今回は脱フュージョンについて説明したいと思います。


脱フュージョンってなに…?

認知行動療法の一種にACTというのがありまして、このACTはアクセプタンス&コミットメント・セラピーの略なのですが、簡単に言うと、頭でっかちな自分は置いておいて、目の前の現実に注意を向けよう、そして、やりたいこと、やるべきことを今から始めよう…!って感じです。
このACTによく出てくる言葉として認知的フュージョンとその逆の意味である脱フュージョンというテクニックがあります。それぞれの意味はこんな感じ。

  • 認知的フュージョン:思考と現実や自己を混合する行動のこと。つまり、自分の考えと現実がごちゃごちゃになり、区別がつかなくなることをいう。現実よりも自分の考えが極端になってしまうことも…。
  • 脱フュージョン:思考と現実や自己は別の出来事であると観察できること。つまり、自分の考え、現実、自分自身は別であると区別がついていることをいう。

まとめると、頭の中がごちゃごちゃになりやすい人は脱フュージョンを使っていこう…!って話ですね。



脱フュージョンの方法

脱フュージョンには様々な方法があります。
とりあえずたくさん書いていきますが全部覚える必要はありません。気に入った順から試してもらい、自分に合うものを見つけてもらえればと思います



怒りを採点する(スケーリング)

怒りを採点する(スケーリングをする)方法です。前にSFAでも出てきた方法ですね。
怒りが100点満点中何点か考えるのがいいです。
もし、余裕があるなら理由も具体的に細かくすると良いと思います。
例としては「私はバカと言われたが、その言葉を言われた瞬間まるでマグマが噴火してあたり一帯に噴煙をまき散らすかの如き気持ちを大海の底で鎮めるように抑えていたが抑えきれない感じだった。だから70点…!」見たいな感じ。できるだけ、0、100にならないように語彙力を使って表現するのがポイントです。似たようなことをエクスプレッシブライティングで書きましたね。



感情をゆっくりいう

感情をゆっくりいう方法です。
誰でも一度はやったことがあるだろう扇風機に向かって「ワ~レ~ワ~レ~ハ、宇宙~人ダ…!」ぐらいのスピードかそれよりもっとゆっくりいう感じ(笑)
バカバカしいと思うかもしれませんがここがポイントで感情と距離を置ける(メタ認知できる)きっかけになります。



…と思った。と付け加える

感情が出た時の語尾に…と思った。と付け加える方法です。
例えば「うまくいかない…と思った。」とか「イライラした…と思った。」と言った感じです。これだけで上手くいくのかな~と思うかもしれませんがちゃんと研究で成果はあると発表されています。



歌う

感情を歌うという方法です。「ある~日、森の中、くまさんに出会~った」的な感じをアレンジして「バカ~って、言われて、イライラ、してしまぁ~った」みたいな感じ。別に何の歌でもいいので(もちろんオリジナルでも良し)歌ってみる。人がいてその場でできない場合は場所を変えるか、心の中で歌いましょう。これもふざけているのではなく証明された効果のある方法ということ。



変声やアニメ声で言う

感情を変声やアニメ声で言う方法。要はいつもの自分の声とかけ離れた声で言ってみる感じです。もちろん、人がいる前だと恥ずかしいので心の中や場所を変えていうのがよろしいかと。何度もしつこいようですが、これも証明された効果のある方法ということ。



頭で文字を想像してワードのように装飾してみる

頭で文字を想像してワードのように装飾してみる方法。感情を文字で想像したら(例えばバカとか)それのフォントを変えたり、サイズを変えたり、色を付けたりします(バカバカバカみたいなイメージ)



ハエになった自分が壁に張り付いている様子を想像する

ハエになった自分が壁に張り付いている様子を想像する方法。これもちゃんと効果があるか調べた論文があったりする。でも、なんでこんなの思いついて論文まで書こうと思ったんだろう…。クリエイティブ性が高いな~。



自分を外側から見ているもう一人の自分を想像する

自分を外側から見ているもう一人の自分を想像する方法。要は少し後ろから自分を見ている自分を想像しようってことで、自分の背後霊を自分が演じる感じ。まさに客観視しようって感じ。



自分を空の上から見ている雲だと思う

自分を空の上から見ている雲だと思う方法。上記より位が高くなった感じのバージョン(笑)雲から見下ろして自分を見てみようって感じ。



葉っぱにのせて川に流す

感情を葉っぱにのせて川に流してしまう方法です。

  1. まず、ゆったりと流れる川を想像します。
  2. その傍らに腰を下ろしているところを想像します。
  3. 自分の思考や感情に意識を向けます。
  4. その思考や感情をそれぞれ1枚の葉っぱにのせます。
  5. その葉っぱをそっと川に置いて流します。
  6. それをただ見送ります。
  7. 3~6をひたすら繰り返します。

ここでのポイントは、

  • 葉っぱが消えても、焦らず観察
  • 意識が葉っぱから離れたら、それに気づきそっと戻す
  • 川に入ってしまったら、それに気づき元の場所に戻る
  • 葉っぱと一緒に川を流れてしまったら、それに気づき元の場所に戻る
  • 葉っぱが重くて沈んでしまっても、焦らず観察
  • 葉っぱが遡上してきても、焦らず観察

となります。



脱フュージョンの注意点

最後に脱フュージョンの注意点を書いておきます。それは脱フュージョンを体験の回避に使わないことです。体験の回避とはネガティブな考えや感情を無理矢理抑え込んだり、考えないようにしようとするなど、ネガティブを避けようとする行動のことで、脱フュージョンを使ってこれをしてまうと反って逆効果。尚一層、ネガティブを強く感じてしまいます。理由はシロクマのリバウンド効果が働いてしまうため。そのため、注意トレーニングもそうですが、ネガティブを避けることには使わないようお気を付けください。
代わりに、ネガティブにはアクセプタンス(思考の傍観)をしましょう…!



個人的考察

いかがでしょうか…?
いずれも、第三者目線に立てばOKって感じです。また、バカバカしい感じなのが多いのも共通していますが、おそらく、その感覚が一歩引いた目線を持てる余裕さや冷静さを持つきっかけになるんでしょうね~。あと、前に紹介したRAINなんかもおすすめです。自分で色々試して合うものを見つけてください…!

私がよく職員や障がい者の方に伝えるのがお医者さんは当てはまる病名(障がい名)を診断してくれて、その障がいに効く薬をくれたりします。つまり、基礎、土台作りですね(いわゆる医学モデル)。でも、一人一人、年齢や性別、家族構成、価値観、人生観、性格から障がい特性の偏りなど千差万別で一人として同じ人はいないので、基礎、土台作りが終了し、安定したら、自分なりの体調安定法(コーピングレパートリー)をみつけることが必要になると思います。
もちろん、時間がかかるし、色々試していく中には逆に体調が悪くなることもありますが、それもこの方法を使うと危ないと知ることができるので大切な通過点だと思っています。これらをサポートするのが支援者であり、就労支援事業所の役割じゃないかと思っています。
前に医学博士が「らせん階段を昇っていくような感じで上から見ると堂々巡りのようだが横から見ると目的地まで着実に昇っている」と話していたように焦らず一段一段階段を昇っていく、つまり焦るのではなく急ぐのがよろしいのではないかと思う次第です。



参考文献

https://www.youtube.com/watch?v=uIgsqI2Stjw
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT12.pdf