事例から学ぶ「見える化」の支援方法
今回はこの見える化と支援について書いておきます。
事例から学ぶ「見える化」の支援方法
最近のある日のこと。作業を行っていたAさんに支援者が○○を押さえてほしいと言いました。しかし、Aさんは力の加減がうまくいかず上手く押さえられませんでした。Aさんは以前から力の加減について上手くいかないことが多く、身体障がいではありません。
どのように支援したらいいでしょうか…?
まぁ、事例としてはざっくりこんな感じで、要は「力の加減」というものをどのように「見える化」したらいいのか…?ってことですね。
一般的に見える化は知的障がいの方や発達障がいの方に行うことが多く、例えば、
- 張り紙やメモ、表など文字に起こして見える化する
- 写真に撮って、印刷するなどして見える化する
あたりを行うことが多いのではないかと。
んで、問題なのが「力の加減」のような感覚(特に身体感覚)についての見える化。
上記のような文字や表、グラフ、写真なんかでも出来るは出来るんですが、イマイチ分かりづらいんですよね…。
では、具体的な「見える化」の話の前にそもそもなぜこういったことが起こるのかについて書いておきます。
力の加減の問題は知的障がいや発達障がい(自閉症)の方で起こることが多い
まず押さえておいていただきたいのが、身体障がいの場合を除き、力の加減の問題は知的障がいや発達障がい(自閉症)の方で起こることが多いということです。そして主な理由としては、以下2パターンの場合が多いです(重複している場合もあります)
- 力の加減が抽象的で分からない
- 力の制御が上手くいかない
詳しく見ていきます。
1. 力の加減が抽象的で分からない
力の加減が抽象的で分からないとは、例えば「これぐらいの柔らかさの物でこの状況であればこれぐらいの力で押さえるといい」というのを私たちは瞬間的に判断し、そして力を加えます。しかし、知的障がいの方や発達障がいの方はこのような先の予測や計画、大きくとらえた意味での空気を読むというのを障がい特性上、苦手としています。
そのため、こちらが想像するような力加減で作業が出来ないということが起きます。
2. 力の制御が上手くいかない
力の制御が上手くいかないについては、自閉症の方で起こる事が多いです。例えば、赤ちゃんの時に通常、重力に押し負けるということはないのですが、自閉症の赤ちゃんの場合、重力に負けてしまい、結果、手を上げるような動作ができるようになるのが遅い(できない)、しゃべりやハイハイ、歩くのが遅れる、左右いびつな歩き方や動作になってしまうと言った事が起こるそうです(いわゆる筋緊張低下)。それらもあってか、力の制御についても細かい調整が苦手な場合があります(もちろん全員ではありません)
これらの可能性を視野に入れつつ、対策や支援方法を決めていくといいです。
「見える化」しにくい「力の加減」の可視化の例
では、可能性について知った所でいよいよ「見える化」しにくい「力の加減」の可視化について例を挙げてみます。
「力の加減が抽象的で分からない」の可視化の例
力の加減が抽象的で分からない場合の可視化の例としては、粘土などを利用して力とへこみ具合を実際に体験しながら確認するのがよろしいかと思います。更にこれを「見える化」するといいです。
例えば、1の力だと粘土がこれぐらいへこむ、2の力だと粘土がこれぐらいへこむというようにそれぞれの力加減とへこみ具合を手の感触(触覚)や視覚など用いて伝えます。また、この時、なるべく五感用いて伝えるとより分かりやすいかと思います。
更にその粘土を使って「見える化」していきます。具体的には、
- 粘土の状態を文字で見える化する
- 文字や文章が苦手な場合はへこんだ粘土を写真に撮って見える化する
- 粘土を押してへこます様子の動画を撮っておく
- 実際に押してへこんだ粘土をそのままとっておく
- 粘土を何度か(毎回)押してもらい、体で力加減を覚えてもらう(思い出してもらう)
などなどの方法がよろしいかと思います。
「力の制御が上手くいかない」の可視化の例
力の制御が上手くいかない場合の可視化の例としては、その利用者の基本情報(アセスメント情報)などから、上記で挙げたような乳幼児の発達の遅れなどが過去にあったか確認したり、雑談の中で聞いてみるとよろしいかと思います。
その上で、力の加減が抽象的で分からないところで書いた粘土の例のようなことを行い、体の使い方やコツをつかんでもらえるよう支援していくと、コツを掴み上手くできるようになる可能性があります。
また、その人の特徴を知る、調べるのも重要です。力の加減だけは利き手と逆の方がうまくいきやすい場合などもあるので色々調べてみる(アセスメントをとる)のも忘れてはなりませんね~。
以上を踏まえ、障がい特性であれば、出来る範囲を明確化してあげ、本人、支援者ともに理解し、配慮の範囲も明確化するとよろしいかと思います。
「力の加減」以外の「身体感覚」の見える化の例
最後に上記で書いたことは「力の加減」以外の「身体感覚」の見える化にも流用することが可能です。
例えば、声の大きさが分からないということであれば、ボイスレコーダーを使って声を録音、音量を決めて、この声の音量は1、この声の音量は2のように「見える化」する。その際に自分で聞いてもらい声の音量が大きいか小さいか、聞こえるか聞こえないか、うるさいかうるさくないか、判断してもらうといったような方法などです。また、グループワークやSSTなどをしてみるのもよろしいかもしれません。
個人的考察
以上、「見える化」についてでした。
自分基準で考え、即注意ではなく、なぜそういった現象が起こるのか…?と一旦考えていくと分かりやすいかと思います。参考になれば幸いです。