【まとめ】体中を常に剣山で刺されるような痛みがある「線維筋痛症」の症状改善・対策には何が良いのか?
線維筋痛症は、四六時中、全身に痛みがある病気で慢性疼痛の一種と考えられております。例えば、1997年のシダーズ・サイナイ医療センターの研究によれば、線維筋痛症は痛みの増幅や筋骨格系の不快感など、身体の広範囲(全身)にわたる痛みを伴う症状があるとのことです。また特に女性に多い病気としても有名ですね。
そしてその発症率について2009年のミシガン大学の研究によれば線維筋痛症の発症率は世界中で0.5~2%ぐらいとのこと。
当時、その利用者さんに線維筋痛症はどのような痛み(病気)なのか聞いたことがあるんですが、
- 体中を常に剣山で刺されるような痛みがある
とおっしゃっておりました。この例えは非常に分かりやすくて、私は今でも使わせていただいております。
またこの時、難病指定されていないけど指定されていいぐらいの辛さであり、専門医も少なく、同じ病気の方も少ないため情報も少ないということもおっしゃっておりましたね。
んで、この方の支援をきっかけに線維筋痛症というものに興味をもちまして、当ブログでも改善する可能性のある対策をご紹介しております。
一応挙げておきますと、
って感じです。
んでここ数年で線維筋痛症についての系統的レビューが出ていましたのを見つけたんで、ご紹介しておこうかと思います。
線維筋痛症の診断基準について
まず大事な線維筋痛症の診断基準についてのお話です。
早速結論を申しますと、実は、線維筋痛症にはこれだ…!っていう診断プロセスがないんですよ。なんでしっかり判断する方法すら見つかっていないのが現状であったりします。
ではどうやって現在診断しているのかといいますと、米国リウマチ学会(ACR)が作った分類基準を満たす場合に線維筋痛症だ…!となります。
そして、この分類基準は1990年に最初に考案されます。その後、
って感じで、3回アップデートを繰り返したんですよね。
なんで、線維筋痛症の発症率を調べた場合、当時どの時代の診断基準が使われたかによって多少の違いが出てしまうという難点がございます。この辺については2015年のアバディーン大学の研究が参考になりまして、1990年の分類基準、2010年の分類基準、2011年の分類基準を見比べているんですよね。
結果をあっさり並べますと、
- 1990年:発症率→1.7%、女性と男性の比率→13.7:1
- 2010年:発症率→1.2%、女性と男性の比率→4.8:1
- 2011年:発症率→5.4%、女性と男性の比率→2.3:1
って感じで、1990年よりも、2011年の方が、発症率が高く、男性の発症者も多い傾向にあります。
但し、これらの結果はむしろ良い事でして、というのも線維筋痛症の患者さんをより正確に診断できるようになったとも言えるんですよね。例えば、上記に挙げた2016年の分類基準の研究を見てみますと、
- 1990年の分類基準の精度:86%
- 2010年と2016年の分類基準の精度:89.5%…!
になっております。
なんで、謎が多く手さぐり感はありますが、少しずつ前進しているって感じです。
系統的レビュー・メタ分析で調べた線維筋痛症の発症率
2017年のマザンダラン医科大学の研究によると、線維筋痛症の発症率について系統的レビュー・メタ分析で調べてみたそうです。
まず研究者たちは、線維筋痛症の発症率に関する先行研究をデータベースで検索し、次に質の高い研究をピックアップしていったそうな。結果、65件の研究が選ばれたとのこと。
65件の研究の総サンプル数は3,609,810名だったそうで、この中で線維筋痛症の発症率に関する証拠は81件あったそうな。
それらから発症率に関する共通点などをまとめていった結果、以下のようになったそうです。
- 一般的な方が発症する可能性は1.78%(1.65~1.92)だった。
- 女性の方が発症する可能性は3.98%(2.80~5.20)だった。
- 男性の方が発症する可能性は0.01%(-0.04~0.06)だった。
- リウマチ科や内科を受診する患者さんが発症する可能性は15.2%(13.6~16.90)だった。
- 過敏性腸症候群(IBS)の患者さんが発症する可能性は12.9%(12.70~13.10)だった。
- 透析を行っている方が発症する可能性は6.30%(4.60~7.90)だった。
- 2型糖尿病患者さんが発症する可能性は14.80%(11.10~18.40)だった。
つまりここから何が分かるのかと言いますと、
- やはり女性の方が男性よりも発症率が高い(およそ400倍)
- インスリンに問題がありHbA1c(血糖値)が高めだと発症率も高まる
- 腸内環境が悪くても発症率は高まりそう
- リウマチとの関連性も高そう
って感じではないでしょうか。
ということで従来から言われておりました、女性に多い病気・発症率は世界で約0.5~2%ってのはやはり正しそうな感じです。
この研究はアメリカのカンザス州ウィチタに住む3,006人を対象に行ったもので、痛みの有無や痛みの範囲などをチェックしたそうな。その後広範囲に痛みがある193人を含む391人に詳細なインタビューをしてみたらしい。
その結果、
- 線維筋痛症の発症率は約2%(1.4~2.7%)だった…!
- 線維筋痛症の女性の発症率は約3.4%(2.3~4.6%)だった…!
- 線維筋痛症の男性の発症率は約0.5%(0.0~1.0%)だった…!
とのこと。
更にここでは女性の年齢別の発症率も見ておりまして、その結果がこちら。
- 20~40歳の女性の線維筋痛症の発症率は3.9%だった…!
- 40~60歳の女性の線維筋痛症の発症率は5.8%だった…!
- 60~79歳の女性の線維筋痛症の発症率は7.0%だった…!
つまり、線維筋痛症ってのは歳を重ねるごとに発症率がアップしてしまうみたいなんですよね。
また1999年のウェスタンオンタリオ大学の研究でも似たようなことを調べておりまして、こちらの研究では、カナダのオンタリオ州ロンドンに住む成人男女3,395人を対象に線維筋痛症の発症率をチェックしております。
この研究では日ごろの痛みについて電話によるアンケート調査を実施、そこで線維筋痛症の疑いがある人にリウマチ科を受診するよう勧めてみたそうな。その後リウマチ科を受診し線維筋痛症かどうかをはっきりさせたらしい。
結果、
- この実験では100名の線維筋痛症の方がいた。
- 100名中、86名が女性だった。
- 線維筋痛症の方の平均年齢は女性が49.2歳、男性が39.3歳だった。
- カナダのオンタリオ州ロンドンでの推定発症率は女性が4.9%、男性が1.6%だと思われる。つまり、男女比は1:3となる。
とのこと。
やはり似たようなところに収まっておりました。
んで、気になる年齢別の発症率は、
- 女性の発症率は年齢とともに確実に上昇していた…!
- 18~30歳の女性の発症率は1%未満だった…!
- 55~64歳の女性の発症率は約8%だった…!
- その後の女性の発症率は下がっていく傾向にあった…!
- 男性の発症率のピークも中年だった(2.5%)
そうです。
因みに線維筋痛症の発症率アップに共通した事項としては、
- 性別が女性
- 中年
- 学歴が低い
- 世帯収入が低い
- 離婚している
- 障がいがある
などが関係していたらしい。
ということでやはりこちらでも基本的には年齢を重ねるにつれ発症率はアップしておりました。
この研究は線維筋痛症の患者さん246人を対象に行ったということで、以下の3つの学歴グループに振り分けたそうな。
- 中卒・高卒グループ:99人
- 大卒(college)グループ:84人
- 大卒(university)グループ:63人
続いて、線維筋痛症の症状の重さや機能状態、生活の質を様々な評価表、アンケート、スケールでチェックしたとのこと。
最後に年齢や性別を調整して共通点を探してみた結果、線維筋痛症は、
- 女性に多くみられる…!
- 年齢が上がるにつれて発症・症状が重くなる…!
- 学歴(社会的地位)が低い方が発症・症状が重くなる…!
- 年収(経済的地位)が低い方が発症・症状が重くなる…!
- 田舎に住んでいる女性に多くみられる…!
とのこと。
なんとなく共通点をざっくりいうなら慢性ストレスがかかりやすい環境といえるのではないでしょうか…?まぁ慢性疼痛は脳の誤作動・認知のズレが原因の可能性が高いんで、有り得る話かと…。
とりあえず当てはまる方は注意が必要ということで。
線維筋痛症の痛みってどのような症状に派生していくの…?
1997年のカンザス大学の縦断研究によると、線維筋痛症の追跡調査を行って症状がどうなっているのか調べてみたそうです。
この研究は6か所のリウマチセンターに通院している患者さん538名を対象に行ったもので、半年ごとにアンケートを郵送し、健康状態について答えてもらったそうな。最初のアンケート結果の発症期間の中央値は7.8年だったそうで、追跡は7年間にも及んだとのこと。
また、カンザス大学ウィチタセンターに10年以上通院していた85人の患者さんについても追跡調査をしてみたそうです。
結果、
- 全身の慢性的な痛みや疲労感、睡眠障害、不安感やうつ病といった症状があった…。
- 症状は時間経過に対して変化せず、最初と最後のアンケート評価の相関も0.82だった…。
とのこと。
う~ん…。痛みから疲労感や睡眠問題、メンタル問題と幅広く派生していってしまうみたいですね~。
また2001年のハレルヤ・エーカーズ財団の研究には、朝のこわばりや頭痛、過敏性腸症候群(IBS)なんかも起きるって書いておりました。
そして、肝心の痛みの度合いですが1991年のウィチタ州立大学の研究によれば、線維筋痛症の痛みは関節リウマチと同程度ってことなんで、これは相当辛い物がありますね…。
決め手に欠けるが線維筋痛症には低カロリーダイエット、生野菜のベジタリアン、低FODMAPが良さそう…!
2019年のポルト大学などの研究によると、線維筋痛症の症状改善にどのような食事法が良いのか系統的レビューでしっかり調べてみたそうです。まず研究者たちは、PubMed、BioMed Central、コクランライブラリー、Embase、LILACS、ISI databasesという6つのデータベースを使い、線維筋痛症と○○という二つの単語を使用して検索してみたそうです。因みに○○には、食事や食事療法、栄養、SIBO(小腸内細菌増殖症)、小腸内細菌の異常増殖、腸内フローラ、腸内環境、腸内細菌みたいな単語を入れたとのこと。
結果、1990年1月~2018年4月までに発表された線維筋痛症と食事の研究をピックアップできたそうな。更に参考文献を手動でチェックし、検索にかからなかった研究も選んでいったとのこと。最後の検索は2018年5月14日だったそうで、全てピックアップ終了後、この中から質の高い研究を選んでいったそうです。
結果、1990年1月~2018年4月までに発表された線維筋痛症と食事の研究をピックアップできたそうな。更に参考文献を手動でチェックし、検索にかからなかった研究も選んでいったとのこと。最後の検索は2018年5月14日だったそうで、全てピックアップ終了後、この中から質の高い研究を選んでいったそうです。
206件の重複を除いたら972件も研究はあったんですが、その後、質の低い研究を除いていったら最終的に7つの研究にまで絞り込まれたそうで、内訳は、
- ランダム化比較試験(RCT):3件
- 非ランダム化比較試験:1件
- 非対照試験:3件
とのこと。
またサンプルの全体像についてはこんな感じでした。
- ランダム化比較試験(RCT)と非ランダム化比較試験の線維筋痛症患者さんは合計266人(介入群132人、対照群134人)で、そのうち女性は255人だった(つまり男性はたったの11人だった)
- 非対照試験の線維筋痛症患者さんは合計82人で、全て女性だった。
- サンプルサイズの平均は49.7人だった。
- 実験期間は4週間~7ヶ月だった。
- 線維筋痛症患者さんの年齢は39.5歳~54.5歳だった。
次に7つの研究で試された食事法を見ていきます。
- 低FODMAP:1件
- グルテンフリーダイエット:1件
- グルタミン酸ナトリウム(味の素とか)・アスパルテームを含まない食事法:1件
- 低カロリーダイエット:2件
- 生野菜のベジタリアン:2件
では結果を見てみましょう…!
上記の研究をまとめていったらこんな感じになったそうです。
- 7件中5件の研究で線維筋痛症患者さんの症状が改善されたと報告があった…!
- 5件中2件の研究で線維筋痛症患者さんの疲労状態が改善されたと報告があった…!
- 3件中2件の研究で線維筋痛症患者さんの睡眠の質が改善されたと報告があった…!
- 6件中3件の研究で線維筋痛症患者さんのうつ病と不安感が改善されたと報告があった…!
- 5件中4件の研究で線維筋痛症患者さんの生活の質が改善されたと報告があった…!
- 2件中1件の研究で線維筋痛症患者さんの胃や腸の症状が改善されたと報告があった…!
- 1件中1件の研究で線維筋痛症患者さんの炎症マーカーが改善されたと報告があった…!
- しかしこれらの研究は統計的に質が低かった…。
う~ん…。良い感じの結果は出ているんですが、いかんせん、サンプル数が少ないんで決め手に欠ける感じですね。
この結果に研究者も論文(実験デザイン)の質が低い、サンプル数が少ない、方法論がそれぞれ異なる、実験期間もばらつきが大きいといった部分があり、結果は慎重に解釈する必要があるとしたうえで、
- 線維筋痛症患者さんの痛みの緩和には、低カロリーダイエット、生野菜のベジタリアン、低FODMAPが良さそう
- また、生活の質、睡眠の質、うつ病と不安感、炎症マーカーなどの改善にも良さそう
としています。
まだまだ変わる可能性がありますが、今の時点では、線維筋痛症には低カロリーダイエット、生野菜のベジタリアン、低FODMAPが良さそうですね。
線維筋痛症の症状改善には野菜メインの食事が良さそう…!
そもそも線維筋痛症ってのは、慢性疼痛の一種で生活の質に悪影響を及ぼす病気であり、発症者のほとんどが女性となっております。そして現時点では、有効な治療法は見つかっていないといった感じです。
そんな難しい病気である線維筋痛症なんですが、実は体内炎症と強い相関関係があることが分かっております。
そのため、グルタミン酸(例:味の素)などの炎症を誘発する栄養素を多く含む西洋スタイルの食事を食べると線維筋痛症の症状が悪化してしまうんですよね。それに対してベジタリアンやビーガンなどの野菜メインの食事は抗酸化物質・抗炎症物質が豊富に含まれていますんで、線維筋痛症の症状を改善するのに役立つ可能性があるんですよ。
ってことで、実際どうなのか…?を研究者は調べてみたのが今回の研究になります。
まず研究者たちは、2021年1月20日までに発表されている線維筋痛症とベジタリアン・ビーガンの研究を検索して見たそうな。因みに今回使用したデータベースはPubMed、Scopus、Web of Scienceだったとのこと。
結果、88件の研究がヒットしたそうで、そのうちの33件が重複しており除外、また残りの56件の研究のうちの38件は要件を満たしていなかった(関係ない研究27件、線維筋痛症以外の疾患6件、書籍や章に記載2件、特許1件、議事録2件)ので更に除外したんだとか。
結局残ったのが18件の研究だったんですが、そこから全文をチェックしたところ、12件がベジタリアン・ビーガン以外の食事介入だったためこれらも除外。
最終的には6件の研究がピックアップされたそうです。6件の研究の内訳は臨床試験4件、コホート研究2件だったそうで、介入群と対照群の両方に157人の線維筋痛症患者さんがいたとのことでした。因みに女性は117人以上だったということでやはりほとんどが女性だった様子。
追跡期間3週間~7か月の範囲だったそうで、ビーガン食やラクト・ベジタリアン・ダイエット(ベジタリアン向けに改良された地中海式ダイエット)なんかが実践されていたらしい。また2件の臨床試験では食事介入にプラスして理学療法もやっていたそうな。
これらをまとめてみた結果、ベジタリアン・ビーガンを実践すると、
とのこと。良い感じですね~。
因みに研究者によれば、食事介入だけでなく他の治療と組み合わせると、もっと良いと思うよ…!ってことでした。
ではなぜベジタリアン・ビーガンといった野菜メインの食事が効果があったのかですが、やはり、高い栄養素のおかげっぽいです。ご存知の通り野菜には豊富な食物繊維やビタミン(ビタミンCやビタミンEなど)、ミネラル、レスベラトロール、ポリフェノールが入っており、たくさんの抗酸化物質・抗炎症物質も入っております。それらが線維筋痛症の症状改善に役立ったみたいです。
またBMIが高い程、線維筋痛症の痛みが強くなるみたいでして、体重と体脂肪を減らすことが非常に重要になってくるみたいなんですよ。そしてそこにも野菜が一役買っているのが線維筋痛症の症状改善の理由みたいです。
つまり野菜メインの食事により、体内炎症の改善と体重減少のダブル効果が働き、結果として線維筋痛症の症状が改善したみたいなんですよね。
但し、この研究には弱点もございまして、
- 研究が6件しかない…!
- 6件の研究のうち、3件しか対照群を設置していない…!
- 二重盲検で行った研究がない…!
- 1件ずつの研究の線維筋痛症患者さんは10~35人しかいなく、サンプル数が少ない…!
って感じで、まだまだ今後の研究に期待…!といったところです。
ベジタリアン・ビーガン食は野菜や果物、ナッツ類、きのこ類、豆類、全粒穀物を食べておりますんで、今後動物性の物は一切食わん…!とまでは行かずとも、腸内環境を意識していくことはしておいて損はないのかな~と思います。
線維筋痛症の症状改善には薬はもちろん、教育+運動+認知行動療法が良さそう…!
線維筋痛症の治療法には様々な物がありますが、いろんな方法をコンビネーションで使っていくと良い…!という結果が結構出ております。
例えば2008年のニュートン・ウェルズリー病院の研究や2009年のニュートン・ウェルズリー病院の研究によると、線維筋痛症の治療には薬物治療だけでなく、
なんかを総合的に行っていくような治療計画が症状改善に効果的だとしています。
因みに教育+運動+認知行動療法で相乗効果が生まれる…!と記載してあるんで、この3つはぜひとも同時にやっていきたいところ。
また2008年のシンシナティ大学の研究でも、線維筋痛症の治療には併用治療や段階的治療によるアプローチが効果的だとしていたりします。
問題点は実際、上記治療を行うのが現実的に難しいということ。どの研究でも、線維筋痛症の治療の為に、いろんな分野の専門医が集まって治療するのって医師にとっては時間がかかるし、患者にとっても難しいよね~と書かれております。
確かに複数の専門医が一人の病気の治療に専念するってのは、一般の治療現場ではかなり難しいですね。
様々な専門医を集めて治療してもらうってのは厳しいものの相乗効果を得られる対策が教育・運動・認知行動療法なんである程度は自分で行っていけるのかな~とも思いました。
例えば線維筋痛症の勉強や認知行動療法は本や論文を見れば良い訳ですし、認知行動療法や有酸素運動はある程度一人で行えるものもある訳ですから。
まぁ、主治医に相談するのは絶対だとしても、色々併用して試していくのは良いのかな~と思う次第です。
線維筋痛症に運動は効果的なのか…?どのように運動すると良いのか…?
2017年のアルカラ大学の研究によると、線維筋痛症に運動療法が効果的なのか、系統的レビュー・メタ分析をしてみたそうです。
まず研究者たちはCochrane Collection PlusやPEDro、PubMedといったデータベースを用いて線維筋痛症と運動についての研究を検索してみたそうな。また、FisioterapiaとCuestiones de Fisioterapiaというスペインの理学療法雑誌も手動で検索したとのこと。
調査は2016年4月~2017年5月までの間行ったそうで、結果、704件もの論文がヒットしたそうです。次にこの中から重複している物や質の低い物を除外していき、最終的には14件の研究が選ばれたということです。
総サンプル数は715人でして、3件の研究には男性も含まれてはいたんですが、線維筋痛症の患者さん全165人のうち男性は15人だったとのこと。
つまり、700人(97.90%)が女性で15人(2.10%)が男性だったんで、ほとんど女性って感じですね。因みに参加者の平均年齢は42.36歳だったらしい。
んでまずは各研究で行われていた運動をチェックしていきましょう。
- 9つの研究は、ウォーキング、エアロバイク、トレッドミルを使った有酸素運動だった。
- 7つの研究は、筋トレだった。
- 2つの研究は、ストレッチだった。
- 4つの研究は、いろんな種類の運動(有酸素運動、筋トレ、ストレッチ)を組み合わせたものだった。
- 対照群は、リラクゼーション法やバランス運動、低強度の有酸素運動、標準的な治療だった。
系統的レビュー・メタ分析の結果、線維筋痛症の方が運動を行うと、
- 全身の痛みが軽減した(効果量-1.11)
- 全体的な幸福度がアップした(効果量-0.67)
- うつ症状が改善した(効果量-0.40)
- 上記から心身のQOLが改善した(身体面の効果量0.77、精神面の効果量0.49)
この結果に研究者曰く、
- この研究は、線維筋痛症の患者の痛みを軽減し、全体的な幸福を改善するには、有酸素運動と筋トレが最も効果的な方法であり、ストレッチと有酸素運動は健康関連の生活の質を向上させると示している。さらに、運動を組み合わせることによって、うつ病の症状に対しても最大の効果が得られるだろう
としています。
やっぱ線維筋痛症に運動はかなり良さそうですねー。
んで、この研究の中では、線維筋痛症の症状改善に最も効果的な運動も調べてくれておりまして、ガイドラインとしても役立ちそうなんですよね。
それを以下にまとめておきます。
- 有酸素運動:最大心拍数の50~80%の強度で30~60分間行うと良い。これを週2~3回、4~6か月間継続するのがベストとのこと。
- 筋トレ:3.1kg又は1RMの45%の負荷で8~10回を1~3セット行うと良い。これを8~11種目こなすのがベストとのこと。
- 有酸素運動+筋トレ+ストレッチ:45~60分の運動プログラムを週2~3回、3~6か月間継続するのがベストとのこと。
基本的には有酸素運動でも筋トレでも効果はありそうなんですが、ベストは両方とも行うって感じですね。
また上記にプラスして覚えておきたいのが2012年のサンパウロ連邦大学の研究になります。この研究によれば、筋トレをやめて12週間経つと症状が再発したそうなんですが、有酸素運動の効果はもっと長く続いたそうなんですよね。それを踏まえるとどちらかといえば有酸素運動の方が良いのかもしれませんな。
更に2010年のザールブリュッケン病院のRCT・系統的レビュー・メタ分析では、様々な種類の有酸素運動の効果を比較しているんですが、どうやら、陸上運動でも水中運動でも同様の効果が得られるみたいなんですよね。
因みにこちらの有酸素運動ガイドラインは、
- 軽~中程度の強度で、少なくとも20~30分間を週2~3回行うと良い。これを4週間続けるのがベスト
って感じだったそうな。
ここでは、1回15~60分の有酸素運動や筋トレを週2~3回行い、これを12~23週間続けるという場合の効果を調べたんですが、今回ご紹介した研究と同じく、運動で線維筋痛症のある女性の一般的な幸福度がアップしたそうなんですよね。なんでこの効果もある程度期待しても良さげです。
ということで、気になる方は主治医とご相談の上、症状改善の為に上記の基準を参考に有酸素運動や筋トレを行ってみてはどうでしょうか…?
線維筋痛症にマッサージ運動療法が効くか試してみた…!
2020年のエルチェ・ミゲル・エルナンデス大学などの研究によると、線維筋痛症の女性を対象に手技療法の効果を調べてみたそうです。
手技療法ってのは徒手療法とか徒手理学療法とも言われておりまして、理学療法士の方などに道具を使わず、素手でマッサージしてもらう治療法のことを言います。なんで、マッサージ運動療法などとも言われておりますね。
んでこのマッサージが線維筋痛症の疲労感や痛み、睡眠問題、不安感に効くんじゃないのかをチェックしたのが今回の研究になります。
実験に参加したのは47~59歳の成人女性24名でして、皆、線維筋痛症の患者さんだったそうな。また、参加者の教育レベルは平均的なレベルだったとのこと。
実験方法はRCTを採用しておりまして、参加者を以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。
- マッサージ運動療法グループ:14名
- プラセボグループ:10名
では、次に実験で行われたマッサージ運動療法について詳しく見ていきましょう。
マッサージは全て同じ理学療法士さんにより行われたそうで、適度な力で首の後ろを押すって感じの定番方法だったそうな。
具体的な頻度については以下な感じ。
- マッサージは1回15分間行った。
- 週2回行った(合計8回行った)
- 期間は1か月(4週間)を設定した。
- マッサージ療法の間隔は少なくとも48時間空けた。
マッサージ方法はこんな感じ。
- 参加者にうつ伏せになってもらう。
- 軽い圧力で押し始める。
- 目的の強さ(中程度の圧力)に達するまで押し続ける。
- 中程度の圧力かどうかは、10段階スケールを採用し、6が中程度の圧力とした。
- 圧力が6になったらその強さを維持した(副作用や痛みが出ないよう6を超えないよう注意した)
- 首の後ろの後頭筋から全体に広がるように押していった。
併せて、マッサージ前後に各症状を以下のスケールでチェックしたとのこと。
- 疲労重症度スケール(FSS):疲労感をチェックするスケール
- ビジュアルアナログスケール(VAS):痛みの度合いをチェックするスケール
- ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI):睡眠の質をチェックするスケール
- 感情プロフィール検査(POMS):気分(抑うつ・落込み、不安・緊張、疲労、怒り・敵意、活気、混乱)と気分の変化をチェックするスケール
最後に集めたデータを統計処理したそうで、結果、マッサージ運動療法グループはプラセボグループに比べて、
- 首の痛みが減った…!
- 疲労感が減った…!
- 睡眠の質が向上した…!
- 怒り・敵意といった気分が減った…!
とのこと。
どうやらマッサージによって、線維筋痛症による痛み・疲労・気分が改善し、睡眠の質もアップしたみたいですね。これが正の相関関係として有意差があったってのは嬉しいですな。
サンプル数が少ないこと、実験期間が短いことという問題はありますが、マッサージも良さそうな感じです。
それと個人的には、首の後ろを気持ちいいぐらいの強さで15分間押すってだけなら、セルフでもできるんじゃないのかな~とか思いました。
主治医に相談は必要かもですが、気になる方は、上記の方法を確認しつつ、お試しください。
線維筋痛症の痛みなどにマッサージが効くのかRCTの系統的レビューを行ってみた…!
2020年のペルナンブコ連邦大学の研究によると、線維筋痛症の痛みなどにマッサージ(手技療法・徒手療法・徒手理学療法)が効くのか系統的レビューを行ってみたそうです。
そもそも線維筋痛症患者さんの痛みの軽減にマッサージは良く使われてきたんですが、プラセボが発生しやすく、効果がはっきりしていなかったんですよね。そこで先行研究をまとめて一つの大きな結論を出して見よう…!となったのが今回の研究になります。
まず研究者たちは、2019年9月までに発表された線維筋痛症とマッサージの研究を、
- MEDLINE/PubMed
- CINAHL
- Web of Science
- Scopus
- ScienceDirect
- LILACS
- SciELO
- PEDro
- Cochrane
という9つのデータベースで検索しまくったらしい。
またその際、ランダム化比較試験(RCT)に絞ってチェックしたそうな。
を用いてチェックしていたらしい。
最終的に7件の研究がピックアップされまして、線維筋痛症患者さんの合計サンプル数は368名だったそうです。
気になる結果は、
- 線維筋痛症にマッサージ(手技療法・徒手療法・徒手理学療法)は、非常に低いから中程度の効果があった…!
とのこと。
う~ん。あんまパッとしない感じですが、治療法が確立されていない状況で、低~中程度の効果があるんなら良いのかもしれませんね。
この結果に研究者も、
- 短期間の介入の結果でしかないから決定打とは言えないよね~
とおっしゃっておりました。
それでも逆に言えば短期的には効果がある…!とも言えますんで、痛みの激しい際などにマッサージをしていくのも良いのかもしれませんな。
線維筋痛症にはどのような食事介入・サプリが良いのか系統的レビューを行ってみた…!
2020年のアルスター大学の研究によると、線維筋痛症にはどのような食事介入が良いのか系統的レビューでまとめてみたそうです。
そもそも線維筋痛症は、慢性的で広範囲な痛みを伴う病気でして、更に、
- 不安感・うつ病
- 顎関節症
- 慢性疲労症候群
- 片頭痛
- 過敏性腸症候群(IBS)
などの疾患の発症率も高かったり致します。
んで、これらの結果、総合的なQOL(生活の質)の低下や、疲労感や睡眠障害、記憶力の低下や集中力の低下などの認知能力の問題などに派生していくんですよ。そして、その派生によって、更に痛みが悪化して~という悪循環が起きるんですよね…。これは辛い。
そんな線維筋痛症ですが、まず研究者がはっきりと書いているのが、
- ゴールドスタンダードの治療法はないよ…!
ってこと。まだまだ謎な部分が多くてベストな治療法は確立されていないんすよね。
そして、食事介入の効果に関しても決定打になるデータは出ておりません。そこで今回研究者は、先行研究をまとめて、線維筋痛症における効果のありそうな食事介入とサプリをチェックしてみたそうです。
まず研究者たちは、1990年~2020年3月20日までに発表された線維筋痛症と食事介入、サプリの研究をCINAHLやMEDLINE、Scopus、AMEDを用いて検索して見たそうな。結果、2,620件の研究がヒットしたとのこと。
次に、この中から、適切な対照群や尺度がない場合や質の低い研究を除外していったそうで、最終的に22件の研究が基準を満たしていたそうです。
22件の研究の詳細は、
- サンプル数:806人(男性17人(2.06%)、女性789人(97.94%))
- 女性のみの研究の割合:22件の研究のうち15件(68%)が女性のみを対象としていた
- 研究の平均参加者数:37人(8人~102人の範囲)
- 罹患期間:4年~11.8年の範囲
- 平均年齢:39.6歳~58歳の範囲
って感じ。
また、残念ながら日本人を対象とした研究はピックアップされていなかったのですが、まぁ、仕方ないでしょう。
続きまして、ピックアップされた研究のデザインについてです。
- 22件の研究のうち16件(73%)はランダム化又は盲検化されていた
- 研究の73%が盲検化されていた
- 研究の82%がランダム化されていた
- 18件の研究でRCTが行われており、そのうちの3件はクロスオーバーデザインを採用していた
- 4件の研究はコホート研究(うち2件はクロスオーバーデザインを採用)だった
- 対照群はプラセボや標準食など様々な方法で実施された
更に、今回の食事介入、サプリ内容も合わせてチェックしておきましょう。
最後に研究の質を見ていきます。
22件の研究のうち、
- 研究の質が悪い:1件
- 研究の質はまぁまぁ:6件
- 研究の質が良い:8件
- 研究の質が非常に良い:7件
ということでした。
では結果です。まずは痛みから。
- 緑藻クロレラ:31%の減少…!
- 低FODMAP食:10点中6.6点の痛みだったのが4.9点にまで減少…!
- コエンザイムQ10:56%の減少…!
- ビタミンC&ビタミンE&ニゲラ・サティバの種:90.3±1.52点から77.80±1.65点に痛みが減少…!
- アセチル-L-カルニチン:有意な痛みの改善があったが正確なスコアは不明
- ビーガンダイエット:有意な痛みの改善があったが正確なスコアは不明
- ビタミンD:2グループを4つの時点でチェックしたらプラセボよりも痛みが減少した(68.70±12.53、53.40±29.31、62±20.28、64.50±16.14)。しかし、やめると元に戻った。
次は線維筋痛症の重症度についてです。
- エキストラバージンオリーブオイルと普通のオリーブオイルの摂取後に有意に改善(68.61±7.17→52.47±9.68vs47.84±7.47→46.83±4.87)した…!
- コエンザイムQ10でも大幅な改善(52%の減少)がみられた…!
- グルタミン酸ナトリウムの再導入とプラセボの再導入で有意に悪化(22.20±20.60~48±22.40vs22.20±20.60~35.70±19.40)した…!
- 低FODMAP食で大幅に改善(21.8→16.9)された…!
続いて、一般的な健康調査の結果です。
- アントシアニジンのサプリを1日あたり120mg、80mg、40mgの3回に分けて摂取すると、統計的に有意な結果が出た…!
- コエンザイムQ10とプラセボを比較したクロスオーバーデザインでは、SF-36の身体的健康問題による制限と感情的健康問題による制限が大幅に改善されていた…!但し、効果はコエンザイムQ10→プラセボの順番で起こったが、プラセボ→コエンザイムQ10の場合は起こらなかった…。どちらの順番でも効果が見られたのはSF-36の体の痛みだった…!
- ビーガンダイエットは、大幅な改善をしたと出ていたが、具体的なスコアは公表されていなかった。
- アセチル-L-カルニチンは、SF-36の体の痛み、メンタルヘルス、一般的な健康イメージが大幅に改善していた…!またSF-36の身体的健康・精神的健康の合計スコアも有意に改善していた…!ただし、具体的なスコアは不明(図のみで表している)
- ビタミンDを1200IUまたは2400IU摂取すると、SF-36の身体的機能が大幅に改善されていた…!
次はメンタルヘルス(うつ病や不安感)についてです。
- 緑藻クロレラ:不安感が大幅に改善(50.2±38.5~37.2±36.9vs50.3±43.3~42.9±38.3)した…!
- 植物ベースのマルチサプリメント:メンタルヘルス(平均差-8.06)、不安感とうつ病(平均差-2.00)が有意に改善した…!
- コエンザイムQ10:うつ病スコアが大幅に改善(介入後スコア6.2±1.9vs24.1±3.5)した…!但しベースラインのスコアは不明。
- 低FODMAP食:うつ病スコアが有意に減少(5.1→4.2)した…!
- アセチル-L-カルニチン:うつ病が有意な改善した…!但し具体的なスコアは不明。
- エクストラバージンオリーブオイル:精製オリーブオイルよりも、メンタルヘルスが大幅に改善(31.62±2.35~36.20±2.94vs49.10±3.42)した…!
- クレアチン:メンタルヘルスが有意に改善(+23%)した…!
次は睡眠・疲労感、倦怠感です。
- 緑藻クロレラ:睡眠が18%改善…!疲労感が20%改善…!
- 植物ベースのマルチサプリメント:睡眠(平均差-3.00)、疲労感(平均差-2.00)が大幅に改善した…!1日あたり120mg、80mg、40mgの3回に分けて摂取すると、睡眠の質(平均差-0.27、-0.40、-0.32)が大幅な改善した…!
- 低FODMAP食:睡眠の質が大幅に改善(6.6→5.1)した…!
- ビーガンダイエット:睡眠アンケートで大幅な改善が見られた。但し、具体的なスコアは公表されておらず、アンケートの質問内容も不明。
- 低FODMAP食:過敏性腸症候群(IBS)が大幅に改善(275.3→137.4)した…!
- グルタミン酸ナトリウムの除去:過敏性腸症候群(IBS)が大幅に改善(25.5±20.4vs17.5±14.7)した…!
認知機能はこんな感じだったそうです。
- 低FODMAP食:記憶力が大幅に改善(6.9→5.0)した…!
- プロバイオティクス:認知機能が大幅な改善した…!衝動的な行動が減少した…!
ということで細かく見てきました。
最後に注意点としては、
- まだまだ研究の質の低いものが多い
- 平均参加者数が37人と非常に少なく、範囲も8人から75人といった感じでちゃんとしたサンプルサイズをそろえていたのは22件中6件だけだった
- 各研究で各項目の評価尺度がバラバラだった
みたいなことがあるそうな。
まだまだ今後の研究に期待…!って感じが否めませんが、まぁ、参考になる部分はあるかと思います。
この研究結果を雑にまとめると、
まぁ、分からない部分が多分にありますが、少しでも症状改善の可能性がある事を色々試行錯誤していくしかないのが現状ですねー。
2016年時点の線維筋痛症の治療アプローチをまとめてみた…!
2016年のユタ大学の研究によると、様々な線維筋痛症の治療アプローチについて2016年時点での証拠をレビューしてみたそうです。
ということで、各治療法のポイントを押さえておきましょう。
線維筋痛症における薬物治療(薬物療法)のポイント
まずは薬物治療(薬物療法)からポイントを見ていきましょう。
- プレガバリン:抗てんかん薬として有名であり、2007年にFDA(アメリカ食品医薬品局)によって承認された最初の薬。750人の線維筋痛症患者さんを対象としたRCTの二重盲検によると、1日300~600mgのプレガバリンかプラセボを14週間飲んでもらった結果、プレガバリンを服薬している患者さんは痛みや機能的能力が大幅に改善したそうな。
- デュロキセチン:抗うつ薬として有名であり、FDA(アメリカ食品医薬品局)によって承認されているSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)。1日60〜120mgのデュロキセチンを服薬してもらったRCTの二重盲検によると、痛みや機能的能力が大幅に改善したそうな。またこの効果は長期間の維持が期待できるとのこと。
- ミルナシプラン:抗うつ薬として有名であり、FDA(アメリカ食品医薬品局)によって承認されているSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)。1日100~200mgのミルナシプランを服薬してもらったRCTの二重盲検によると、プラセボグループと比較して、痛みの報告が減り、痛み関連の症状が大幅に改善したそう。
- オピオイド:線維筋痛症の患者さん1,700人を対象に行った観察研究によると、習慣的にオピオイドを使用していた人はそうでない人に比べて、症状の改善の度合いが著しく低かったらしい。その他の研究をみてみても、全体的に線維筋痛症を改善する為に、習慣的にオピオイドを使用した方が良いという証拠はなかったそうな。
- トラマドール:オピオイド系の鎮痛剤の1つであり、SNRIの効果を持つ。300人を超える線維筋痛症患者さんを対象にしたRCTによれば、1日300mgから2600mgまでの範囲でトラマドール&アセトアミノフェンを服薬してもらうと、プラセボよりも線維筋痛症の症状や睡眠症状が明らかに改善したらしい。但し、まだまだ今後の研究に期待って感じ。
- ドーパミン作動薬:ドーパミン受容体を活性化する薬。線維筋痛症の患者さんにロピニロールを使ってもらった研究によると、74%の患者さんが、痛みが50%以上減った…!と答えていたそうな。またプラミペキソールを用いたRCTの二重盲検でも、プラセボを服薬した患者さんは痛みが15%減ったと言ったのに対し、プラミペキソールを服薬した患者さんは痛みが42%も減ったと言った。これは痛みが少なくとも50%減ったことを示している。しかし、追試では同様の結果は得られなかったらしい。そのため、2016年時点ではまだ線維筋痛症治療に役立つという確立した証拠はないみたい。
- カンナビノイド:痛みの症状に対して効果が期待されている。最初のRCT・二重盲検法を用いた研究によると、線維筋痛症患者さん40名を対象に1日2回1mgの合成カンナビノイド(ナビロン)を4週間にわたって服薬してみたそう。結果、プラセボよりも痛みやその他の症状が大幅に軽減されていたとのこと。但しこのメリットは長続きしなかったらしい。更に線維筋痛症に対する長期的なカンナビノイドの服用のメリットとデメリットも謎ってことでまだまだ今後の研究に期待といった感じ。
- オキシベートナトリウム:ナルコレプシーの治療で承認されている薬。寝る前にオキシベートナトリウムを1日6g摂取してもらったら、4週間後、プラセボよりも痛みや疲労感、睡眠問題が大幅に改善されていた。しかし、オキシベートナトリウムは乱用の可能性に伴うデメリットが高く、2010年には線維筋痛症治療の為のオキシベートナトリウムの承認をFDAは却下してしまった。
線維筋痛症における薬物治療以外のポイント
続いて薬物治療以外の方法のポイントを見ていきます。
- 運動(エクササイズ):線維筋痛症の患者さん2,494人を対象に様々な運動方法での効果を調べた系統的レビューによると、どのような運動でも痛みや痛みに関係する線維筋痛症の症状が顕著に改善したとのこと。
- 認知行動療法:効果にばらつきはあるものの症状改善が期待できる。認知療法的な認知行動療法の一つであるマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を行った研究によると、線維筋痛症の痛みや症状が大幅に軽減された。但し、その後のMBSR・薬物治療・コントロール群を比べた研究では症状軽減の効果に有意差はなかったらしい。しかし、この研究ではMBSRを行った患者さんのみQOLがある程度改善したそうで全く無駄といったこともなさそう。またマインドフルネストレーニングを評価した別のRCTによると、社会的機能と感情的機能が大幅に改善したらしく、確実に痛みが軽減する…!とは言えないものの、線維筋痛症患者さんが抱えるいくつかの重要な問題に対してプラスの影響がありそうな感じ。行動療法的な認知行動療法は痛み(疼痛問題・慢性疼痛・慢性痛)の治療に於いて最も受け入れられている治療法。複数の研究で、認知の歪みや気分、QOLの改善に効果があると示されている。但し、認知面と感情面には効果があるものの、痛みの軽減については効果がない可能性がある。
- 集学的治療:複数の治療法を組み合わせて治療することを言う。線維筋痛症は複雑で様々な原因が考えられる為、複数の治療アプローチを採用することが重要だとしている。アプローチのバリエーションにはいろんなものがあるが、オーソドックスな物としては、適切な線維筋痛症の教育、運動、心理療法(主に認知行動療法)をコンビネーションで行う。教育については、通常、単独での治療方法として使うことはないが、自己管理の促進や他の治療アプローチの効果を高める上で重要な役割を果たすとのこと。また、線維筋痛症に対する誤解を解くにも有効で、適切な期待と正確な情報の取得が期待できるんだとか。
線維筋痛症におけるその他のアプローチのポイント
最後はその他のアプローチを見てみましょう。
- 後頭神経刺激(ONC):頭に皮下電極を埋め込み、電気で脳を刺激する。線維筋痛症患者さんを対象にした実験によると、線維筋痛症の症状が大幅に改善(頭痛の痛みが少なくとも50%減少)した。但し、まだまだ今後の研究に期待といったところ。
- リドカイン点滴:痛みの症状改善の為のリドカイン点滴には長い歴史があるそうで、線維筋痛症患者さんに投与した結果、痛みが軽減したとのこと。但し、リドカインは低血圧や頭痛、めまい、眠気、唇のしびれ、視野が狭くなるなどの副作用も報告されている。他の研究を見ても、リドカインの効果は線維筋痛症患者さんの痛みのわずかな軽減にしかつながらないようで、現時点では、利用可能レベルではない。
- 高気圧酸素治療(HBOT):大気圧よりもはるかに高い圧力で純粋な100%酸素を吸入する治療法のこと。2004年の最初の研究によれば、線維筋痛症の痛みが大幅に軽減したらしい。但し、酸素中毒やその他の副作用のデメリットがあり、安全性と有効性が確立するにはまだまだ時間がかかりそう。
- 経頭蓋刺激:経頭蓋磁気刺激治療(TMS)と経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)という2種類の方法を使って磁気で頭部(脳)に電気を流し、刺激して活性化させる。主にうつ病など認知障害や感情障害の治療で使われており、日本でも2019年以降、保険診療が認可された。線維筋痛症の症状の改善に効果があるかは今後の研究に期待。
これらを見ると、やっぱり線維筋痛症の症状改善には、
- 薬物治療(薬物療法)…!
- 運動(エクササイズ)…!
- 認知行動療法…!
- 適切な線維筋痛症の教育…!
- 上記を併用して治療(集学的治療)する…!
が良さそうな感じですね。
線維筋痛症はどのぐらい症状改善・寛解する可能性があるのか…?
最後は線維筋痛症の寛解率についてご紹介しようかと。ご存知の方も多いように「障がい」と呼ばれるものは、基本的に完治することはありません。その完治に近い状態を寛解(かんかい)と申します。寛解状態は症状が非常に落ち着いた状態のことでして、これだと完治と同じじゃん…!って気がしてしまうんですが、再発リスクがずーっと残るっていう違いがございます。なんで、また状態が悪くなることがあるんですよね。
んで、この寛解状態が長期間に亘って続くような状態のことを完全寛解といったりします。線維筋痛症の方はもちろん、精神障がいの方も目指すべき最終目標ですな。
では実際、この頂に到達する線維筋痛症患者さんはどのぐらいいるのか…?今回はここを見ていきます。
2011年のアメリカ国立リウマチ疾患データバンク(NDB)の研究によると、線維筋痛症患者さんの症状改善・寛解率について調べてみたそうです。
まず研究者たちは、1998年から開始したアメリカ国立リウマチ疾患データバンク(NDB)のデータセットをチェックしたそうな。このデータセットにはアメリカのリウマチ専門医が所属する病院から集められた線維筋痛症患者さんのデータが入っていまして、毎年1月と7月の年2回(半年間隔)、線維筋痛症の症状について郵送アンケート又はネットアンケートに答えてもらったと言うもの。
このデータの中から、米国リウマチ学会(ACR)の2010年の線維筋痛症診断基準を満たしている人、上記アンケートに最低2回以上答えている人なんかをピックアップしていったらしい。
結果、サンプル数は1,555人となりまして、アンケートの回答率は、
結果、サンプル数は1,555人となりまして、アンケートの回答率は、
- 1年間(2回答えた):19%
- 2年間(3,4回答えた):25%
- 3~11.5年間(6~23回答えた):56%
ってことで、平均追跡期間は4.0年で、延べ回答数は11,006件にも上ったそうです。
最後に統計処理した結果、5年間の症状改善率は、
- 痛み:0.4
- 疲労感:0.4
- 全体:0.0
とのこと。
やっぱ厳しいですなー。
続いて追跡期間全体から見た平均値を見てみますと、
- 全体:0.03
- 痛み:0.22
- 睡眠障害:0.20
- SF-36:0.11
- SF-36(メンタル部分のみ):0.03
って感じ。更に厳しい結果ですね…。
また、症状改善状態に一度もならなかった線維筋痛症患者さんは716人(44.0%)もいたそうで、7,448件もあったとのこと。
更に症状改善・悪化の程度について見てみますと、
- 線維筋痛症の患者さんの約10%に大幅な改善が見られた…!
- 線維筋痛症の患者さんの約15%に中程度の痛みの改善が見られた…!
- 線維筋痛症の患者さんの約35.9%は重症度が上がっていた…。
- 線維筋痛症の患者さんの約38.6%は痛みが悪化した…。
そうです。
まとめると、
- 線維筋痛症が完全寛解することはほとんどない…。
- 線維筋痛症が寛解することは25%ほど…。
- それよりも変わらない・悪化していくことの方がずーっと高い…。
となってしまいました。
以上を見るとやっぱ難しい病気だなーと言わざるを得ませんね…。
個人的考察
まぁ、線維筋痛症に限らず、障がいというものの寛解への道のりは険しいの一言なんで致し方ありませんね。となると近道なんかなくて、やっぱ地道に一歩一歩、日々の生活・対策が大事ではないかと思いました。
まずは手始めに食事、睡眠、運動に手を付けつつ、自分なりの体調安定法(コーピングレパートリー)なんかを作ってみることをおすすめ致します。
ということで、線維筋痛症はまだまだ分からないことが多いんですが同じ症状でお困りの方は医師に相談の上、上記でご紹介した方法をお試しいただいてもよろしいかもしれません。