【まとめ】心ここにあらずな状態「マインドワンダリング」をメリットとして活かす方法
マインドワンダリングってなに…?
マインドワンダリングとは勝手に思考が遊びだす状態のことを言います。ボーッとしているとなんかふと色々なことが浮かんでくることってありますよね…?あれがマインドワンダリングです。言うなれば心ここにあらずな状態のことを言いまして、これがなかなかのくせ者だったりします。というのも、これって誰にでもある現象なんで、これ自体に良いも悪いもないんですが、精神障がいの方の症状悪化に一役買っちゃうんで兎角嫌われ者になりがちなんですよね。
因みに通常であればデフォルトモードネットワークの起動は、
といった感じで非常にメリットが大きい物なんですが、うつ病の人はデフォルトモードネットワークが小さいなどでうまく機能しないみたいなんで、結果的にデメリットが上回ってしまうみたいなんです。いわば、リフレーミングで書いている事の逆パターンが起きているとでも言いますか…。
- 問題解決能力がアップする
- 記憶の定着率がアップする
- 価値判断がアップする
- 正しい判断率がアップする
- 良いアイディアがでやすくなる
といった感じで非常にメリットが大きい物なんですが、うつ病の人はデフォルトモードネットワークが小さいなどでうまく機能しないみたいなんで、結果的にデメリットが上回ってしまうみたいなんです。いわば、リフレーミングで書いている事の逆パターンが起きているとでも言いますか…。
熊野先生がうつ病の人は新聞が読めなくなるとおっしゃっておりましたがマインドワンダリングが原因なのも非常に納得できる話。だって、注意力が落ちて、散漫な状態なんで文章を読んでいても別な事を考えてしまうから、読んでいるけど読んでいないんです。だから気がつくと同じ文章のところを何度も何度も読み返して進まないことが慢性的に起きるんですよね。別にうつ病でなくても本をずっと読んでいたりすると慢性的でなく突発で一回くらい普通に起きたりすると思います。皆さんも一度ぐらいは経験があるんじゃないでしょうか…?
起きている時間の約47%はマインドワンダリング状態…!
「明日の幸せを科学する」で有名なハーバード大学のダニエル・ギルバート博士とマシュー・キリングワースの2010年の研究によると、1日のうち、どれぐらいマインドワンダリングが起こっているのか(デフォルトモードネットワークが起動しているのか)について調べてみたそうです。
まず、研究者たちは、マインドワンダリング(デフォルトモードネットワーク)が起こることを、人間の脳のデフォルト機能であると言っておられます。更に人間は他の動物とは異なり、自分の周りで何が起こっているのか、過去の出来事、未来の出来事、起こるはずのない出来事など、色々考えることに多くの時間を使うよね~とも言っております。まぁ、そうですよねー。
そこで、実際どれぐらいの時間を使っているのかを調べてみよう…!ってなったみたいです。
実験は、2,250人(18歳から88歳)を対象にして行われたそうで、参加者の74%はアメリカ人であり、経済的状況や職業など幅広く集めたそうな。
んで、どうやって調べたのかと言いますと、まず初めに、
- 今、どれほど幸せか…?
- 今、何をしているか…?
- 今、考えているのか…?
- 今、楽しいか…?
- 今、他に何か考えているか…?
などをランダムな時間に質問するiPhoneアプリを開発したそうな(リンクをクリック又はタップするとアプリを見られます)。因みに思考や行動などは、ウォーキング、食事、買い物、テレビをみるなど、22の項目から選択してもらったとのこと。
次にこのアプリを参加者に使ってもらい、日常生活をしているときの思考や感情、行動
などのデータを250,000も集めたみたい。
最後にデータを整理してみたそうで、気になる結果は、
- 起きている時間のうち、46.9%はマインドワンダリング(デフォルトモードネットワークが起動)状態だった…!
そうです。
つまり約47%、もっと言うと、起きている時間の約半分は自分が今行っていること以外のことを考えているみたい。半分は心がさまよっている、心ここにあらず、ボーっとしているってことですね。思った以上に多いですねー。
また研究者たちはデータから最も幸せを感じている状況も分かったそうで、
- 恋愛をしている
- 運動をしている
- 会話をしている
時だったとのこと。休憩中や、仕事中、自宅でパソコンを使っているときなんかは最も幸せを感じる状態ではなかったそうです。
更にキリングワース曰く、マインドワンダリングは人々の幸せを予測するのに役立ちそうとのこと。なんでも、行動から幸福かどうかを予測すると正解率が4.6%だったのに対し、マインドワンダリングから幸福かどうかを予測すると約10.8%だったそうなんですよね。
そして、マインドワンダリングが多ければ多い程、幸福度が低い人が多かったそうです。まぁ、少し考えれば納得の結果でして、いつも目の間の出来事、特に楽しい事なんかに集中できないでいることが多ければ、本当に楽しめた(幸福だった)という記憶が定着しないので結果、不幸が際立ってしまうのも当然かと…。これは辛いですね…。
研究者たちも、多くの哲学や宗教的な考え方の中に幸福はその瞬間を生きることによって見つけられると伝えている。また、医療でも、今ここにいる、ように訓練する。これらの伝統は、マインドワンダリングが不幸であり、正しい対策であることを示唆していると述べております。
研究者たちも、多くの哲学や宗教的な考え方の中に幸福はその瞬間を生きることによって見つけられると伝えている。また、医療でも、今ここにいる、ように訓練する。これらの伝統は、マインドワンダリングが不幸であり、正しい対策であることを示唆していると述べております。
やっぱ、マインドフルネスが重要ってことですねー。
マインドワンダリングは目標や願望を達成するために重要だった…!
じゃあ、マインドワンダリング状態って無駄なのか…?っていうとそう簡単なお話ではないみたいです。
2013年のスコット・バリー・カウフマン博士の研究には、マインドワンダリング状態になるメリットについて書かれております。なんでも、目標や願望を達成するために重要だったそうです。
具体的には、他に注意を向けることで、本質を見抜くことが出来たり、記憶から良い方法がなかったか思い出したり、難しい出来事を理解したりするのに必要とのことです。
つまり、洞察力や記憶力、理解力なんかが必要なときにマインドワンダリングは起こりやすいみたい。
更に知性(IQ)が高い人は、集中力もあるだけでなく、マインドワンダリングも起きやすいそうなんです。
この当たりを見るとマインドフルネスとマインドワンダリングは切り替えがポイントなのかな~と思いますね。
マインドワンダリングが起きやすい状況・起きやすい人は限定された状態と現実世界でどうやら違うみたい…!
2017年のノースカロライナ大学の研究によると学生247人を対象に実行機能(注意力や集中力のこと。意思決定、セルフコントロール力なんかも関係ある)の高さを調べた後に限定された状態のマインドワンダリングと現実世界のマインドワンダリングの発生度を調べたんだそうな。
因みにどうやったかというと、
- 限定された状態のマインドワンダリング→実験室で退屈な作業をしてもらった
- 現実世界のマインドワンダリング→普通に過ごしてもらい1日8回ランダムにマインドワンダリングについて報告してもらった
更に学生のビッグファイブなんかも調べたそうです。
んで、気になる結果は、
- 限定された状態(実験室)では、マインドワンダリングは実行機能が低くて神経症的傾向が高い(情緒安定性が低い)人ほど起きやすかった
- 現実世界では、マインドワンダリングは実行機能が高くて開放性が高い人ほど起きやすかった。また神経症的傾向は関係なかった
だったそうです。ちょっと意外な結果ですね~。
つまり、精神障がいの人(神経症的傾向が高い人)なんかによくありがちな、何もすることなく家に閉じこもって悶々と考えている状態はマインドワンダリングは起きやすいってことになりますね。そこから反芻思考が起きてネガティブワールドに突入してしまうのも無理からぬ話かと…。
逆に現実世界でマインドワンダリングがよく起きる人は能力が高い人が多いってことになりますよね。上記で挙げたとおり、実行機能が高ければ注意力・集中力・意思決定・セルフコントロール力が高いか、又は知的好奇心が高く、アイディアも出やすい人でクリエイティブ性も高いってことになりますんで…。
因みに2012年のカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究でも、マインドワンダリングでクリエイティブ性がアップするって結果が出ていますんで、やはり、注意力・集中力が散漫だと良いアイディアが出やすそうですね。まさに長所と短所は裏表の関係って感じですね~。
自発的なマインドワンダリングと自然発生のマインドワンダリング。果たして違いはあるのか…?
次にわざとマインドワンダリングを発生させた場合と自然に起こったマインドワンダリングに違いはあるのか…?って内容をご紹介します。
2017年のマックス・プランク研究所の研究によると参加者に下記の質問をしたんだとか。
- わざと自分でマインドワンダリング状態にすることがあるか…?
- マインドワンダリング状態に自然になることがあるか…?
その後、参加者の脳をMRIにかけたそうです。
んで結果は、
- わざと自分でマインドワンダリング状態にすることがある人は脳が大きかった…!
- マインドワンダリング状態に自然になることがある人は脳が小さかった…!
という感じだったそうです。
あれ、人工的にマインドワンダリングを起こすと脳に良いんだ…!
因みにわざと自分でマインドワンダリング状態にすることがある人程、
- 前頭前野の皮質が厚い
- デフォルトモードネットワーク(記憶から情報を引き出す際に活性化する)と頭頂葉(関係ない情報を遮断し集中力を高める)を強く結びつける作用がある
ということで、つまり、自分でわざとマインドワンダリングを使う人はクリエイティブ性や集中力の脳のネットワークがスムーズに動く…!ってことになります。この当たりは熊野先生も話していましたよね~。更に当ブログでも上記や以前にうつ病の人はデフォルトモードネットワークが小さいってご紹介していましたよね。
まぁ、精神障がいの人が意図的に反芻思考を起こしてうつ病を悪化させよう…!とはまず思わんでしょうから自然発生のマインドワンダリングの結果は当然でしょうね。
逆に今からマインドワンダリングを使おう…!って考えられるなら、それは熊野先生がご紹介していたコントロール喪失実験をしていることになりますし、その効果の高さは当ブログでも紹介していましたし、ウェグナー博士もその方法は反芻思考に本当に効くよ…!って言っていますし納得のいくところですね~。
マインドワンダリングとワーキングメモリの関係
2012年の記事にはマインドワンダリングのメリットについて書かれております。そして、この中に出てくる2012年のウィスコンシン大学マディソン校の研究によると、マインドワンダリングとワーキングメモリの関係について調べてみたそうです。
まず、参加者にマインドワンダリングが起きる可能性の高い超簡単な作業を2つ用意し、どちらかを行ってもらったそうな。
因みに行った退屈な作業は、
- 画面に表示される文字に対してただボタンを押す
- 自分の呼吸に合わせて指をタップする
という感じだったらしい。
それらを行っているところを定期的にチェックし、参加者が注意を払っていたかどうかを確かめたとのこと。その後、各参加者にワーキングメモリのテストを行ったそうです。
結果、
- 最初の超簡単な作業でマインドワンダリング状態になった人ほど、ワーキングメモリのテストで高得点をたたき出した…!
そうです。
集中力がなさそうに見える人ほど、良い結果がでたってのは意外ですよねー。
ではなぜこういったことになるのかというと、上記研究のプレスリリースによれば、作業がそれほど難しくない場合、ワーキングメモリの容量が多い人は、今行っている作業以外のことを考える余力があるから、マインドワンダリング状態になりやすいんじゃないか…?とのことです。
つまり、マインドワンダリング状態になりやすい人は、ワーキングメモリが高い為、目の前の仕事に集中するだけでなく、他にも意識を分散する事が出来てしまうんだと。ワーキングメモリが高いが故にマルチタスク状態になれちゃうってことですね。また、研究者によれば、ワーキングメモリは最も差し迫った問題に多くのリソースを割くそうなんで、自然と自分が一番考えたい内容に使われるようにできているっぽいです。
一方で、ワーキングメモリは集中力を維持するのに役立つけど、マインドワンダリング状態に陥り、違う方に脳のリソースを使ってしまい、結果、本来の集中したい方向を見失う可能性があるそうです。でも、それは、ワーキングメモリが高い=マインドワンダリング状態になる…!ということではなく、肝心なのは、ワーキングメモリのリソースをどのように使用するかだということです。
つまり、ワーキングメモリが高い人、マインドワンダリング状態になりやすい人は、必要に応じて、目の前のことに注意を向ける訓練をするのが大事ということです。
じゃあ、目の前のことに注意を向ける訓練として何が良いのかですが、要は注意の持続や注意の転換が大事だということなんで、
あたりがよろしいのではないでしょうか…?
個人的考察
以上を踏まえると、マインドワンダリングは使い方によって毒にも薬にもなると言えますよね~。マインドワンダリングを上手く使いこなすには(正しい思考の遊ばせ方)は、現実世界でわざと自分でマインドワンダリング状態にする。できればマインドワンダリング状態になる時間を設けると良いかもしれません(因みに私のやり方は以前に個人的考察で紹介した通り)。更に実行機能が高いってのは注意の切り替えが上手いってことになるんで、つまりシングルタスクが上手い人はマインドワンダリングになりやすいので尚使いこなせるのではないかと…。
逆にマインドワンダリングを上手く使いこなせていない人は、
- 実行機能が低くないか…?
- 神経症的傾向が高いか…?(情緒安定性が低いか…?)
- 上記2つに該当する場合で家に閉じこもるなど限定された状態にいることが多くないか…?
- マインドワンダリング状態に自然になることがあるか…?それは多いか…?
あたりを気にしつつ、それらによって幸福度が落ちていないかも合わせて考えてみると良いかもしれません。
もし、該当項目が多ければ対策として下記が個人的におすすめです。
- 実行機能を鍛える(熊野先生もおすすめしていた)
- わざと自分でマインドワンダリング状態にする(上記で書いたマインドワンダリングを上手く使いこなす方法を行う)
- マインドフルネスの練習を行う
- 注意トレーニングを行う
- マルチタスクを避ける
脳がスムーズに動かないってことは注意の切り替えが下手ということです。そのため不安になりやすい人ほどマインドワンダリングにもなりやすいのでこの当たりは行ってみても損はなさそうな感じかと思います。