今回はシングルタスクとマルチタスクについて書きたいと思います。



マルチタスクを目指せ…!はもう過去のお話

マルチタスクは同時に仕事などができてすばらしいって話を、私も以前にどこかで聞いたことがあるのですが、ここ数年前からマルチタスクよりやっぱりシングルタスクの方がいい…!って風向きが変わってきております。
ですが、いまだにマルチタスクをできるようになりたい、マルチタスクってすばらしいという方が多いのでそのあたりについてシングルタスクを目指した方が良いよ~っていう根拠を挙げていきたいと思います。
それと余談ですが、マルチタスクが一番うまいのは主婦の方ということです。もし、マルチタスクでいきたい!マルチタスクの能力を増やしたい!って方は家事をしてみるのがよろしいかと思います。



不安症・心配性の方や不安や心配なときは、脳はマルチタスク状態になっている…!

なぜ不安症や心配性の方や、そこまでいかなくても不安や心配なときに脳はマルチタスク状態になってしまうのか…?
不安症や心配性の方は特にそうですが、様々な不安や心配が湧き出る泉の如くでてきています。その一つ一つの不安や悩みについてどうしようどうしようと考えているのです。それらの不安や悩みを同時に考え、つまり、マルチタスクで考えているため、脳が飽和状態になってしまっていて解決したくても考える余裕がない状態の為、解決に結びつかないのです。
これは、パソコンを例にするとわかりやすいと思います。

  1. 不安や悩みというアプリケーションを同時にいくつも起動している(マルチタスク状態)
  2. メモリが100%になってしまう(脳の飽和状態)
  3. 一つのアプリケーションの終了の仕方を調べるためググりたくてもメモリが100%の為、ググれない(解決する余裕がない)
  4. ググれないのでパニックになる…!
  5. ググれないことに対して調べるため更なるアプリケーションが起動してしまう(不安が不安を呼ぶ)

こんな感じです。完全に負のスパイラルって感じですよね…。
こういう感じにならないようマルチタスクはやめておいた方がいいと言えます。

因みにこの場合のアプリケーションの終了(不安や心配を落ち着かせる方法)は

  1. まずはマルチタスク状態であることに気付く(不安を認める)
  2. 消していきたい不安等を明確にする(起動しているアプリケーションの数を確認する)
  3. 優先順位をつける(アプリケーションの消していく順番を決める)
  4. 明確化した不安や優先順位を見える化する(書き出してみる)
  5. 優先順位の高かった順にシングルタスクで片づけていく(一つ一つ順番にアプリケーションを終了する)
  6. 飽和状態が少しずつ解消され(不安が少しずつ消えていくと)余裕ができるので不安を消していくスピードが速くなる(メモリが100%から90%…80%と下がっていくので処理スピードが上がる)
  7. 不安がほとんどなくなり落ち着く…!

という感じです。自分の思考や外部からの刺激で邪魔されマルチタスカーになってしまうので、まずは上記に従ってシングルタスクでの解決を考えてみるのがよろしいかと思います。また、不安症の人は不安はいいものであることや不安(緊張)は集中力を上げるということに着目できるようにしておくのも一つの手かと思います。

とはいえ、実際の飽和状態の時にこんなに手順を思い出せないよ!って方もいらっしゃるかと思いますので、「不安症や心配性な人→マルチタスク状態になってしまうから→シングルタスクにする→1つのことに集中させる!」とだけでも覚えておいてください。



集中できない人はマルチタスクを疑え…!

何故か集中できない…って方もマルチタスクを疑った方が良いかと思います。
集中力を作るには何も考えない時間を作るのが大切です。ですが、集中できない方は、何もしていない時にも心配事が湧き出ているのです。これは意識的、無意識的に関係なくでてしまう(勝手にアプリケーションが起動するパターンもある)ので注意が必要です。つまり、集中できない→心配事が湧き出てしまう→マルチタスク状態という感じです。湧き出る量が多ければ多い程マルチタスク状態ということになります。

思い当たる方はマルチタスクを疑った方がよろしいかと思います。



忙しいは幻想…。原因はマルチタスク状態に有り…!

忙しさは幻想でマルチタスクが原因だということをご存知でしょうか?
調査によると、世界中の人の仕事時間の合計は、過去40年間でまったく増えていないどころか少なくなっているらしいです。これは納得できる話で交通手段の発達や工場のオートメーション化、パソコンやネットの普及があるので当然かと思います。
ですが、私たちは忙しくありませんか…?
原因はマルチタスク状態にあるからということです…!
どういうことかというと、マルチタスク状態は

  • 集中力を大幅に奪ってしまう
  • IQが平均15ポイントも下がってしまう
  • タスクから別のタスクへ何度も注意を切り替えると、そのたびに脳が疲弊し、時間に対するプレッシャーが増えてしまう。結果、時間に追われているような錯覚が起きてしまう
  • 何故か(特に日本がこの傾向が強いが)「忙しい=有能」だと思っている人が多い

からということです。まさに悪循環ですね~。
こんなの知ってしまうとマルチタスクなんてしたいとは思いませんね…。
忙しい=有能ってのは特に間違いであることを社内全体に周知したいです…。


他のマルチタスクが良くないって情報についてはこちらをご覧ください。



じゃあどうすればいいの…?

でも、実際仕事はいろいろやらなきゃいけないし、どうしろっていうの?という方も多いかと思います。かく言う私もそうですが、切り替えが早い人になればいいかと思います。切り替えが早い人とは、一つを集中して成果を出すとすぱっとやめて次へ行く人のことを言います。つまり、区切りを付けて次に行く人です。それをシングルタスクと言います。
皆さんもマルチタスクをやめてシングルタスクにしてはいかがでしょうか…?



スーパータスカー

ほとんどの人の脳はマルチタスクが苦手でシングルタスクを目指すべきなんですが、やはり、何事にも例外があるもので、世の中にはマルチタスクを行っても生産性が落ちず、シングルタスクの時と同様の能力を発揮できる人達がいるみたい。それがスーパータスカーと呼ばれる方たちで2010年のユタ大学の研究2014年のユタ大学の研究により見つかっております。因みに上記研究によれば、

  • 全人口の97.5%はマルチタスクが苦手でシングルタスクの方が良かった…。
  • 全人口の2.5%はマルチタスクでもシングルタスクでも問題ないスーパータスカーだった…!

とのこと。もし「自分はスーパータスカーだ…!」っていう天才の方がおられましたら、今までの文章は無視してください(笑)



マルチタスクのパフォーマンス低下には例外がある…!それは運動+頭を使うこと…!

2015年のフロリダ大学の研究によると、パーキンソン病の方と健康な高齢者を比較して、運動と認知機能のマルチタスクにおけるパフォーマンスの影響について調べてみたそうです。
そもそもマルチタスクを行うと、片方又は両方のパフォーマンスが落ちるんですが、パーキンソン病の方は更にパフォーマンスが落ちちゃうんですよね。
じゃあ、運動と認知機能のマルチタスクだと実際パフォーマンスはどうなるのかを調べたのが今回の研究になります。
実験はパーキンソン病の患者さん28名と健康な高齢者の方20名で行ったそうで、流れはこんな感じとなっております。

  1. まずは参加者全員に静かな部屋に座ってもらう。
  2. 12種類からなる認知テストを受けてもらう(この認知テストで認知処理速度、認知処理制御、視覚情報処理、単語記憶、ワーキングメモリ実行機能の6つの認知機能をチェックした)
  3. 自分が思う快適な速度でエアロバイクを漕ぎながら、再度、12種類の認知テストを受けてもらう(エアロバイクの合計時間は33~50分だった)
  4. 最後に統計処理をして、座って認知テストとエアロバイク+認知テストのデータを比較してみた。

気になる結果を見てみると、

  • エアロバイク+認知テストを行うとエアロバイクだけ漕ぐよりもスピードが速くなっていた…!
  • パーキンソン病の方、健康な高齢者の方の両方で、エアロバイク+認知テストを行うと6つの認知テストで大幅に漕ぐスピードがアップしていた…!
  • エアロバイクのスピードは、最も簡単な認知テストで速く、認知パフォーマンスはほとんど影響を受けていなかった…!
  • パーキンソン病の方は健康な高齢者の方に比べ、エアロバイクのスピードが遅く、エアロバイク+認知テストのメリットが少なかった…!
  • エアロバイク+認知テストでのパフォーマンスは3つの例外を除いて差がなかった…!逆に2つの認知テストに至ってはパフォーマンスが向上していた…!

とのこと。
通常、マルチタスクはパフォーマンスが落ちるのに、エアロバイク+認知テストだと運動パフォーマンスは向上、認知機能も影響なしか、場合によってはアップする…!ってのはすごいですねー。マルチタスクにも例外がありましたな。
但し、注意点もあるみたいで、運動レベルが低く一定に保たれている必要があるそうな。そのため、HIITのような激しい運動ではパフォーマンスアップは望めないらしい。
つまり、運動に気を取られない、無意識なレベルでできる運動で仕事や勉強、読書なんかをすると良い…!ってことですね。
因みに運動・認知機能の両方に重要なカテコールアミンの分泌増加が関係しているんじゃないかとのことです。

以上を踏まえて、マルチタスクの例外を上手く使うのならば、

  1. 快適な運動レベル(運動に気を取られない、無意識なレベル)で運動する(トレッドミルによるウォーキングやエアロバイク、スタンディングデスク、ステッパーなんかが良さそう)
  2. その上で、仕事や勉強、読書なんかをする

と、運動パフォーマンスアップも認知機能アップもしてウマウマな状況になるってことですねー。



マルチタスクが高齢者・若者のワーキングメモリに及ぼす影響について調べてみた…!

2011年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究によると、マルチタスクが高齢者・若者のワーキングメモリに及ぼす影響について調べてみたそうです。
そもそもマルチタスクは、ワーキングメモリに悪影響を及ぼすと先行研究で出ております。またワーキングメモリへの影響は、通常、加齢とともに悪化するんだとか。
そこで今回、fMRIを用いて、高齢者と若者を比較し、その影響とメカニズムを調べてみることにしたそうな。
この研究は、健康な高齢者と若者の男女が参加したものでサンプル情報は以下な感じ。

  1. 健康な高齢男女20名が参加。平均年齢は69.1±7.2歳。うち男性は7名。3名が分析から除外。
  2. 健康な若者男女22名が参加。年齢幅は18〜32歳で平均年齢は24.57歳。うち男性は13名。2名が分析から除外。

んで、参加者全員には、以下のタスクを行ってもらったらしい。

  1. 自然の風景画像を見る。
  2. 気を散らすため顔の画像を見る。
  3. この時、参加者には、無視するように指示、又は、性別や年齢を考えるように指示した。
  4. 最後にもう一度、自然の風景画像を見る。
  5. この自然の風景画像が最初の物と同じかどうか答える。

イメージは以下な画像とのこと。


最後に集まったデータを見比べてみた結果、以下の傾向が見られたそうです。

  • 高齢者は若者と比較して、気を散らす画像を見ることにより、ワーキングメモリのパフォーマンスがより低下していた…!
  • fMRIの結果、気を散らす画像を見ることにより、高齢者も若者も、注意が分割され、ワーキングメモリのパフォーマンスが低下していた…!
  • 但し、高齢者は若者と違い、一旦、注意が分割されると、再構築に失敗することが多かった…!

つまり、高齢者も若者もマルチタスクによってワーキングメモリのパフォーマンスが落ちるんだけど、高齢者の場合、切り替えで元に戻るのに失敗する可能性が高まるみたい。
マルチタスクで短期記憶に悪影響が出るのは間違いなさそうなんで、シングルタスクを意識していきたいですねー。



マルチタスクを行いがちな人の特徴について調べてみた…!

2013年のユタ大学の研究によると、マルチタスクを行いがちな人の特徴について調べてみたそうです。
そもそも2009年のスタンフォード大学の研究では、マルチタスクを行った場合の認知能力について調べておりまして、結果、頻繁にマルチタスクを行う人は、まれにマルチタスクを行う人よりも、マルチタスクが苦手だったそうです。更に面白いのが、頻繁にマルチタスクを行う人は、外部刺激に弱く、気が散りやすい傾向があったんだとか。そのため、頻繁にマルチタスクを行う人は、認知能力が低い人である可能性があるらしい。脳力が低いのに更に低くなるマルチタスクをしがち…!ってのはなんだか悲しい話ですね。
じゃあなんで、脳力の低い人ほどマルチタスクをやりがちなの…?って疑問が湧きますが、

  • 他の人に比べて自分のマルチタスク能力を過大評価しているから…!

とのこと。
ダニング=クルーガー効果が働いているっぽいですね~。また他の可能性も考えられるそう。そこで今回詳しく調べてみることにしたみたい。
この研究は、ユタ大学の大学生310名(女性176名、男性134名)が参加したもので、年齢は18歳から44歳、中央値は21歳だったそうな。んでまず参加者全員に、運転と運転態度に関する調査の一環として、アンケートに答えてもらったとのこと。
質問内容は、運転中のながらスマホの使用レベルについてでして、5段階評価してみたそうな。また、運転中の使用時間の割合についても聞いてみたらしい。
その後、マルチタスクの主観的評価と客観的評価、衝動性や刺激への強さなんかもチェックしたそうです。
最後にデータを統計処理し、傾向を見てみたんだとか。
気になる結果は以下のようになったとのこと。

  • マルチタスク能力は、マルチタスクの頻度と正の相関関係になかった…!
  • どころか、マルチタスクの頻度とマルチタスク能力テストの成績は負の相関関係にあった…!
  • にも関わらず、マルチタスクの頻度が高い人と主観的なマルチタスク能力は正の相関関係にあった…!

とのこと。
つまり、マルチタスク能力と頻度は関係ない、むしろマルチタスク能力が低い人ほど、マルチタスクをやりがち…!しかも自分ではマルチタスクが得意だと思い込んでいる…!ってことですね。これは痛い…!
またこの研究では、他にもマルチタスクを行いがちな人の特徴が判明しまして、

  • マルチタスクの頻度と衝動性には正の相関関係にあった…!つまり衝動性が高い人はマルチタスクをしがち…!
  • マルチタスクの頻度と刺激への弱さには正の相関関係にあった…!つまり刺激に弱い人はマルチタスクをしがち…!

だったそうです。衝動性の高さと刺激への弱さか~。
では、なんでこういった方々はマルチタスクにやりがちなのかですが、

  • 自信や報酬、承認欲求などが高い人は、複数のタスクを引き受けるという誘惑に負けてしまう可能性がある。結果、マルチタスクになる…!
  • 対照的に、リスク回避や損失、ミスに敏感な人は、より多くのタスクを行おうとするとリスクが増えるため、タスク量を管理する。結果、マルチタスクよりもシングルタスクになる…!
  • 衝動性が高い人は、思いつくまま色々なタスクに手を出してしまう。結果、マルチタスクになる…!
  • 刺激に弱い人は、誘惑に負けてしまい、ながら行動をしてしまう。結果、マルチタスクになる…!

みたい。
確かにどれも差もありなん…!って感じですな。
ということで、自分のマルチタスク能力に過信せず、シングルタスクを意識して行きたいですねー。



個人的考察

いかがだったでしょうか?マルチタスクは如何に余裕がなくなりデメリットが多いか少しは感じることができたのではないでしょうか?
スーパータスカー(天才)でない限り、シングルタスクで切り替えを早くするのが現実的ではないかと思う次第です。因みに私は今後もシングルタスクを意識していきたいと思います。
あと、余談ですが、マルチタスク=飽きっぽい人やシングルタスク=物事を同時にできない人ではないので勘違いしないようよろしくお願いします。
それとシングルタスクについてもうちょい詳しく…!って方は、ちょっと古いけど「SINGLE TASK シングルタスク 一点集中術「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる」って本がオススメです。



参考文献

https://link.springer.com/article/10.3758/PBR.17.4.479
https://link.springer.com/article/10.3758/s13423-014-0713-3