今回は「マインドフルリスニング」についてご紹介しておきます。



マインドフルリスニングってなに…?

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)で有名なジョン・カバットジン博士がオススメしているマインドフルネス瞑想の一つに「マインドフルリスニング(Mindful Listening)」ってのがございます。
マインドフルリスニングとは、他者との対話の時にただひたすら聴くことに意識を集中することを言います。まぁ、一言で言うなら傾聴ですね。

  • いつも面談でやっている…!
  • なんだ簡単じゃん…!

って人もいるかもしれませんが、これが意外と難しいんですよ。
なんせ、聞くことに徹するということは会話を遮るのはもちろん、意見を言うことさえできませんからね。しかも自分と考えが違っても何も言わないというのは思いのほかきついんすな。
また聴くのに集中し続けるというのもかな~り大変でして、例えば、周囲の音や視界に入ってくる様子(テレビの映像など)なんか気になりますよね。更に現代では、ファビング(相手との対話中にスマホをいじって無視する事)なんて問題もございます。
どうですか…?皆さんは普段マインドフルリスニングできていますか…?



マインドフルリスニングの実践方法

そんなマインドフルリスニングですが、いったいどうやって実践すれば良いのでしょうか…?
…ってことで、ジョン・カバットジン博士が実践方法をご紹介していたので早速チェックしておきましょう。

  • 対話中に積極的にオープンクエスチョンするオープンクエスチョンとは「はい」か「いいえ」でしか答えられない質問ではなく、自由に答えられるよう質問する方法のことを言います。オープンクエスチョンを意識して行うことにより、会話は更に弾むし、相手の意見を尊重していることが分かりますんで、お互いマインドフルリスニングに近づけるでしょう。
  • 会話の内容に全集中するマインドフルネスとは今この瞬間に目を向けるってことです。つまりマインドフルリスニングは今この瞬間の会話に全集中するのが基本となります。1日の中の約47%はマインドワンダリング状態(心ここにあらずな状態)なんで、会話中は意識していないとすぐに心はさまよってあっちゃこっちゃいっちまいます。そのため、返答内容を考えるのではなく、そもそも話している人が何を言っているかに全集中するのが大事。もちろんスマホは閉まって通知も切りましょう…!
  • 会話中のボディランゲージを観察する:会話の内容に意識を向け続けるのも大事ですが、ボディランゲージ(表情やジェスチャーなど)は時に言葉以上の情報をもたらすことがあります。特に話し手が感情的になっているときのボディランゲージは注意してみておきたいところ。
  • アイコンタクトを意識する:「目は口ほどにものを言う」ではないですが、アイコンタクトを意識するのも重要なポイントなんだとか。アイコンタクトにより話し手とより深くつながることが出来るし、非言語コミュニケーションにも集中できるからとのこと。とはいえ、ずっとじーっと見ててもそれはそれでプレッシャーなんで、そこは気を付けたいところ。まぁ、アイコンタクトは海外でかなり重視される要素ですが、日本では、そこまでなんで、無理にせず、それよりも不安や緊張せずリラックスして聴いたり話すのが大事ではないかと思います。すると自然にアイコンタクトのベスト時間である3.3秒になりますので。因みに苦手な相手には口を見ると良いんじゃないかと。
  • 会話を遮らず耐える:意識せず会話を聴いているとついつい口だし、意見、反論、評価、アドバイスなんてのをしたくなるのが人情。そんな時もただ聴いている、待つよ~って雰囲気を出して黙って耐えましょう。すると相手が安心して考え話してくれます。

なるほど、どれも言われちゃ簡単ですが、やるとなるとかなり難しいですね…。



マインドフルリスニングのトレーニング方法

マインドフルリスニングの練習をスタッフ同士でしたい…!社内研修でやってみたい…!って方用にトレーニング方法もご紹介しておきます。
ということでマインドフルリスニングのトレーニング手順は以下のようになります。

  1. 2人一組になる。
  2. 「話し手」役と「聴き手」役を決める。
  3. 話す話題を決める。
  4. 5分間「話し手」役は話題について話す。
  5. 5分間「聴き手」役は会話に全集中して聴く。
  6. 5分経ったら終了。
  7. 「聴き手」役は今聴いた話を要約して「話し手」役に伝える。
  8. 「話し手」役は要約が合っているか確認する。
  9. 今度は「話し手」役と「聴き手」役を入れ替えて同じように行う。

それでは補足説明とポイントも押さえておきましょう。


話す話題について

「話す話題を決める」とありますが、話題は何でも良いです…って、この何でも良いってのが一番難しいんですよね(笑)
ここでつまずいて先に進めなくなると困っちゃうんで(経験済み)、いくつか例を挙げておきます。

  • 最近あった出来事
  • 最近気になっている事
  • 自分の人生でこうなって欲しいと思う事
  • 昨日食べたもの
  • 昨日起きてから寝るまで何をしていたか?
  • 自分の趣味の話
  • 好きな食べ物の話
  • 最近の支援で一番うれしかったこと
  • 最近の支援で一番大変だったこと
  • 最近の支援で一番困ったこと
  • 最近の支援で一番イラッとしたこと
  • 最近の面談で一番うれしかったこと
  • 最近の面談で一番大変だったこと
  • 最近の面談で一番困ったこと
  • 最近の面談で一番イラッとしたこと


5分間「話し手」役が話す事について

トレーニングです…!とか言われて、緊張している中、5分間話しましょう…!と言われて、スラスラ話すのは大変です。つかスラスラ話せる人がうらやましい(笑)
しかも相手は聴く気満々な感じでこちらをみています。ヒャー。
そんな時もまずは混乱しながら話しましょう。
話がまとまっていなくたって良いんです…!
途切れ途切れでも良いんです…!
脱線しても良いんです…!
兎に角、なんだかよく分からなくても話をすることが大事なんです。


5分間「聴き手」役が聴く事について

上記にも書いた通り、「聴き手」役の人はただひたすら聴く事に徹しましょう。心も体も100%集中して聴くって感じです。
話しを聴いていると、必ず自分の考えに注意が逸れる瞬間があります。その時は、そっと「話し手」の会話に注意を戻しましょう。気づきを得てそっと戻す…ここんところは呼吸瞑想と同じです。
因みにこの辺を詳しく知りたい場合は、マインドフルネス認知療法(MBCT)のサマタ瞑想メタ認知療法(MCT)注意訓練(注意トレーニング・ATT)の記事をご覧いただくとよろしいかと思います。
それと、

  •  「うん」「なるほど」「はい」「そうですね」「わかります」みたいな短いあいづち
  • 定期的なうなずき
  • オープンクエスチョンによる短い自然な質問

は全て行ってOKです。
この辺はFBIの交渉の5段階モデルと同じですな。


5分経って終了・要約について

5分経って終了したら、ただひたすら聴く事による疲労感でいっぱいなはず。本来、本気で話しを聴くというのはこんなにエネルギーを使うんだと感じられるかと。
そして要約を伝えて確認です。この時ちゃんと要約してもらえると、トレーニングとはいえやっぱり嬉しいんですよね。しっかり聴いてくれていた、自分の話に注目してくれていた、興味関心を持ってくれていたという印象はお金と同様ぐらい嬉しいと感じられるかと。


役の入れ替えについて

「話し手」役と「聴き手」役を交代して行いますが、出来れば「話し手」役を2回、「聴き手」役を2回はやってほしいところです。もちろん、時間が許すならそれ以上、また日を改めて定期的に行うのもよろしいかと。
やっぱ回数をこなすのは大事ですからね。



応用編:一人で練習したい場合

最後に一人で練習したい場合の方法を下記に記しておきます。
人と一緒に練習する方が良いのは間違いないんですが、機会がない場合や難しい場合もありますからね。

  1. テレビやラジオを適当につけて、その時の会話をマインドフルリスニングで聴く。その後要約を紙に書く。個人的には全く興味のない映画やドラマなんかがオススメ。
  2. YouTubeでランダムで出てきた、動画の会話をマインドフルリスニングで聴く。その後要約を紙に書く。
  3. 横で話している人の会話をマインドフルリスニングで聴く。その後要約を紙に書く。これはカフェの横の席の人の会話や休憩時間とかで行われている雑談が特にオススメ。
  4. 集団で雑談をしているときに、マインドフルリスニングで聴く。その後要約を紙に書く。但し、これはボディランゲージやアイコンタクト、オープンクエスチョンもする必要があるんで、より実践的な練習ですな。
  5. 利用者さんで独り言をずっと言っている人がいたら、マインドフルリスニングで聴いてみる。これが意外と新たな発見があって面白い…!
  6. つまらん研修や意味のない会議の話をマインドフルリスニングで聴く。その後要約を紙に書く。その昔、校長先生の話はなぜ面白くないのか…?って疑問を調べたときに使ったな~(その時はマインドフルリスニングなんて言葉は知らなかったけど)



個人的考察

以上、マインドフルリスニングでした。
どんな会話や面談テクニックにも言えますが、やっぱり聴く・傾聴ってのは基礎基本であり大事です。そのため私にも言えますが、初心忘れるべからずで行きたいもんですね。
因みに常に全ての対応をマインドフルリスニングでやると疲れちゃうし、そもそも無理なんで、時々思い出した時や、今日の面談はマインドフルリスニングでやってみよう…!とかするとよろしいかと思います。

最後に、そもそもマインドフルネスってなに…?って方や、他のマインドフルネスに興味を持った方、マインドフルネストレーニングを行ったときのメリットを知りたい方なんかは下記をご覧ください。


参考文献