神障がいなどない健康的な学生45人を2グループに分け、一方にマインドフルネス訓練(これまでにマインドフルネス訓練の経験がない学生)を、もう一方にリラクゼーション訓練を行わせた。両グループの訓練は月曜日から金曜日までの5日間、毎晩30分を1ヶ月、合計11時間行った。結果、脳の構造が変わり脳内のネットワークがスムーズに動くようになることが分かった。
  • 2005年のハーバード大学などの研究によると平均9.1年の瞑想経験がある20名の脳を調べたら、背内側前頭前野(客観視・共感力を司る部分。自閉症の人はここが上手く働かない)の厚みが増していた。更に島(とう:身体感覚をまとめ上げている場所。この奥に扁桃体(感情)があってつながっている)の厚みも増していた。
  • 更に上記研究により、瞑想による呼吸がゆっくりになればなるほど、視覚野の厚みが増していた(瞑想経験が増すと呼吸がゆっくりになることが分かっている)
  • 因みにその後の研究(2015年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究)では、20年間、瞑想を続けた人を調べたものがある。結果は灰白質が肥大化していた(≒認知機能が高かった)とのこと。
  • 2004年のロットマン研究所の研究によると大うつ病の患者さんに認知行動療法(CBT)か、パロキセチンSSRI)による薬物療法を行い糖代謝の変化を見た。これによりそれぞれで脳に効く部位が違うことが分かった。因みに偽薬によるプラセボ効果は薬物療法と同じ脳の部位に効果が表れる。
  • また上記研究により、薬物療法は自律神経や内分泌、免疫に近い脳の部位に効果があった。認知行動療法は注意をコントロールする脳の部位に効果があった。
  • 以上から、注意トレーニングやマインドフルネス瞑想などの認知トレーニングが認知機能(脳機能)を改善し、結果、精神障がいを改善していくことが分かった。また、認知行動療法が精神障がいを改善し、結果、認知機能(脳機能)を改善していくことも分かった。では、認知トレーニングと認知行動療法の両方を行ったらどうなるのか?
  • 2011年の今井先生・熊野先生の研究によれば、認知療法(CT)と注意トレーニングでは効いている場所が違うので相加的に働いた。
  • 認知行動療法と、認知トレーニングの両方を使い相乗効果を働かせることはできないのか?→メタ認知療法は可能性あり。



次回の講義資料・全講義資料

次回の講義資料のダウンロードページは下記となります。


全講義資料のダウンロードページは下記となります。


講義資料まで用意してくれているなんて熊野先生に感謝です…!



個人的考察

今回の内容を一言でまとめるならば、それぞれのトレーニングや治療は脳の効く部位が違うから色々やっておくと良いよ…!って感じですかね~。ワーキングメモリを鍛えたり、BDNFの分泌を良くしたり、注意トレーニングをやったり、マインドフルネスを行ったり、片っ端からやってみても損はないかと思います。
因みに個人的にはこれらに共通している方法は運動のような気がします。そしてできれば自然でエクササイズをするってのが理想かと…。
やっぱ結局基本に戻ってくるんですね~。


今回のポイントをまとめつつ、足りない部分を加筆したものが下記になります。合わせてご覧ください。




参考文献