抗鬱剤・抗うつ薬・向精神薬って結局どれがいいの?
はじめに、今回の記事はいくつかの信頼性が高い研究を主軸に抗鬱剤・抗うつ薬・向精神薬について個人的にまとめてみたいと思い、書いてみました。
個人的まとめの為、この記事に書かれたことについて何かあっても自己責任となります。あらかじめご了承ください。話変わって、精神障がいの方は自分が服薬されている薬が取り上げられているか、最新の研究から効果が高い物と評価されたものなのかみてみるとよろしいかと思います。
もし、この薬を使ってみたい…!ってものがあれば主治医に相談してみるのもいいかもしれません。
では、前置きはこの当たりにして、さっそく内容に入っていきたいと思います。
①2016年のオックスフォード大学のメタ分析
まずは2016年のオックスフォード大学のメタ分析からご紹介。このメタ分析は過去に行われた34件の抗鬱剤の実験をまとめたものです。対象者は9歳から18歳までの男女5,260人で、子どもに抗鬱剤は有効なのかを調べたそうな。そして、結果、分かったのがプラセボ効果より効果がありそうな抗鬱剤はプロザックだけだったそうです。更に衝撃的だったのはSNRI系の抗鬱剤は逆に自殺願望を増やす可能性があったそうな。因みにプロザックもそんなに効果が高いわけではなかったらしい…。
子どもは注意が必要かもしれないですね…。
②2016年の北欧コクランセンターの系統的レビュー
続いて2016年の北欧コクランセンターの系統的レビューをご紹介します。この系統的レビューでは過去に行われた13件の抗鬱剤の実験をまとめたものです。対象者は健康な成人612人で、成人のメンタルに抗鬱剤は悪影響なのかを調べたらしい。そして、結果、分かったのが抗鬱剤を服薬した成人は54パターンの副作用(悪夢・焦り・ムカムカ・神経過敏・不安・鬱など)を体験しやすかったそうな。因みにこれはプラセボ効果に比べ副作用の発生率が2倍だったそうで単なる偶然ではないみたい…。
更に怖いのが研究者が抗鬱剤を健康な成人が服薬した場合、自殺や暴力につながる状態の発生率が2倍になると言ったところ(但し、実際に自殺願望が出たかどうかは不明)
安易に「病んだ」とか言って、抗鬱剤に手を出すのは危険でできれば、規則正しい生活(食事・睡眠・運動など)の改善がメインで本当に必要な人だけ服薬した方が良さそうですね。この当たりはしっかり主治医と相談して進めていきたいところです。
③2018年のオックスフォード大学のメタ分析
続いて2018年のオックスフォード大学のメタ分析をご紹介します。このメタ分析は過去に行われた抗鬱剤の実験から質が高い522件をまとめたものです。522件のうちのいくつかはプラセボ効果と比較、残りはガチンコ(head-to-head試験:抗鬱剤と抗鬱剤を比較した試験)だったそうな。対象者のほとんどが中度から重度の大うつ病患者で治療期間は平均8週間、延べ116,477人(平均年齢44歳、62%が女性・ほぼ半数が北米、27%がヨーロッパ人、7%がアジア人)のデータを基に21種類の抗鬱剤の有効性・副作用をチェックし、最も有効な抗鬱剤を調べたということです。非常に大規模な研究ですよね~。
因みに21種類の抗鬱剤は、
- アゴメラチン(Agomelatine)→商品名:Valdoxan
- アミトリプチリン(Amitriptyline)→商品名:Elavil
- エスシタロプラム(Escitalopram)→商品名:Lexapro
- クロミプラミン(Clomipramine)→商品名:Anafranil
- シタロプラム(Citalopram)→商品名:Celexa
- セルトラリン(Sertraline)→商品名:Zoloft
- デスベンラファキシン(Desvenlafaxine)→商品名:Pristiq
- デュロキセチン(Duloxetine)→商品名:Cymbalta
- トラゾドン(Trazodone)→商品名:Desyrel
- ネファゾドン(Nefazodone)→商品名:Serzone
- パロキセチン(Paroxetine)→商品名:Paxil
- ビラゾドン(Vilazodone)→商品名:Viibryd
- ブプロピオン(Bupropion)→商品名:Wellbutrin
- フルオキセチン(Fluoxetine)→商品名:Prozac
- フルボキサミン(Fluvoxamine)→商品名:Luvox
- ベンラファキシン(Venlafaxine)→商品名:Effexor
- ボルチオキセチン(Vortioxetine)→商品名:Brintellix
- ミルタザピン(Mirtazapine)→商品名:Remeron
- ミルナシプラン(Milnacipran)→商品名:Savella
- レボキセチン(Reboxetine)→商品名:Edronax
- レボミルナシプラン(Levomilnacipran)→商品名:Fetzima
ということ。精神障がいの方は自分のお薬手帳と照らし合わせて、服薬している物がないか見てみるとよろしいかと思います。
では、下記に結果をまとめていきます。
効果が高かったのは、
- アゴメラチン
- アミトリプチリン
- エスシタロプラム
- パロキセチン ※副作用の発生率も高い
- ミルタザピン
効果が低かったのは、
- トラゾドン
- フルオキセチン
- フルボキサミン
- レボキセチン ※全く効果がない可能性有
ドロップアウトが少なく反応率も高かった抗鬱剤は、
- アゴメラチン
- エスシタロプラム
- セルトラリン
- パロキセチン
- ミルタザピン
上記より有効性が劣っていた抗鬱剤は、
- トラゾドン
- フルボキサミン
- レボキセチン
副作用が少なかった抗鬱剤は、
- アゴメラチン
- エスシタロプラム
- シタロプラム
- セルトラリン
- ボルチオキセチン
- フルオキセチン
- アミトリプチリン
- クロミプラミン
- デュロキセチン
- トラゾドン
- フルボキサミン
- ベンラファキシン
- レボキセチン
以上を踏まえた上で、抗鬱剤は
- アゴメラチン(Agomelatine)→商品名:Valdoxan
- エスシタロプラム(Escitalopram)→商品名:Lexapro
が良さそうな感じらしい。
更にこの研究のポイント・注意点としては、
- 全ての抗鬱剤には少なくともプラセボ以上の効果があった
- 対象者が成人のみの為、子どもは不明
- 大うつ病への効果しか調べていないので他は不明
- 不安障がいも同様の効果なのかも不明
- 鬱病をひとくくりにしているので細かく分けた場合はどうなるか不明(例:遺伝の鬱病とトラウマの鬱病が一括りになっている)
- 新薬ほどプラセボ効果が出やすい為、効果が大きく出ている可能性がある
- ほとんどの実験は8週間ぐらいだった。つまり、長期的な効果は不明
- ネットワークメタ分析の為、どのような患者の反応がいいのか?副作用が出やすいのか?が判断できない
ということみたい。
う~ん。難しいですね~。
④2017年のウプサラ大学の研究
最後は2017年のウプサラ大学の研究をご紹介します。対象者は社交不安障害がいの患者で毎日20mgのエスシタロプラムを服薬するように指示したそうな。エスシタロプラムは先程効果が確認された抗鬱剤で脳のセロトニンを増やすタイプの薬です。不安やモチベーションの低下に使われてきたSSRIの一種でレクサプロやシプラレックスという商品名で売っている薬となります。
次に、2グループに分け、以下のことをしたそうです。
- 抗鬱剤の正しい情報を伝える(副作用や薬効の出方など)
- 抗鬱剤の嘘の情報を伝える(「あなたが飲む薬は、本物の薬と似た副作用が出ますが、不安は改善しません」みたいな感じらしい。こんなこと言われても飲まにゃいかんとか自分なら飲むのを速攻でやめそう(笑))
この後、9週間ほど過ごしたそうで、結果、抗鬱剤の正しい情報を伝えられたグループは、抗鬱剤の嘘の情報を伝えられたグループに比べ、3倍も薬の効果が高くなったそうな。同じ薬を飲んだにも関わらずエラい違いですね~。
更に全員の脳もスキャンして調べたそうで、抗鬱剤の正しい情報を伝えられたグループは、後帯状皮質と扁桃体の活動が収まっていたらしい。つまり、不安や恐怖に強くなり、結果、メンタルの落ち込みにも強くなったと言えます。
まとめると、プラセボ効果によって服薬する薬の効果が3倍変わるみたいなんで、自分が服薬する薬について正確な情報をしっかりと調べる、又は、主治医に聞くこと、治療のプレゼンテーションが上手い医師を主治医にすることがポイントになってきます。なんてったって3倍は大きいですからね…。
因みにこの結果から推測するに、抗鬱剤の効果が個人によって差が大きくでること、抗鬱剤が全く効かない人がいるのは、プラセボ効果の発動が原因の可能性もありそうですね~。
個人的考察
ということで、色々書きましたが、抗鬱剤・抗うつ薬・向精神薬について書いてみました。最後に全てのまとめを書いてみると、
って感じですかね。
皆さんの参考になれば幸いです。
- 子どもと成人では抗鬱剤の効果にかなり違いがありそう。
- 子ども・成人に限らず副作用が気になるので、不必要な服薬は避けた方が良さそう。
- 子どもの場合は抗鬱剤の効果が小さそう。
- 成人の場合はアゴメラチンかエスシタロプラムの服薬が良さそう。
- 薬についての正しい知識を身に付ければ効果が3倍に跳ね上がりそう。
- 基本は規則正しい生活(食事・睡眠・運動など)でやっぱり重要そう。
- 服薬だけでなく、認知行動療法などのテクニックも併用すると良さそう。
って感じですかね。
皆さんの参考になれば幸いです。
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