【まとめ】呪われた三種の神器(砂糖・脂肪・塩)加工食品のデメリット
加工食品の呪いはいつから始まったのか…?
ニューヨーク・タイムズの記者であり、コロンビア大学大学院の教授でもあるマイケル・モスの名著「フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠」には、加工食品の呪いの歴史についての記述があります。
なんでも加工食品の呪いが爆発的に強まりだしたのは1970年代とのこと。この時、ソフトドリンク開発で有名なハワード・モスコウィッツ博士が糖分の旨さを最大限引き出すにはどうすべきか…?を研究し始めたそうなんですよね。
モスコウィッツ博士は、様々な種類の糖分を組み合わせつつ、量を調整、それを食べてもらいおいしさをチェック、そのデータを解析ということをしたんだそうな。その結果、人間(の脳)が一番求める、依存しやすい糖分(砂糖)の至福ポイント(黄金比率)を見つけることに成功したらしい。
この糖分の黄金比率が加工食品に使われ出したんで中毒、依存と言われるように食べまくる現象が起きたということです。因みに今もなお、この糖分の黄金比率は使われているそうな。加工食品の呪いはここから始まったんですねー。
糖分の黄金比率を研究しまくり脳の報酬系が喜ぶ方法を模索しまくる…!
その後、世界最大のスパイスメーカーであるマコーミック&カンパニーが2001年にある衝撃的な調査結果を発表します。なんと、人間が食べ物に依存していくことと空腹感に関係性がなかった…!ということです。つまり、腹が減ったから食べるのではない…!ってことです。生物としてかなりヤバそうな話ですよね…?
ここから更に各加工食品メーカーの努力という名の呪いが加速します。糖分の黄金比率を更に研究しまくり、脳の報酬系の喜びが少しでも増すにはどうすれば良いのか…?をガンガン調べまくっていったそうです。その結果、各加工食品メーカーが編み出した砂糖の黄金比率を満たす食べ物がお店に大量に陳列していったのが現代の状況ということです。
ではここで、上記の研究(呪いの)成果を感じる一番わかりやすい例を一つご紹介します。
皆さんは昔に比べて今のお菓子って甘さが少なくなったと感じませんか…?
実は、糖分(甘さ)はある一定量を超すと、くどくなっちゃって食べたさが減少するってのが分かったんですよね。つまり、人間の脳は甘さに対して青天井ではなかったんです。
砂糖・脂肪・塩という呪われた三種の神器を見つける…!
砂糖が青天井だということが分かりましたが、実はもう一つ分かったことがございます。それは脂肪は青天井ということです。そのため、最近のお菓子なんかは、甘さ控えめ…!糖分は抑えています…!なんていう言葉で、うまくごまかしつつ、報酬系をガッツリ刺激しまくる量をキープ、更に脂肪をガンガン混ぜ混ぜしまくっているんですよね。
更に、脂肪にはどんな香りや食感、音などをプラスすると、より脳がハイになるかもメーカーは研究しているそうな。例えば、チョコレートで有名なザ・ハーシー・カンパニーの研究では、ポテトチップスを食べた時のパリッとした音が大きければ大きい程、おいしい商品であると思われることが多かったとのこと。これは脳が喜ばない訳がありませんね~。
因みに加工食品に塩は絶対必要ですが、実は砂糖や脂肪と違って黄金比率はよく分からないらしいです。人間が塩を欲するのは間違いないそうなんですが詳しくは不明ってことですね。ともあれ人間が塩を食べると口や腸管全体に行きますし、加工食品の塩分量はハンパないんで、人体への悪影響は言わずもがな、でしょう。
そしてついに呪われた三種の神器を見つけてしまいます。クラフト・ハインツ・カンパニーのボブ・ドレーン氏曰く、人間の大脳辺縁系(扁桃体や海馬など)は、自然界では貴重なエネルギー源とされる砂糖・脂肪・塩の3つが大好き…!ということです。
ということで、各加工食品メーカーは今度は呪われた三種の神器(砂糖・脂肪・塩)の入れた商品の開発に着手。一番脳の報酬系を刺激できる黄金比率をこぞって調べまくっていきました。ここまでくれば、先程書いた人間の食品への欲求と空腹感の関係のなさは、はっきりと出てきますんで、もはや、関係ありません。あとは少しでも利益を上げるため、商品の徹底的なコストカットということで原料も粗悪にしていけば完成です。
加工食品のレシピは各メーカーとも飽和状態になった。あとは依存者を更にどっぷりつからせる方法を考えるだけ
各加工食品メーカーは、呪われた三種の神器(砂糖・脂肪・塩)と徹底的なコストカットにより、どこも飽和状態となってきました。そこで次なる一手は、加工食品がだ~い好きな依存者を更にどっぷりつからせるにはどうすれば良いのか…?に着手します。
そこで、登場したのがアメリカ映画なんかで良く目にするビッグサイズのお菓子やジャンクフードといった加工食品です。ここで、一気に販売量をアップさせよう…!って戦略。
これが見事的中し、各メーカーがこぞって資本を集中投下。広告と宣伝をガンガンしていきました。
加工食品に係った人達は加工食品を食べない
加工食品の呪いを知っている加工食品の開発者や研究者たちは、こぞって加工食品を食べないらしい。例えば、
- クラフト・ハインツ・カンパニーにいたジョン・ラフ氏は、ソフトドリンクや脂肪たんまりのスナックを食さない
- ネスレのルイス・カンタレル氏は、夕食は魚を食べると決めている
- フリトレーにいたロバート・リン氏は、ポテトチップを食べない。加工度の高い食品もほとんど食べない
- ハワード・モスコウィッツ博士は、炭酸飲料を飲まない
とのこと。
つまり、危険性を知っている人たちは、加工食品を割けまくっているってことですねー。
う~ん。ずるい…!
本当に加工食品の呪いを受けていたのは…。
最後に、たばこで有名なフィリップモリスの食品マネージャーの言葉をどうぞ。
- 人々は加工食品を見て砂糖や塩が多いと言う。しかし、人々がそれを求めているのだ。砂糖や塩を減らせば売れなくなる。そして競合他社が砂糖や塩を使った加工食品で市場を奪う。罠にはまった状態なんだ
とのこと。
自分たちが加工食品の呪いをやめても結局他の企業が加工食品を売ってしまうのでこの呪いの連鎖は断ち切れないんだっと…。
う~ん。本当に加工食品の呪いにかかっていたのは、生み出した本人たちなのかもしれませんね~。
加工食品を食べることによって体内で何が起きているのか…?
2015年のジョージア大学などの研究によると、マウスに高脂肪食(脂肪35%)を食べさせ、腸内環境がどう変わるのか調べてみたそうです。するとマウスはみるみる太っていったそうな。さらに研究者たちはマウスの腸内環境と脳を調べてみたとのこと。
結果、
そうです。
つまり流れとしては、
って感じですね。怖いですねー。
更に研究者は、このようなポイントを述べられております。
- 腸内細菌は腸内で上手くバランスをとって安定して暮らしている。
- しかし、別の食事(加工食品メインの食事)を始めると、様々な栄養素が腸内細菌を過剰に増やしたり減らしたりする。
- この変化が腸と脳の炎症を起こしている。但し、これがずっと続くのかはまだわからない。
- ほんの数十年前まで、人類は加工食品を食べておらず、加工度の少ない自然食品を食べておりそれらに慣れていた。
- 高脂肪・高炭水化物のような加工食品をメインとした食事は、腸内細菌のバランスを崩し、人間と動物で何千年にもわたって発達してきた腸と脳のコミュニケーションをおかしくする可能性がある。
- 結果、セットポイントが崩れ、肥満にもつながる。
ということで、やっぱり加工食品は出来るだけ避けておきたいですね…。
更に2013年のニューバランス財団の研究や2009年のタフツ大学の研究によると、精製された炭水化物を食べると肥満と糖尿病のリスクがアップしたそうです。精製された炭水化物とは例えば、白米やパン、パスタなんかが該当します。地中海式ダイエットなんかで、全粒穀物を推奨しているのもこれが理由の一つだったり。
加工食品でうつ病リスクがアップ…!
2009年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの前向きコホート研究によると、食事とうつ病の関係について調べてみたそうです。この研究はホワイトホールIIっていうデータセットを用いたものでして、参加者はロンドンを拠点とした35~55歳の公務員さん。1985年から1988年にかけて10,308人を対象に健康状態やライフスタイルなどをチェックし始めたんですよね。
その後、
- 1989~1990年:郵送アンケート
- 1991~1993年:臨床検査+郵送アンケート
- 1995~1996年:郵送アンケート
- 1997~1999年:臨床検査+郵送アンケート
- 2001年:郵送アンケート
- 2002~2004年:臨床検査+郵送アンケート
- 2006年:郵送アンケート
って感じで、健康状態を自己記入式アンケートと臨床検査(健康診断みたいな感じ)で追いかけていったものなんだとか。んで、このデータの中で2006年の時のアンケートでうつ病に関するデータのあった3,486人が今回のサンプル数となります。因みに3,486人の平均年齢は55.6歳で女性の割合は26.2%だったとのこと。
この参加者たちを以下の2パターンの食事スタイルに分けてみたそうです。
併せて、CES-Dスケールっていううつ病自己評価尺度を用いてうつ症状をチェックしたそうな。最後に集まったデータを統計処理した結果がこちらです。
- 年齢や性別、カロリー摂取量など様々な変数を調整しても、自然食品を多く食べる人はうつ病を報告する可能性(0.74)が低かった…!
- 逆に加工食品を多く食べる人は少ない人よりも、うつ病を報告する可能性(1.58)が高かった…!
つまり、加工食品を食べるとうつ病リスクが高まるってことですな。
でもこれだと因果関係が不明という問題がございます。どういうことかといいますと、加工食品を多く食べるからうつ病になるのか、それともうつ病になった人は加工食品を多く食べるのかが分からないってことですね。
そこで、この研究では因果関係もチェックしておりまして、結果は
- うつ病→加工食品をより多く食べる…!という証拠はなかった…!
とのこと。
つまり、加工食品→メンタルがやられる…!って流れみたいです。
流れの基本は、加工食品→うつ病リスクアップ…!わずかに、うつ病→加工食品の摂取量がアップ…!
2012年のラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学の研究によると、ファストフードや市販の焼き菓子(お菓子)とうつ病リスクの関係について調べてみたそうです。つまり加工食品とうつ病リスクの関係をチェックしたってことですな。そもそも先行研究を見てみますと、
- 2007年の華南農業大学の研究では、インスタント食品やファストフードを食べることが少ない人は、うつ病の発症やうつ症状が大幅に低かった…!
- 2009年のミネソタ大学の研究によると、抑うつ症状は、高カロリーなお菓子の摂取量と正の相関関係があった…!
- 2009年のグロスターシャー大学の研究によると、ファストフードや軽食、お菓子の摂取量とうつ症状やストレスには正の相関関係があった…!
- 2010年のメルボルン大学の研究によると、加工食品や揚げ物、精製穀物、砂糖製品(甘いお菓子)、ビールの摂取量とGHQ-12(精神健康調査票の12項目バージョン:メンタル安定度を計測できる)の結果には有意な関係があった…!
って感じで、どうやら加工食品とうつ病リスクは関係ありそうな感じなんですよね。
んがしかし、上記の研究は全て横断研究なんで、時間経過を伴わない研究、つまり因果関係が謎って問題がありました。
因果関係が謎ってのは、
- 加工食品→うつ病リスクアップ…!
- うつ病→加工食品の摂取量がアップ…!
のどっちが正しいのか謎ってことですね。
ということで縦断研究(前向きコホート研究)で加工食品とうつ病リスクの関係を見つつ、更に因果関係もチェックしてみよう…!となったのが今回の研究になります。
この研究は1999年12月21日に開始され継続的に募集し、2007年1月までに16,358人が参加したSUNプロジェクトっていうスペイン人を対象としたアンケート調査を使っておりまして、研究者はこのデータセットから追跡調査ができなくなった参加者や極端なカロリー摂取量の人なんかを除外していったそうな。結果、少なくても1回は追跡調査アンケートに回答した8,964人のデータが使えたとのこと。
また参加者の中で、最低1回は医師からうつ病の診断を受けたり抗うつ薬を使用した人をうつ病の発症症例としてカウントしたらしい。最後にそれらを統計処理して、ファストフードや市販の焼き菓子の消費量とうつ病の発症率との関係を見比べてみたそうです。
では結果を見る前にファストフードや市販の焼き菓子の具体例をチェックしておきましょう。研究者によれば、
- ファストフード:ハンバーガーやソーセージ、ピザ
- 市販の焼き菓子:マフィンやドーナツ、クロワッサン、その他の市販の焼き菓子
って分類に分けたみたいです。
以上を踏まえて結果を見てみますと、
- 追跡期間の中央値は6.2年で、うつ病の症例報告は493件だった。
- ファストフードの摂取量が多いほどうつ病リスクは高かった…!
- ファストフードを最も消費していたグループはうつ病リスクが40%も高かった…!
- 市販の焼き菓子の摂取量もうつ病リスクと正の相関関係があった…!
- これらは結果は他の食品の摂取量を調整しても変わらなかった…!
とのこと。やはり従来の研究結果と同じく、加工食品とうつ病リスクは関係があったみたいですねー。
更に因果関係の部分もチェックしておきましょう。
この研究では因果関係がごちゃごちゃにならんように追跡調査の最初の6ヵ月後、12ヵ月後、18ヵ月後、24ヵ月後に報告されたうつ病の症例を除外して解析を繰り返してみたんだとか。すると関係性がわずかに減っていっていたそうで、更にその変化の割合を見てみると、
- ファストフードの消費量が最も多いグループと最も少ないグループを比較した場合、追跡調査開始から6ヵ月後に診断された参加者を除いた場合で0.6%、追跡調査開始から12ヵ月後に診断された参加者を除いた場合で7.9%変化していた…!
- 市販の焼き菓子の消費量が最も多いグループ~少ないグループと最も少ないグループを比較した場合、追跡調査開始から6ヵ月後に診断された参加者を除いた場合で1.2%、追跡調査開始から24ヵ月後に診断された参加者を除いた場合で13.6%変化していた…!
って感じ。
基本的には、加工食品→うつ病リスクアップ…!なんだけど、うつ病→加工食品の摂取量がアップ…!ってのもわずかにあるってことですね。
因みになんでファストフードや市販の焼き菓子といった加工食品でメンタルがやられるのかですが、研究者曰く、
- トランス脂肪酸の含有量が高いからじゃない…?
ってことでした。
加工食品にはトランス脂肪酸が多く含まれており、これが体内炎症を引き起こして慢性炎症化し、結果、腸内環境が崩れたり、リーキーガットが起きたりして最後は脳(メンタル)もやられる…!って流れです。当ブログおなじみの流れですな。
まだまだたくさんある、過去に登場した加工食品のデメリット
加工食品のデメリットを挙げていくときりがないんですが、過去に登場したものをざっくり下記に記しておきます。詳しく知りたい方はそれぞれのリンクから見てみてください。
兎に角、あらゆる面から加工食品は人間を不健康にしていくって感じですね。
特に肥満は気にしていても、健康や脳へのダメージはあまり気にしていないパターンが多いのでそこらへんはしっかり押さえておきたいところです。
個人的考察
ということで、呪われた三種の神器(砂糖・脂肪・塩)加工食品のデメリットでした。
脳の報酬系を刺激するために世界中の研究者が競い合った結果が、砂糖・脂肪・塩、+αという加工食品の完成だったんですね。こんなもんに知識や対策、意識もなしに現代で暮らしていけば、そりゃあー太るのも無理からぬ話でしょう…。
といっても、もうこの流れは止まらないんで、後は自分で気を付けていくしないのが現状ですね…。まぁ、加工食品を全く食べないというのは正直難しいんで、なるべく未加工の食品を食べるということを意識するだけでも違うかと思います。
一つ基準とするなら食事の総量の80%を未加工食品、残り20%を加工食品とするとちょうど良さそうな感じです。そのため、まずは意識して未加工食品を摂取していき、ちょっとだけ加工食品を食べる感じで行くとよろしいかと思います。
是非、できるところから取り組んでいただけたらと思います。
参考文献
リンク