ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その32「日本人のポケモンGOと身体活動の関係」
今回は東大が調べたポケモンGOと身体活動の関係の研究です。因みに以前も東大はポケモンGOについて研究しておりまして、詳しくは
をご覧いただきたいのですが、なかなか勉強になる物が多いんですよね。ありがたい…。
ってことで、今回も勉強になる感じだったんで、早速チェックしていきましょう…!
ポケモンGOの運動促進効果を10ヶ月間見てみたけど間違いなくあった…!特に寒くて外に出るのが億劫なときに効果を発揮する…!
2019年の東京大学の研究によると、ポケモンGOと身体活動の関係について調べてみたそうです。
これまでいくつもの先行研究でポケモンGOと身体活動の関係をチェックしてきましたが、
- 先行研究では数週間しか調べておらず、長期的な効果を調べたものが少ない
- 先行研究のほとんどの参加者が若年層だった
って弱点があったんですよね。
そこで今回研究者たちは、
- 期間を長く設定(ポケモンGOリリース前後の10か月間とした)
- 中高年をターゲットにした
そうです。これはちょっと気になりますな。
しかも今回は日本の研究でもちろん参加者も日本人が対象なんで、より身近な研究結果となりましょう。
ということでまず研究者たちは、2014年11月に開始された「よこはまウォーキングポイント事業」に注目してみたんだとか。これは横浜市民がウォーキングを通じて楽しみながら健康づくりをするのが目的の事業でして、参加すると無料で歩数計(オムロンのHJ-326F)がもらえたり、歩数に応じてポイントが付与され、そのポイントに応じて抽選で商品券等が当たったりするんですよね。
んで、研究者たちは2017年3月31日までに登録した231,606人の参加者から集められた歩数計データを使うことにしたそうな。併せて、登録データから性別や生年月日(年齢)もゲットしたとのこと。
次に2017年5月に横浜市が行ったアンケートデータについてです。このアンケートは登録後80%以上の日数で歩数データを送信した99,462人の中からランダムに選ばれた2,580人を対象に行われたもので、選ばれた参加者のうち2,055人の方々が回答してくれたんだとか(回答率79.65%)
アンケートでは、参加者のウォーキング頻度や健康意識の変化、位置情報ゲームの利用状況について聞いてみたらしい。そして位置情報ゲームを「よく利用する」と答えた人とそれ以外の選択肢を答えた人でグループ分けし、ポケモンGOプレイヤーと非ポケモンGOプレイヤーの情報をチェックしたそうです。
その他、現在の職業欄ではパートを含む労働者と非労働者に分類、健康状態は良いから悪いまでの4段階に分類し答えてもらったそうです。
その後研究者たちは、データが集まると記録日数が少ない物や記録に異常がある物、歩数データが少ない物なんかを除外していったそうな。その結果914人分のデータが集まったということで、そのうちの46人(5.0%)がポケモンGOプレイヤーだったらしい。そこでポケモンGOプレイヤーと非ポケモンGOプレイヤーの比率が1:4になるようにデータをランダムに抽出し、非ポケモンGOプレイヤーのサンプル数を184人としたとのこと。そのため、総サンプル数は230人となりました。
因みに調べた歩数の期間についてですが、まず日本では2016年7月22日にポケモンGOがリリースされました。そこで2016年6月の歩数(ポケモンGO開始前の平均歩数)と、2016年8月~2017年3月までの各月の歩数を比べてみたそうです。つまり10ヶ月間調べたってことでこちらもポケモンGOの運動効果を調べた研究としては、かなり長くてよろしいのではないでしょうか。
では230人のデータを統計処理した結果をグラフで見てみましょう…!
では次に結果のポイントを見ていきますか。
- ポケモンGOプレイヤーの平均年齢は56.5歳だった。
- 非ポケモンGOプレイヤーの平均年齢は57.3歳だった。
- ポケモンGOリリース前の平均歩数について、ポケモンGOプレイヤーは7,641.8歩だった。
- ポケモンGOリリース前の平均歩数について、非ポケモンGOプレイヤーは7,903.3歩だった。
- つまりポケモンGOリリース前では、非ポケモンGOプレイヤーはポケモンGOプレイヤーよりも1日平均261歩多く歩いていた…!
- 但しリリースされた後である8月から10月にかけてグループ間の歩数の差は小さくなっていた…!
- その後はポケモンGOプレイヤーの方が非ポケモンGOプレイヤーよりも多く歩いていた…!
- 冬になると非ポケモンGOプレイヤーの歩数は減少していた。しかしポケモンGOプレイヤーは依然として歩数をキープしていた…!
- ポケモンGOプレイヤーと非ポケモンGOプレイヤーの歩数の差が最も大きかったのは12月で1日平均583歩も違った…!
つまり、ポケモンGOのような位置情報ゲームを10ヶ月間見てみたけど運動促進効果は間違いなくあったし、特に寒くて外に出るのが億劫なときに効果を発揮する…!って感じですな。
先行研究との違いとしてはポケモンGOプレイヤーと非ポケモンGOプレイヤーの歩数差が
最大でも583歩しかなかったこと。ちょっと少ない感じがしますが、研究者の予想では、
- 中高年を対象に調べたからではないか…?
としています。若者ほどゲームに熱中し飽きやすいってことで、それらがこれまでの短期の研究では見えてこなかったのではないかと。確かにブームに乗って行い、すぐやめるってのは有り得る話ですな。
またこの実験では他にも分かったことがございまして、
- リリース前後の歩数について、男性は3か月間有意だったが女性は1か月間のみだった
- リリース前後の歩数について、55~64歳の方々は8か月中7か月で有意だった
- 12月のポケモンGOプレイヤーと非ポケモンGOプレイヤーの差が1日平均1,891歩もあったが、55~64歳の方々を見てみると差は1日平均320歩だった
- 労働者は2か月間、非労働者は1か月間、有意だった
- 身体活動レベルは、元々アクティブな人たちは4か月間有意だったが、非アクティブな人たちは1か月間のみ有意だった
- 主観的な健康状態は、健康状態が良好な参加者は2か月間、その他の参加者は1か月間有意だった
って感じ。
中高年の男性労働者が、通勤中や職場の休憩時間、帰宅中に行っていることが多いってことですな。研究者もおっしゃっていましたが、ポケモンGOの為にポケストップやジムに寄り道したりしているのでしょう。
因みにこちらの先行研究との違いは、元々アクティブじゃない人程ポケモンGOの運動効果を得られる…!ってのと逆の結果だったこと。これについて研究者は、サンプルの特性(若者ではなく中高年を対象にした)や実験期間を長くしたからじゃないかな~?って想像しているみたいでした。確かに元々活動的でない人はポケモンGOで一瞬活動的になっても長期でみたら元に戻ったってのはありそうですね。
個人的考察
ということで、研究者たちは若者向け対策に以下のようなことを述べておりました。
- このような試みは、すぐに飽きてしまう若者向けに、ポケモンGOに続く新たな位置情報ゲームをリリースすると良いと思われる。
なるほど。これがモンハンNOWだったのか…。