よく「ポジティブが大事…!」とか「ポジティブに何でも考えれば良いよ…!」みたいなことを聞きますよね。自己啓発などで聞く方もいると思いますが、あれって本当なの…?って疑問に思うネガティブな人は多いはず…。
この疑問について参考になるのが、以前にWOOPってテクニックの時にご紹介したガブリエル・エッティンゲン博士の名著「成功するにはポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則」になります。エッティンゲン博士は言わずと知れたポジティブシンキング研究の第一人者で、本書ではポジティブシンキング(ポジティブ思考)の罠についての研究がいくつか載っているんですよね。
そこで今回は、本書に載っているポジティブシンキングの罠の研究をいくつか見ていきつつ、具体的な対策法などについて書いていきたいと思います。



根拠のないポジティブシンキングは危険…!

エッティンゲン博士の2002年の研究によると、根拠のないポジティブシンキングは危険だということです。
いくつかの実験で分かったこととして、ポジティブなイメージを持つ人ほど、

  • 企業からの求人が少なかった
  • 給料も低かった
  • モテなかった
  • 大学の成績が悪かった
  • ケガの回復が遅かった

と散々な結果だったとのこと。
では、なぜこのようなことが起きるのかというと失敗したときの衝撃が大きくなってしまい立ち直れなくなるからということです。これはよく分かる話で、無駄にポジティブでいった結果、失敗したときの落差が激しくなる…。結果、落ち込みがひどくなる…。なんてことありますよね。
精神障がいの方が躁鬱の乱高下で苦しむのなんてこのあたりが原因ではないかな~なんて個人的には思っています。
んで、ポジティブシンキングの罠は他にもありまして、それらは以下のような感じ。



ポジティブシンキングでダイエットの失敗率が高まる…!

エッティンゲン博士の1991年の研究によると、ダイエットプログラムに参加している肥満女性25人を対象に、体重減少とポジティブシンキングの関係について調べたそうです。期間は1年間で、毎週行われるグループ治療の開始前に、ダイエットの目標体重を達成する期待と実際の体重について比較したらしい…。
んで、結果は、仮説通りでして、ポジティブな期待度と体重減少は反比例の関係だったそうな。つまり、ポジティブな期待を持てば持つほど、ダイエットに失敗する確率がアップするってことですね。
これは嫌だな~。



ポジティブシンキングで学校の欠席率・成績・就活の求人数・給料で悪い結果が…!

エッティンゲン博士の2011年の研究によると、ポジティブシンキングが、学生の努力や成功とどう関係しているのか調べたそうです。
実験は全部で3つ行われたそうで、実験の最初にポジティブな将来を想像した学生は、その後、

  • 授業の欠席数が多かった…。
  • 成績も悪かった…。

とのこと。
上記は、初期の学力、成功への期待度などの変数を調整しても変わらなかったということです。因みに成功への期待は、参加している学生が中間テスト等で自分の成績を知った時のみ、その後から、欠席日数が減り、成績が良くなったそうです。
現実を見て良い感じ…!とか、ヤバい…!と思って努力するから成功への期待も高まるって感じですかね…。
更に就活を行っている学生でポジティブシンキングな人ほど、

  • 企業からの求人が少なかった…。
  • 給料も少なかった…。

そうです。
う~ん。こちらも嫌ですね~。



ポジティブシンキングで目標達成率が下がる…!

エッティンゲン博士の2011年の研究によると、実験に参加した学生を2グループにわけたそうな。

  • 最高の週末を過ごす姿を想像してもらった
  • いつもの週末を過ごす姿を想像してもらった

1週間後、学生に週末、実際どのように過ごしたのかを聞いてみたところ、最高の週末を過ごす姿を想像してもらった人は(=ポジティブシンキングで)、やりたかったこと(目標)を達成できなかったそうです。
ポジティブシンキングは、短期的に心を落ち着かせる効果があるそうで、実際、収縮期血圧(心臓が縮んだときに動脈にかかる圧のこと)が半減していたんだとか。つまり、リラックスモードになってしまい気合が入らないって感じですね。
このことからエッティンゲン博士も、ポジティブシンキングは、目標が達成されたかのような幻想を与えるよ…!その結果、目標に向かうモチベーションが下がるから注意してね…!とおっしゃっております。
ポジティブシンキングで変に油断してしまう…!って感じですね~。う~怖い…。



ポジティブ・ネガティブな経済予想と株価の関係

エッティンゲン博士の2014年の研究によると、

  • ポジティブな経済予想が載った後は株価が下がった
  • ネガティブな経済予想が載った後は株価が上がった

ということ。ポジティブシンキングがまさか経済に影響も与えるなんてびっくりです。
もうボロボロ…。ポジティブシンキング怖い…。



ポジティブ思考の効果にポジティブになり過ぎかも…!

2015年のユタ大学とカリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスの研究によると、皆ポジティブ思考が良いと思っているけど、本当にそれって正しいのか…?について調べてみたそうです。つまり、皆が思うポジティブ思考のメリットと実際受けるメリットの効果がどうなのかってことですね。
実験はいくつか行われたそうですが、基本的に参加者を先にポジティブかネガティブにしておき、その上で実験に参加させ、結果がどう変わるかを調べたみたいです。
んで、実際の具体例と結果はこんな感じ。

  • ポジティブorネガティブにさせてテストを行う→結果、点数はほとんど同じだった…。
  • ポジティブorネガティブにさせて正確性・持続性を調べる→結果、ポジティブの方が約33%良い結果が出る…!と予想したが、実際は約5%しか良くなく、統計的な差はなかった…。

つまり結果をまとめると、

  • ポジティブ思考は皆が期待するほどパフォーマンスは改善しない…!
  • にもかかわらず、ポジティブ思考のパフォーマンスアップを過大評価している節がある…!

とのこと。
この結果に研究者曰く、人々はポジティブ思考が成功の可能性をアップすると信じ使用している。しかし残念ながら、ポジティブ思考の効果について、過度にポジティブであるのかもしれない、ということです。
皆、ポジティブ思考の効果にポジティブになり過ぎかも…!ってことですね。う~ん。悲しい…。
陽気なイメージの海外の方を対象とした実験でもこの結果であれば、日本ではもっとありそうですね~。



ネガティブな人がポジティブシンキングをするのは危ない…!

上記で紹介しただけでもポジティブシンキングはボロボロですが、最後に追い打ちのネタがあります(笑)ネガティブな人がポジティブシンキングをするのは危ないということです。何故かと言うとポジティブに考えれば考えるほどネガティブになっていくからです。
理由は以前に紹介したシロクマのリバウンド効果がはたらくから。軽くおさらいしますと、シロクマのリバウンド効果とは考えないようにすればするほどかえって考えてしまうということです。つまり、ネガティブだからポジティブに考えないと…!とすればするほどネガティブを考えてしまうって感じです。う~ん。最悪…。
無理やり仕事を楽しむなんてしてもシロクマのリバウンド効果が起こるので気を付けていかないといけないですね。



ポジティブシンキングはアジア人には効果がないかもしれない…。

更に気になるのがそもそも日本人にポジティブシンキングは合っていないかもしれないんですよね~。
というのも2011年のワシントン大学の研究によるとポジティブシンキングはアジア人には効果がないかもしれないということなんですよ。
確かに欧米諸国に比べアジア人(日本人)ってポジティブに考えるってイメージがないですよね~。これは納得できる話です。そもそも人種的にポジティブシンキングが合っていない可能性があれば無理にポジティブに考えるのは良くないかも…。



ポジティブシンキングで大事なのは使い分け…!

上記で紹介したエッティンゲン博士の2002年の研究によると、ポジティブシンキング=悪い物ってわけではないみたいです。
なんでも、エッティンゲン博士曰く、ポジティブシンキングは、大きく2種類に分けられるそうで、その使い分けが重要とのこと。
気になるその2つとは、予想と空想なんだそうで、両者の違いについて説明はこんな感じ。

  • 予想とは、過去の記憶や経験を参考にして、実現する可能性が高い未来を判断する事をいう。つまり、実体験を踏まえて、現実的な未来をポジティブに想像する感じ。現実に沿った根拠のあるポジティブシンキング。ポジティブな予想は、努力と成果に高い相関関係がある(=予想は努力し、成果が出る可能性が高い)
  • 空想とは、過去の記憶や経験がなく、理想とする未来を頭の中で描く事をいう。つまり、実体験がなく、非現実的な未来をポジティブに想像する感じ。現実に沿っていない根拠のないポジティブシンキング。ポジティブな空想は、努力と成果逆相関関係がある(=空想は努力せず、成果が出ない可能性が高い)

つまり、ポジティブシンキングは予想に使用し、空想には使わない方が良い…!ってことですね。なぜこういったことになるのかというと、空想だと、あたかも目標達成した気分になってしまって満足し、モチベーションが低下、更に計画作成もいい加減にやっちゃうからだそうです。
上記研究では、予想と空想に違いはあるのか…?ってことも調べたそうで、想像通り、予想の方が空想より良い結果が出たんですが、驚くべきはネガティブな予想の方がポジティブな空想よりも良い結果を迎えたそうなんですよ…!
つまり、

  • 1位:ポジティブな予想(正しいポジティブシンキング)
  • 2位:ネガティブな予想(正しいネガティブシンキング(ネガティブ思考))
  • 3位:ポジティブな空想(間違ったポジティブシンキング)

の順で良い結果がでやすいってことです。
ネガティブな予想がポジティブな空想を上回るってのも面白いですよね~。それほど空想は良くないとも言えますが…。

ということで、ポジティブシンキングは予想を使い空想は使わないのがベスト。この辺は、以前に書いた通り根拠のない自信と同じことが言えるみたいですね~。



ポジティブシンキングの空想は全く使い物にならないのか…?

では、全く空想は使い物にならないのか…?と言えば、そうではないそうです。
上記で紹介したエッティンゲン博士の2011年の研究には、空想を使うタイミングについて書かれております。
エッティンゲン博士が主張するポイントをまとめると以下な感じ。

  • ポジティブシンキングには、不安や悩みを拭い去る効果がある…!
  • そのため、ポジティブの空想は、努力が成果に結びつくダイエットや禁煙などには向かない…。
  • しかし、ポジティブな空想は、自分の力ではどうしようもない状況や環境を乗り切るための忍耐力をアップさせる効果がある…!
  • つまり、政治体制や、砂漠での生存、冤罪を証明するまでの期間のような場面では、非常に役立つ…!

まとめると、自分の努力でどうにかなる事に関しては予想を使うのが良くて、自分の努力ではどうしようもない事に関しては、空想を使うと良いってことですね。遭難みたいな絶望的な状況には空想を使うと良いって感じでしょうか…。
とりえあず、基本はやっぱり予想が良いみたいですが、上記のような例外的なケースに関しては空想もアリってことです。まぁ、逆に言えば、極限状態でもこない限り空想の出番はないってことでもあります。



ネガティブシンキングを活かす…!

予想のポジティブシンキングが難しい…。どうしてもネガティブになりがちだから、ずっとネガティブでいるしかないのか…?って人もいるかもしれません。
しかし、エッティンゲン博士曰く、

  • 不安を受け止め不安だからこそ行動して、少しでも不安やリスクを減らそうと不安を準備という行動に替える
  • 根拠のある自信を持つ
  • 不安は本能が教えるアドバイスだと知る
  • 不安≠恐怖
  • 根拠のないポジティブは努力しない

ことが大事だということ。以前に紹介した不安・緊張対策と同じですね。まさに不安は避けずに受け入れる。悪い物でないから上手く使っていこうってことです。そうすることにより少しずつ根拠のある自信がついてくると思います。
また他の対策として自分でネガティブなときとネガティブになるのを観察して両方が消えることに気付けるようになるのも大事ということです。これはメタ認知(客観視)が重要になるのでif-thenプランニングで「ネガティブになったらRAINを使う」みたいな感じであらかじめ対策をしておくのがよろしいかと思います。

更にヘブライ大学の研究によると、

  • ネガティブ・怒り・悔しいという感情を抑えるのはダメ
  • ネガティブ・怒り・悔しいという感情のメリットを知っておくのが大事

ということ。リフレーミングですね。じゃあネガティブのメリットってなに…?ってなると思いますが、人はネガティブになると集中力と分析力が上がります。また、怒っていると勇気が出しやすいそうです。結構良い事づくしなんで忘れず覚えておきたいですね。



最悪な状況を考えることで逆に未来に対する不安は減る…!

ここまで読んでくださった方はネガティブを避けることはもうしないはず…。とはいえ、ネガティブなことを考えているのは辛いし、ネガティブの何をどこまで考えるといいのかって疑問が出てくると思います。

そこでDP・SOで有名な心理学者のジュリー・ノレム博士セネカ(ローマ帝国の政治家)エピクテトス(古代ギリシャ哲学者)も使ったテクニックをご紹介します。因みに私も使っています(笑)それは最悪な状況を想像するということです。最悪な状況を考えることで逆に未来に対する不安は減ります。難しい言い方をすると防衛的ペシミズムが起こるってことですね。最初にプロジェクトが成功するかどうかよりどれだけ失敗に耐えられるかを考えるというビジネスの世界のエフェクチュエーションと同じ考え方です。



ポジティブやネガティブの予想を上手く使い、目標達成率をアップするにはどうすべきか…?

最後に、ポジティブシンキングの罠にかからず、ポジティブやネガティブの予想を上手く使い、空想にならないようにして目標達成率をアップさせるにはどのようにすればいいのでしょうか…?そして、上記で紹介したテクニックの内容も踏まえたような方法が良いですよね…?
実は、この答えはすでに出てきておりまして、冒頭でご紹介したガブリエル・エッティンゲン博士の名著「成功するにはポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則」に載っているWOOP(ウープ)という方法を使うのがベストになります。



個人的考察

前に少し書きましたがポジティブシンキングの罠についていかがだったでしょうか…?
根拠のない自信もそうですが、こう言った事は気を付けた方が良さそうですねー。
私はこれからも根拠のない無駄なポジティブではなく、ポジティブな予想+自分のネガティブを活かしていく方法で行きたいと思います。
因みにポジティブ・ネガティブのベストな割合については下記をご覧ください。




参考文献