農福連携が与える効果を科学的に考察してみる!
皆さんは農福連携ってご存知でしょうか…?
今回は農福連携が与える効果を科学的に考察してみたいと思います。
そもそも農福連携ってなに…?
そもそも農福連携ってなんだろうっていう方もいると思いますが、これは「農業」と「福祉」の連携の略で簡単に言うと、農業側は人手不足、福祉側は働く場の不足があるため、お互い補えるじゃん…!って考えです(詳しくは農林水産省のホームページをご覧ください)農家に行って障がい者が仕事を手伝うみたいなイメージを持っていただければよろしいかと思います。
最近ですと、第1回「農福連携等推進会議」にTOKIOの城島茂さんが参加したりしていました。 少しずつ国も含め力を入れだしている分野って感じですね。
最近ですと、第1回「農福連携等推進会議」にTOKIOの城島茂さんが参加したりしていました。 少しずつ国も含め力を入れだしている分野って感じですね。
農福連携の論文を探してみたけど…。
農福連携の論文を探してみたんですが、事例や成功例、現状の課題などの論文ばかりで障がい者に与える実験や研究は私が探した中ではなかったんですよね~。まぁ、日本で始まったばかりなので仕方ないですね。
でも、これだと面白くないので、今回は農福連携で特に効果のありそうな精神障がいの方への影響について考えてみたいと思います。農業は主に自然の中で体を動かす為、この観点から考えていきます。つまり、自然がメンタルヘルスに与える影響と運動がメンタルヘルスに与える影響を挙げていきたいと思います。
自然がメンタルヘルスに与える影響
まずは自然がメンタルヘルスに与える影響から挙げていきたいと思います。2016年のハーバードのブリガム病院による研究によると、2000年から2008年の間の108,630人の女性を調べた健康データを使い、自然がもたらすメリットを調べたそうです。10万人以上のデータってのが大規模調査って感じですね~。これによると自然がもたらすメリットのうちの30%はメンタルの改善だったそうです。自然には様々なメリットがあるのは皆さんもご存知でしょうがメンタル改善はそのうちの30%も占めているんですね~。
ではこの30%を更に調べた研究をみていきましょう。
2016年のクイーンズランド大学の研究によると、1,538名のオーストラリア人を対象とした実験で週に1回、30分ほど自然にふれるだけで、うつ病のリスクがかなり下がったということです。更にこのうつ病への効果は、自然にふれる時間が1時間15分に達するまで上昇を続けたそうです。週1回30分なら全然農福連携ではなくても花壇や家庭菜園クラスでも可能ではないかと思います。
まだまだあります。次の研究を見ていきましょう。
2015年のスタンフォード大学の研究によると、自然の中を歩くだけでもかなりうつ病の改善につながるということが分かりました。38名の男女を対象にした実験では、90分ほど自然のなかを歩いてもらったそうなんですが、大半の参加者は散歩中に反芻思考(いわゆるネガティブループのこと)の回数が減ったそうです。自然の中を90分歩くだけでうつ病の改善と反芻思考の減少が起こるのはありがたいですね~。
更に次は最新の研究です。
2019年のエクセター大学の研究によると、自然のメリットは週に120分を超えてから出るそうです。また、研究者によると週に120分、自然の中で過ごすメリットが次の内容に匹敵するレベルでメンタルにいい影響があるということです。
ということです。これほどの効果が週120分でいいのなら、週4日で1日30分とかで農作業を行うのはアリだと思いますね。
最後は自然のリラックス効果ってどれぐらいなのって研究です。
更に次は最新の研究です。
2019年のエクセター大学の研究によると、自然のメリットは週に120分を超えてから出るそうです。また、研究者によると週に120分、自然の中で過ごすメリットが次の内容に匹敵するレベルでメンタルにいい影響があるということです。
- 生活困窮から抜け出した時
- 低賃金の仕事から高賃金の仕事に転職した時
- 運動不足の人は週150分の運動に成功した時
ということです。これほどの効果が週120分でいいのなら、週4日で1日30分とかで農作業を行うのはアリだと思いますね。
最後は自然のリラックス効果ってどれぐらいなのって研究です。
2016年のダービー大学の研究によると、871人分のデータを使って自然のリラックス効果を調べたそうです。その結果、自然とふれ合うと副交感神経が活発化したそうで、確実にリラックスする、メンタル改善に効果があることが分かったそうです。更にこの時の効果量が0.71だったそうでこれは運動以上の効果(2008年のメタ分析や2013年のメタ分析から運動の効果量は0.1〜0.5ぐらい)があるということです。つまり、最強のリラックス法は自然の中に行くっていうことになりますね。
運動がメンタルヘルスに与える影響
次に運動がメンタルヘルスに与える影響についてみていきたいと思います。農作業に近い運動量ということでウォーキング程度の運動量がメンタルに与える影響についてピックアップしてみました。2011年のペニンシュラ大学の研究によると、大規模な調査の結果、外で行う運動は室内の運動よりもメンタルに良い影響があるそうです。公園でウォーキングをするレベルでも違うらしくそれなら農作業を行えばもっと効果は期待できそうですね。
続いて、イリノイ大学やメリーランド大学などが行った1991年のメタ分析によると、ネガティブな気持ちを減らすなら1日20分の早歩きで不安はかなり減るという結果が出たそうです。過去に不安・緊張対策について書きましたが、1日20分の早歩き程度の動きなら畑で行ったりきたりしていたらあっという間に達成しそうですね。
次に大規模調査を見てみましょう。
2017年にBDIというメンタルヘルスの調査を行うオーストラリアの非営利機関の調査で、HUNT研究という最大級の健康データベースを使って調べたらしい。それによると、男女33,908人のデータを使っておよそ11年にわたって運動と鬱傾向&不安症状のレベルを追いかけたらしいです。その結果、汗もかかず呼吸もあがらないレベルの運動を週に60分するだけでメンタル悪化リスクは12%下がったということです。農作業をしていれば呼吸はともかく、汗はかくのでこの結果は十分参考になるはず。悪化のリスクも下げることもできるんですね~。
個人的考察
いかがだったでしょうか?少しは農福連携に興味関心を持っていただけたのではないかと思います。また、取り組んでみたいと思っていただけたら幸いです。
私の事業所でも農福連携は取り組んでまして令和元年度で丸5年が経過しました。まだまだ課題はあるのですが、実体験からも上記研究の成果は感じますので是非、できるところから始めることを検討するのもありかと思います。
最後に今回の件を踏まえてみると、
- 1日最低20分、できれば最低1日90分は農作業の時間とする。または、
- 週に最低60分、できれば週に最低120分は農作業の時間とする。
を最低目安にしていただくと、
- うつ病などのメンタル悪化のリスクがダウンする
- 反芻思考が減少する
- リラックスできる
- ネガティブな気持ちが減る
- 不安がかなり減る
といった効果がでるかと思います。
他にも日光に当たるのでビタミンD不足を補えるため、メンタル改善が期待できるなどまだまだ可能性があると思います。
おまけ
今回の内容は実は農福連携の講師として呼ばれた際に補足資料として作ったものを一部改編してブログとしてまとめてみました。
因みにさらりと個人的考察に書いたような内容のみ講演では話しましたが、周囲の受けは微妙な感じでした(笑)
それよりも実体験の方が人気があった感じでした。でも、エビデンスがあった話の方が参考になるのにな~なんてしゃべりながら思った次第です。
参考文献
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kourei.html
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/190424_11.html
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/ehp.1510363
https://www.nature.com/articles/srep28551
https://www.pnas.org/content/early/2015/06/23/1510459112
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31197192
https://link.springer.com/article/10.1007/s40806-016-0065-5?wt_mc=Affiliate.CommissionJunction.3.EPR1089.DeepLink&utm_medium=affiliate&utm_source=commission_junction&utm_campaign=3_nsn6445_deeplink&utm_content=deeplink
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2427027/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23362828
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21291246
https://www.researchgate.net/profile/Steven_Petruzzello/publication/21326590_A_meta-analysis_on_the_anxiety-reducing_effects_of_acute_and_chronic_exercise._Outcomes_and_mechanisms/links/54734b230cf24bc8ea19ed2b.pdf
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/190424_11.html
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/ehp.1510363
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https://link.springer.com/article/10.1007/s40806-016-0065-5?wt_mc=Affiliate.CommissionJunction.3.EPR1089.DeepLink&utm_medium=affiliate&utm_source=commission_junction&utm_campaign=3_nsn6445_deeplink&utm_content=deeplink
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23362828
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https://www.researchgate.net/profile/Steven_Petruzzello/publication/21326590_A_meta-analysis_on_the_anxiety-reducing_effects_of_acute_and_chronic_exercise._Outcomes_and_mechanisms/links/54734b230cf24bc8ea19ed2b.pdf