なんと…!
去年終わるはずのこのシリーズが全然終わりませんでした(笑)
ということで、完全に目算を見誤った感じなんですが、引き続きご紹介していきます…!



RCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみた結果、EPA+DHAのうち60%以上がEPAであるもので1日1g~2gEPAを摂取するとうつ病の症状改善に効果を発揮するみたい…!

2023年のローハンプトン大学の研究によると、オメガ3脂肪酸・EPA・DHAが成人の不安障害やうつ病の症状改善に役立つのか、RCTの系統的レビューとメタ分析で調べてみたそうです。
そもそも2020年の世界の疾病負荷研究(GBD:世界の疾病負担研究)では、204の国と地域を対象に病気について調べているんですが、2019年に最も引き起こした精神障害が不安障害とうつ病だったそうなんですよね。また、WHOによれば、世界中で3億人以上の人々が不安症に悩み、また2億8,000万人の人々がうつ病に悩まされているらしい。
更に最近ようやく落ち着いてきましたが、2021年の研究によれば、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる2020年の204の国と地域における不安障害とうつ病は増加傾向であったそうです。具体的には、不安障害の発症者は25.6%増加、大うつ病の発症者も27.6%増加していたんだとか。
こう見ると、世界的に年々精神障害、特に不安障害とうつ病が増えてきており、コロナが更にそれを加速させたって感じですね。

んで、これらに対処すべく、一般的な治療法として挙がるのが薬物治療と心理療法(主に認知行動療法)となっております。そしてこれらに続く、治療法としてここ近年注目されてきているのが食べ物です。
特にエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は、神経膜の調節や神経伝達と受容体の発現、抗酸化・抗炎症作用、神経細胞の成長など不安やうつに対してかなり効果がありそうな感じなんですな。
また先行研究により、不安や抑うつ状態の人は総じてオメガ3脂肪酸(EPAやDHAなど)が少ない傾向にあるというのも分かっております。んが、しかし、先行するこれらを調べたメタ分析の結果はかなりバラバラで効果あり…!って結果の研究もあれば、全く効果なんてなかったぞ…!って報告する人もいたりするんですよ。他にもEPAは効果があるけどDHAは効果がないなんて話もある訳でして…。
…っと、そんな感じで、よう分からん部分があるんで、今回これらをはっきりさせるべく、RCTの系統的レビューとメタ分析を行ってみることにしたんだとか。

まず研究者たちは、PubMed(MEDLINE)やCINAHL、PsycINFO、Cochrane Library、Web of Scienceといったデータベースを活用し、2022年7月25日までに発表された査読済みの該当研究を検索してみたそうです。
またその際に、不安障害やうつ病のある18歳以上の成人を対象としているかをチェックしつつ、他の病気を持っている人なんかを除外していったらしい。すると791件の研究がヒットしたそうな。
続いて重複しているものや質の低い研究なんかがないか精査していったそうで、最終的に基準を満たした研究は10件だったらしい。この10件の総サンプル数は1,509名でして平均年齢は46.9歳、女性の割合は68%、実験の平均期間は11週間とのことでした。
これらのデータを用いてメタ分析にかけてみたそうです。
では結果を見てみましょう…!

  • 10件のRCTを用いてオメガ3脂肪酸の参加者833名とプラセボ656名の効果を見てみた。因みに平均実験期間は11週間。
  • オメガ3脂肪酸の効果は統計的に有意であり効果サイズは小(SMD=-0.36)だった…!
  • 但し、それぞれの研究結果のバラバラさが高く、特に効果量が大きかった研究があったので除いてみると、有意さがなくなった(SMD=-0.12)
  • EPA+DHAのうち60%未満のEPAを含んだうつ病研究では、EPA+DHAのうち18.6%のEPAを含んでおり、109名の参加者が使用、プラセボは111名だった。因みに平均実験期間は8週間。
  • 結果は統計的な有意差はなかったものの効果の推定値は得られた(SMD=0.05)
  • EPA+DHAのうち60%以上のEPAを含んだうつ病研究では、EPA+DHAのうち86.9%のEPAを含んでおり、502名の参加者が使用、プラセボは429名だった。因みに平均実験期間は10.7週間。
  • 結果は統計的に有意であり効果サイズは小(SMD=-0.16)だった…!
  • またEPA+DHAのうち77.6%のEPAを含んでおり、222名の参加者が使用、プラセボは227名だった。因みに平均実験期間は11.5週間。
  • 結果は統計的に有意であったが(SMD=-1.11)、効果の幅が広く(-2.16、-0.07)、それぞれの研究結果のバラバラさも高かった。
  • そのため特に効果量が大きかった研究を除外してみると、有意さがなくなった(SMD=-0.14)
  • またEPA+DHAのうち84%のEPAを含んでおり、724名の参加者が使用、プラセボは702名だった。因みに平均実験期間は11週間。
  • 結果、統計的に有意であったが(SMD=-0.39)、それぞれの研究結果がかなりバラバラだった。
  • EPA+DHAのうち60%以上のEPAを含んだうつ病研究を用いて、ベストな摂取量を調べてみた。
  • 5件のRCTを用いて、1日1.1gのEPAを摂取した399名の参加者とプラセボ395名を平均実験期間10.4週間で調べた結果、統計的に有意(SMD=-0.17)だった…!
  • 4件のRCTを用いて、1日1.2gのEPAを摂取した222名の参加者とプラセボ227名を平均実験期間11.5週間で調べた結果、統計的に有意であったが(SMD=-1.11)、効果の幅が広く(-2.16、-0.07)、それぞれの研究結果のバラバラさも高かった。そのため特に効果量が大きかった研究を除外してみると、有意さがなくなった(SMD=-0.14)
  • 9件のRCTを用いて、1日1.1gのEPAを摂取した621名の参加者とプラセボ624名を平均実験期間10.9週間で調べた結果、統計的に有意(SMD=-0.45)だった…!これは1日1.1gのEPAの摂取がプラセボよりも、うつ性自己評価尺度(SDS:Self-Rating Depression Scale)でのうつ病の重症度の平均を0.45有意に改善する効果があった…!
  • 3件のRCTを用いて、1日2.1gのEPAを摂取した103名の参加者とプラセボ104名を平均実験期間13.3週間で調べた結果、有意ではない効果(SMD=-0.20)があった。



個人的考察

以上をまとめると、

  • EPA+DHAのうち60%以上がEPAであるもので、1日1g~2gEPAを摂取するとうつ病の症状改善に効果を発揮する…!

ということになりましょう。



参考文献