【加筆内容】知的障がい者の筋トレ研究をまとめてガイドライン(筋トレメニュー)を作ってみたぞ!って研究の話
今まで、障がいのある方でも有酸素運動や無酸素運動(筋トレ)をすれば、同様の効果が期待できる…!って感じの研究をいくつか見てきました。
んで、前回は不安軽減効果を調べたメタ分析・系統的レビューをチェックしております。
そして今回は筋トレの効果を調べた系統的レビューを見てみようかと。更に過去の知見をまとめた上で、障がいのある方用の筋トレガイドライン(筋トレメニュー)も作成しているんでそこもチェックしておきます。
知的障がい者を対象にした筋トレの先行研究をまとめてメリットを調べてみた…!更に知的障がい者用の筋トレガイドライン(筋トレメニュー)を作ってみた…!
2021年のコインブラ大学などの系統的レビューによると、障がいのある方への筋トレ効果と筋トレメニューについて調べてみたそうです。
そもそも運動、特に筋トレを行うことは人々の健康に様々なメリットをもたらします。しかし、それらの研究は障がいのない方を対象としているものが多く、知的障がいを持つ方々の研究はあんまないんですよね。
そこで研究者たちは以下の2つの疑問についてチェックしてみたんだとか。
- 知的障がいを持つ方が筋トレを行うメリットは何か…?
- 知的障がいを持つ方が筋トレする場合、最もベーシック且つ効率的な筋トレガイドライン(筋トレメニュー)はどんな感じか…?
ということでまず研究者たちは、該当する先行研究をPubMedやWeb of Science、Scopus、SPORTDiscusを用いて検索したそうな。またその際、2010年より前に発表された研究は除外しておいたらしい。つまり、ここ10年近くの研究をまとめてみたかったみたいですね。
その結果、最初に検索にヒットした研究は全部で169件だったとのこと。次にこの中から、基準を満たす質の高い研究かどうかを精査していったそうで、最終的に9件の研究がピックアップされたみたい。
この9件の総サンプル数は280人でして、運動グループの総サンプル数が150人、コントロールグループの総サンプル数が130人って感じでした。因みに平均年齢は18.23±2.86歳って感じでして、主に若者が対象となっております。
また、全ての研究で知的障がいを持つ方とダウン症を持つ方が区別なく参加者となっておりました。
それでは先行研究をまとめた際の筋トレメニューの特徴について見ていきましょう。
- 実験期間:8~16週間の間で行われていた。但し9件の研究のうちの半分は12週間だった。つまり、2ヶ月半から3ヶ月ぐらいが多いってことですな。
- 1回の運動時間:45~60分間の間で行われていた。流れは、ウォームアップ→筋トレ→クールダウンで構成されていた。基本的にアメリカスポーツ医学会(ACSM)の運動ガイドライン(第10版)の内容に沿って行われていた。
- 週の頻度:週2~5日の間で行われていた。多くの研究は週3日となっており、これもアメリカスポーツ医学会(ACSM)の運動ガイドライン(第10版)の内容に沿って行われていた様子。
- セット数:進捗状況とトレーニング期間によって違いはあったが2~6セットの間で行われていた。但し大体の研究では2~3セットだった。こちらも上記同様、アメリカスポーツ医学会(ACSM)の運動ガイドライン(第10版)の内容に沿った感じ。
- レップ数(回数):6~30回の間で行われていた。但しほとんどの研究では6~12回の間の繰り返しだった。
- 強度:鍛えたい筋力(筋持久力や最大筋力、筋瞬発力など)によって様々な設定がされていた。RMについては8RMの40~65%の間で行われていた。但し8RMの40~50%から1RMの60~90%とかなり幅が広かった。こちらもアメリカスポーツ医学会(ACSM)の運動ガイドライン(第10版)が適用されていた。
- 強度の変化:徐々にアップさせていく感じだった。これはウェイトマシンだろうが、フリーウェイトだろうが、セラバンド(トレーニングバンド・トレーニングチューブ)だろうが変わらなかった。強度の変化は週の頻度や個人のパフォーマンスに応じて増やしており、増やし方はウェイトを重くする、レップ数やセット数を増やすという感じだった。
- 種目:最も一般的な筋トレの種目は、レッグカール、レッグエクステンション、様々な腹筋運動(シットアップとかクランチとか)、チェストプレス、ローロー、ラットプルダウン、前腕の筋トレ(フォアアーム)、ショルダープレスだった。
- その他:ケガを避けるためフリーウェイトは行わなかった。
ざっくりまとめると、基本に則った全身筋トレって感じですね。
それでは「1. 知的障がいを持つ方が筋トレを行うメリットは何か…?」の結果から見ていきましょう…!
やはり系統的レビューの結果を見ても障がいのあるなしで筋トレ効果は変わらなそうですね。
因みに肥満は健康リスクの上昇や生活の質の低下と関係あるんで、筋トレは単に障がいのある方の運動機能をアップさせるだけじゃなく、生活の質も向上させるんじゃないかとのことです。
更に研究者曰く、
- 筋トレを行うことにより、メニューが違うのにも関わらず、全ての研究でポジティブな結果が出ていた
- ただし、限られた研究数と質の低い研究は、バイアスリスクがありそう
ってことなんで、細かい点はこれから変わっていくかもですが、それでも筋トレを行った方が良いのは間違いなさそうな感じです。
ではもう一つの疑問である「2. 知的障がいを持つ方が筋トレする場合、最もベーシック且つ効率的な筋トレガイドライン(筋トレメニュー)はどんな感じか…?」の結果も見てみましょう。
今回、ありがたいことに上記の結果を踏まえて、知的障がい者用の筋トレガイドライン(筋トレメニュー)を研究者たちが作ってくれたんですよね。
その内容はこんな感じとなっておりました。
- 筋トレ期間:12週間
- 週の頻度:少なくとも週3日
- 1回の運動時間:45~60分
- 種目:チェストプレス、ローロー、ラットプルダウン、挙上筋トレ、アブダクション、ショルダープレス、様々な腹筋運動(シットアップとかクランチとか)、前腕の筋トレ(フォアアーム)、レッグエクステンション、レッグカール、レッグプレス。6〜7種類を行い、フリーウェイトは避ける
- セット数:2~3セット
- レップ数(回数):6~12回、又は限界まで
- 強度:8RMの40~65%が基本。但し8RMの40~50%から1RMの60~90%の範囲で柔軟に行っていく
- 強度の変化:徐々に上げていく。ウェイトを重くする、レップ数やセット数を増やす
- 筋トレの検査や評価:知的障がいの特性に合わせて個別に対応するべき。筋トレで行ったものと同じものでチェックする必要あり
- 安全性・正確性・有効性の確保:筋力テスト前や筋トレ開始前に筋トレに慣れるためのメニューを実施するのが重要
かなり良い感じにまとめてくれておりますんで、これをたたき台にして筋トレメニューを組んでいくと良さそうですねー。
個人的考察
基本的に障がいのあるなしに関わらず筋トレのメリットは受けられそうですし、筋トレメニューに関しても大きくは違いはないのかな~と思いました。
但し、より障がい特性に配慮したところやケガ防止を意識したところなど細かい部分に違いもありますんで、その辺は非常に参考になりますね。
参考文献
リンク