端的に相手へ分かりやすく伝える方法が知りたいって要望がありましたので、今回は以前に紹介したものを含め、書いてみたいと思います。



まずは基本から…。

まずは良く皆さんが聞くであろう基本から書いてみたいと思います。
基本をまとめると、

  • 結論→理由で話す
  • 短文で話す
  • 端的に話す
  • 複数のことを言う場合は初めに全部でいくつあるのか言う
  • 具体例を挙げる
  • 伝えたいことを繰り返す
  • 最後にまとめを言う
  • はっきり大きな声で言う

といった感じになると思います。特に目新しい物はないかと思いますが、何事も基本が大事ですので一応まとめておきました。
面接とか職務経歴書なんかを作るときは上記のポイントが抑えられているとよろしいかと思います。
これだけだと味気ないので次からより細かいテクニックに入っていきたいと思います。



全体の流れ

まずは全体の流れについて考えていきたいと思います。
話しの骨格、全体の流れは大きく分けて2つのことを意識するのがよろしいかと思います。
何かというと、


この2つを意識するのがよろしいかと…。良いニュース・悪いニュースの順番は以前に紹介したと思いますが、忘れてしまった…!と言う方のために軽くおさらいしますと、

  • 良いニュースを言ってから悪いニュースを伝える→効果:相手の行動を改めさせる場合
  • 悪いニュースを言ってから良いニュースを伝える→効果:信頼関係を重視する場合(自分を良くみせる場合)

という感じです。順番により効果が違いますので、まずはどちらが優先すべき内容か、相手に伝えたいのかを考えて話す順番を決めるとよろしいかと思います。
そのほか、良いニュース・悪いニュースについての詳細はこちらをご覧ください。


続いてピークエンドセオリーについてです。ピークエンドセオリーとは話のピーク(一番盛り上がるところ)とエンド(最後)が相手の記憶に残りやすいということを意味しています。つまり、相手に一番伝えたいことはピークとエンドに言うと効果的ということになります。

エンドは話の最後なので分かりやすいですが、ピークは判断が難しいですよね。
そのため、私は、ピークを人工的に作るようにしています。具体的な方法としては、抑揚をつけたり、ピークでゆっくりしゃべるようにしたり、一呼吸置くなどします。
詳しくは下記をご覧ください。




専門用語は使うべきか否か…?

話す際に意外と困るのが専門用語。わかりやすく話すなら使わない方がいいのではないか、いやいや、使った方がこの人の話はためになるぞ!って感じで真剣に聞いてくれていいのではないかなど非常に困る部分ではないかと思います。

まず、結論から申しますと、専門用語は使いすぎても使わなくてもダメだということです。じゃあどうすればいいの…?って質問がきそうですが、専門用語は使った後の流れが大切になってきます。どういうことかというと、

  1. 専門用語を使う
  2. 使った後に専門用語の説明をする
  3. 専門用語の説明の分かりやすい例えを話す
  4. 最後にまとめる

というステップを踏むことがいいそうです。
おそらく当ブログもこのような書き方になっているパターンが多いのではないかと思います。説明している側もこの方が分かりやすいですからね~。



「分かりやすく話す」の落とし穴

専門用語の説明のときもそうですが、分かりやすく話しても上手くいかない場合があります。その場合はファインマン効果を疑うのがよろしいかと思います。ファインマン効果とは、分かりやす過ぎて分かった気になって理解する努力をしなくなるという現象です。もう少し詳しく説明すると、

  1. ファインマン先生という先生の授業はわかりやすかった
  2. だが、分かりやす「過ぎて」皆、分かった気になってしまい復習しなかった。つまり、理解する努力をしなくなってしまった(努力が足りなくなった)
  3. 結果、テストの問題が解けなかった

という皮肉な現象のことを言います。
時には分かりづらく話すことや、自分で調べるように話してみるのも大事だということですね。



3ヒット理論(スリーヒットセオリー)ってなに…?

相手の記憶に残したければ、同じ言葉やキーワードを3回以上言え…!って話がございます。
これは俗に「3ヒット理論(スリーヒットセオリー)」と言いまして、今尚、マーケティング世界の基本として残っているものの一つとなっております。
そもそも3ヒット理論(スリーヒットセオリー)は、ゼネラル・エレクトリック社のハーバート・E・クラグマン博士が1972年に広告の効果を研究していたときに発見した理論でして、「なぜ3回見れば十分なのか(Why Three Exposures May Be Enough)」という題名で発表しております。因みに原文を見たい場合は「消費者行動と広告への関与(Consumer Behavior and Advertising Involvement)」って書籍の中に入っております。
んで、クラグマン博士によれば、人々は広告を見聞きした時、以下の3ステップを踏むそうな。

  • 1回目の広告を見た時:初めて広告を見聞きした人は、これは何だろう…?って思うんだそうな。この最初の反応は、広告の性質を理解しようとするためとのこと。
  • 2回目の広告を見た時:以前に見聞きした広告をもう一度見聞きした人は、あれ…あぁ、これ前にも見たことある…!って思うんだそうな。2度目の反応は、広告の内容を理解したことを示しているとのこと。
  • 3回目の広告を見た時:3回同じ広告を見聞きした人は、広告のメッセージが心の中に浸透し、しっかり理解されるんだとか。この時、広告の商品などが販売していると、購入されるとのこと。

1回目で「こんな商品(サービス)あるんだー」ってなって、2回目で「あーこれ知っている…!」ってなって、3回目で「これ良く見るけど流行っているのかな…?買ってみよう…!」って感じですかね。確かに言われると、無意識にそんな感じに考えていますな。
因みに広告を4~5回以上見聞きした人は、それ以上、その広告について考えることはしなくなるらしい。つまり3回行えば十分ってことですね。
この単純な3ステップを踏んでいくというルールは、あらゆる広告媒体で利用可能とのことで例えば、

  • テレビコマーシャル
  • ラジオのコマーシャル
  • 新聞の広告
  • 電車内の広告
  • ポスター
  • チラシ
  • ダイレクトメール
  • バナー広告
  • 通販

などなどです。
更に、もっといえば広告以外にも応用可能で、

  • セールストーク
  • 講演
  • 勉強
  • 書類作り

などにも使えたりします。
兎に角、相手(又は自分)の記憶に残したい…!ってことは3回以上見聞きするようにすると良いと。
因みにより効果をアップさせるには、

  • それぞれ十分な時間、広告が表示されるようにする
  • 連続3回ではなく、時間の間隔を空けて、3回以上見聞きする

ってのが大事みたい。
これにより効果が大幅にアップするそうです。
これはコミュニケーションや学習、記憶の観点からも納得でして例えば、単純接触効果ザイアンスの法則なんてのはまさにこれと合致しているかと。
他にも、


ってところにも通じますね。
例えばネットの広告とかは、以前に自分が見たものが出てくるようになっておりまして、しかも何度か連続で出てきたり、と思ったら出てこなくなって少し時間が空いたら急にまた出てきたりしますよね。これらも3ヒット理論が基になっております。
ということで日常に潜んでいるんで意識してないと販売業者の思うツボになります(笑)



伝えたいことは3回以上ちりばめていうべし…!

相手に「これだけは伝えたい!心に残したい!」っていう時がありますよね…?
そういう時、まずは一言(単語)にして伝えるのがいいようです。文章にするのはダメということで、これは納得であります。だらだら文章を話されると「結局どこがポイントだったの?」とか「結局何がいいたかったの?」ってなりますよね。だから、一言(単語)を伝えようって気持ちで話すのがよろしいようです。
じゃあ、そういった一言(単語)はどのように残せばいいのでしょうか…?
実は相手の記憶に残すには3回以上ちりばめていうのが効果的ということです。
まず、同じ内容を相手に伝える実験によると、

  • 同じ内容を2~3回伝えた→46%覚えていた
  • 同じ内容を10回以上伝えた→82%覚えていた

ということで、当たり前ですが、同じ内容は言えば言うほど覚えているそうです。

次に2007年のプリンストン大学の研究によると1人に3回言う(3人がバラバラで伝える)と、90%の効果、つまり影響力があったそうです。
ちょっとわかりづらいので具体例を挙げると、

  1. BさんがAさんにこのお菓子はおいしいよ!と伝えた
  2. CさんがAさんにこのお菓子はおいしいよ!と伝えた
  3. DさんがAさんにこのお菓子はおいしいよ!と伝えた
  4. 結果、Aさんはこのお菓子はおいしい!と90%の確率で思うようになった…!

って感じです。これも非常にわかる話で皆がおいしいと言っているものはおいしい気がしてきますし、Amazonでレビューの星が「★★★★☆」と「★☆☆☆☆」があってどっちかを買うとすれば「★★★★☆」を選びますもんね~。90%の影響力があるっていうのも納得です。
因みに広告は3回みないと効果がない(記憶に残らない)そうです。ただし、5回以上みると人はあきるそうです。これも良くわかる話であまりにも同じことばかり言われるとあきますよね…。それにしつこい!ってなりますよね…。あ、自分も気をつけよ…。
そこで対策として表現方法を変えることがいいみたいです。つまり、繰り返しとバリエーションを変えるのが重要ということですね…!
つまり、まとめると、

  • 相手の記憶に残すには一言(単語)を3回以上繰り返しバリエーションを変えながらちりばめていうのが効果的

ということになります。
おそらく3回のうち、2回はピークとエンドになると思いますので、残り1回以上を話の隙間に埋めていくのがよろしいかと思います。



繰り返し見聞きする回数の効果を調べたメタ分析

2015年のドルトムント工科大学の研究によると、広告の繰り返しによる効果についてメタ分析を用いて調べてみたそうです。
そもそも広告を繰り返し見聞きすると効果的なのは分かっているんですが、繰り返す回数による効果の違いについてはよくわかっていなかったそうな。
んでここには大きく2つの意見がありまして、

  1. 1~3回繰り返せばOK。それ以上はほとんど意味はないんじゃないか…?
  2. 繰り返せば繰り返すほど良い。繰り返すこと自体が重要なんじゃないか…?

って感じなんですよ。
1~3回繰り返せばOK派は、クラグマン博士の1972年の研究やその後の追試によっても効果が見られたのが根拠です。
例えば、

  • 1971の研究によると、繰り返しの効果がピークに達したのは2回だった…!
  • 1996年の研究によると、1回の広告だけで十分に大きな気持ちの変化をもたらした…!

って感じですな。
それに対して、繰り返せば繰り返すほど良い派の主張は以下な感じです。

  • 1959年の研究によると、13回繰り返してみたが繰り返しが大量に行われたか、間隔をあけて行われたかに関係なく、広告メッセージを思い出すことが多くなり続けていた…!
  • 2005年の研究によると、5回繰り返してみたが依然として効果はアップし続けていた…!
  • 2002年の研究によると、10回又は25回繰り返してみたが依然として効果はアップし続けていた…!

いや~こんなんみていくと繰り返すことが良いのははっきりしますが何回がベストなのかわかんなくなっちゃいますね~。ということでこの辺をはっきりさせるべく、今回メタ分析をしてみることにしたらしい。
まず研究者たちは先行する研究をピックアップし、次にその中から質の高い研究を選んでいったそうです。最終的に基準を満たした研究は37件あったそうで、これらを用いてメタ分析をしてみたんだとか。
その結果は、

  • 約10回の繰り返しが最大の広告効果を発揮していた…!

とのこと。
なんと、3回ではなく10回がベストなんですね。因みに研究者によれば、繰り返しの効果は直線的に増加していき、8回目の繰り返しまでは横ばいにならなかったんだとか。つまり最低8回繰り返した方が良いみたいです。
それと、自然な感じで広告が目に入ったり、繰り返しの間隔が空くと、より効果的だったみたいなんで、webページに埋め込まれた広告や大量の広告は効果を高めるとのことでした。



その後の研究で10回以上の繰り返しでも効果がありそうだとなった…!

2018年のタンパ大学の研究によると、広告の繰り返し効果が購買意欲にどのような影響を及ぼすのか調べてみたそうです。
今まで見てきたとおり、先行研究で繰り返しの効果は立証されているものの、そのベスト回数についてはよく分からなかったので調べてみたそうなんですが、今回ポイントなのは、回数によって細かい効果が違うのではないか…?ってのを調べたこと。
んで、早速結果を見てみますと、

  • 今までの研究では広告を10回以上見ることは意味がないとなっていた。
  • しかし広告を10回以上見た人は9回以下の人よりも購入意欲が高まっていた…!

そうです。
10回以上でも効果があったんですねー。すごい…。
また、繰り返す回数と効果の違いも明らかになりまして、

  1. 広告を1~2回見た人:感情的な動機によって購入意欲がアップしていた…!
  2. 広告を3~10回見た人:認知的な要因によって購入意欲がアップしていた…!
  3. 広告を10回以上見た人:感情的な動機によってより強く購入意欲がアップしていた…!

みたいです。
つまり、繰り返す回数が少ないと、その場の感情(ノリや衝動)で買うし、ある程度の回数だと、ちゃんと考えた結果欲しいってなる、更にいっぱい同じ広告を見ると、やっぱ欲しい…!って感情が動きやすくなるってことですな。
確かに言われてみれば、繰り返す回数によって変わりそうですよね。



個人的考察

最後にまとめておきますと、

  • 繰り返し言ったり、見聞きした方が良いのは間違いない
  • 最低3回は繰り返しておきたいが、繰り返せるなら何回でも繰り返した方が良い
  • 繰り返す内容は自然な感じで相手に入っていくようにすると良い
  • 十分な時間、広告(キーワード・メッセージ)が表示されるようにすると良い
  • 繰り返しの間隔を空けると良い

って感じです。
これは支援でもプレゼンでも使えるテクニックなんで是非覚えておきたいですな。

とはいえ、これらのテクニックは「言うは易く行うは難し」です。そのため毎日ちょっとずつ意識していくのが使うのがよろしいかと思います。千里の道も一歩からですね。
また、一度に全部のテクニックを覚えて使わなくてもいいと思います。まずはピークエンドセオリーだけとか3回以上言うだけでもいいと思いますので使っていただければ幸いです。



参考文献