産業革命以前の人々(狩猟採集民)の睡眠はどうだったのか?
特に、これをやった方が良い…!ってことがあんま分かっていなくて、どちらかというと、これをやらない方が良い…!ってことが分かっていることが多かったりします。こんなに身近なことなのに何が良いのか分からないことが多いってのは面白い分野ですよね。
でご紹介した睡眠時間と大体同じになっているのも面白いですよね。
んで、睡眠に限らずよく分からない時に非常に参考になるのが、太古の人々の生活スタイルです。はるか昔の人々は現代病と無縁な暮らしをしていたので、当然、睡眠に困るってこと自体存在していなかったんですな。
でも太古の人々の睡眠なんてどうやって調べるの…?ってことで参考になるのが狩猟採集民の生活です。狩猟採集民は旧石器時代の生活様式を今も続けている人たちのことでして、この方々の睡眠を調べたら太古の人々の睡眠スタイルが分かるんですよ。
旧石器時代の睡眠スタイルはどのような感じだったのか…?
2015年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によると、産業革命以前の人々(狩猟採集民)の睡眠はどうだったのか調べてみたそうです。そもそも現代社会における睡眠問題が始まったのは、少なくとも1880年代まで遡るんだそうで、その頃から近代化が進み、電気機器が発明され、就寝時間が遅くなったり睡眠時間が減ったりするようになったそうな。
ではそれより前、つまり産業革命以前の睡眠はどうだったのかってことで、今回3つの地域に住む狩猟採集民を対象に睡眠を調査してみたらしい。
まず調査した3つの地域に住む狩猟採集民ですが、
とのこと。
因みにそれぞれが住んでいる場所は下の地図のところでして、結構、バラバラな地域となっております(ここもポイント)
とのこと。
因みにそれぞれが住んでいる場所は下の地図のところでして、結構、バラバラな地域となっております(ここもポイント)
次に3つの狩猟採集民の概要を抑えておきましょう。
- ハッザ族(Hadza・ハヅァ族):タンザニアの北部に住むハッザ族は赤道から南に2度、エヤシ湖周辺の森林とサバンナに住んでいる。今回の研究対象となったハッザ族は、野生の動植物を求めて毎日狩猟と採集を行っており、食料は狩猟採集で得たもののみという、完全な狩猟採集民。
- サン人(ブッシュマン):ボツワナ共和国とナミビア共和国のカラハリ砂漠に住むサン人は遊牧狩猟採集民。今回の研究対象となったジュー・ホアン語族のサン人は、赤道から南に20度、ナミビアのデン ウイ村に住んでおり、現在は遊牧生活をしていないとのこと。但し、周囲の村からは隔離され今も狩猟採集生活を続けている。
- チマネ族:チマネ族は、ボリビアのマニキ川近く、赤道から南に15度の場所に住んでいる狩猟採集民。2009年のカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究では、チマネ族を対象に大規模な健康調査を行っている。その結果、感染症による幼児の死亡率が現代社会よりも高かったが、成人の血圧やアテローム性動脈硬化(心血管疾患)のリスクは低く、また体力レベルも高かった。
それとチマネ族の寿命についてですが、多くの方は60代、70代、80代、それ以降と普通に現代人と同じぐらい生きる様子。同じく「ハッザ族 タンザニアの狩猟採集民」という書籍や2012年のニューヨーク市立大学ハンター校の研究によりハッザ族も、1984年の研究や2000年のウィーン大学の研究によりサン人も現代人と同じぐらい生きるみたいです。この辺については以前にご紹介しましたよねー。
んで、3つの地域の狩猟採集民の生活には当然、冷暖房システムや電気、照明なんかはございません。生まれたときから太陽光と、日照時間のほとんどが熱中症になりそうな暑さ、そして季節による気候変動にさらされております。
この環境下で睡眠スタイルはどうなっているのか…?共通点はあるのか…?ってことで長期にわたってチェックし続けたそうです。何ともありがたい研究ですな…。
では結果を見ていきましょう…!
まずは睡眠時間から。
- ハッザ族、サン人、チマネ族と全ての狩猟採集民族の睡眠時間は同じ感じだった…!
- 平均睡眠時間は5.7~7.1時間だった…!
- 横になった時間から睡眠終了までの時間は6.9~8.5時間だった…!
3つとも別々の地域なのに共通していたってのは面白いですねー。それと睡眠時間が現代人と同じく少ない感じなのは意外でしたな。
では続いてBMIを見てみます。
- 3つの地域の狩猟採集民の平均BMIは18.3~26.2の間だった…!
- BMIが30を超える参加者はいなかった…!
- これは先行研究である2012年のニューヨーク市立大学ハンター校の研究結果と一致している…!
ってことで、やっぱり狩猟採集民に肥満者はいないみたいですね。すごい…。
お次は夏と冬の睡眠についてです。
- チマネ族とサン人は赤道よりかなり南に住んでおり、日の長さと気温に大きな季節の変化がある。
- チマネ族は、夏よりも冬の方が平均56分長く寝ていた…!
- サン人の参加者のうち、13人はチマネ族と同じ感じだった…!
- サン人は、夏よりも冬の方が平均53分長く寝ていた…!
どうやら冬の方が1時間弱多く寝ていたみたいですねー。
次は昼寝についてをチェックします。
- サン人は、冬の210日間の記録で昼寝ゼロだった…!
- 但し、夏の364日間の記録では10回だけ昼寝をしていた…!
- 夜間の覚醒も稀だった…!
- チマネ族とハッザ族も同じ感じだった…!
- 平均昼寝時間は32分間だった…!
どうやらどの狩猟採集民も昼寝はほとんどしないみたいですね。
今度は不眠症の結果を見ておきます。
- 不眠症の症状は睡眠時間と一致しないため、チマネ族とサン人に聞き取り調査を行ってみた。
- そもそもチマネ族、サン人ともに「不眠症」を表す言葉がなかった…!
- そのため病気ではないけど入眠や睡眠維持で困っていないか…?みたいな説明でインタビューしてみた。
- 結果、参加者の5%はたまに入眠問題を経験し、参加者の9%はたまに睡眠維持問題を経験したと答えていた…!
- これらの参加者のうち、上記問題が年に1回以上あると答えたのは3分の1未満だった(入眠問題は参加者全体で1.5%、睡眠維持問題は参加者全体で2.5%)
- この数字は、現代社会で報告されている慢性不眠症率10%~30%よりもはるかに低いことを示していた…!
そもそも言葉がない時点で不眠症はかなり稀な現象ってことですね。現代社会では考えられませんな。
お次は太陽光と睡眠について見てみましょう。
- 3つの狩猟採集民の入眠時間は、日没後2.5~4.4時間の間(平均3.3時間)だった…!
- そのため、狩猟採集民は暗くなってからもずっと起きて活動していた…!
- 3つの狩猟採集民は夜、小さな焚火を頻繁にしていた…!
- 但しその光レベルは一晩中5.0ルクス未満だった…!
- チマネ族とハッザ族は、平均して日の出の1時間前に起床していた…!
- サン人は、夏は平均して日の出の1時間後に起床、冬は日の出よりもかなり前に起床していた…!
- 夏の睡眠時間の短さは、起床時間が早まったわけではなく、就寝時間が遅かったのが原因だった…!
- つまり、入眠も起床も太陽光レベルと密接な関係はなかった…!
最後は気温・温度です。
- ハッザ族の就寝時間は常に気温が下がった時だった…!
- チマネ族もハッザ族同様だった…!
- サン人は夏と冬の両方で気温が下がった時に睡眠を開始し、毎日の最低温度近くで覚醒していた…!
つまり夏と冬で就寝時間と起床時間が変わったのは、日照時間の差ではなく、気温差だったってことですな。以前に紹介した通り、やっぱ睡眠の質の向上に温度は重要みたいですね。
まとめとして、
- 古代の生活を守り続けている狩猟採集民は地理的な違いがあっても同じ睡眠スタイルを持っていた…!
- つまり特定の環境や文化特有のものではなく、ホモ・サピエンス本来の睡眠スタイルである可能性が非常に高い…!
- 横になった時間から睡眠終了までの時間は6.9~8.5時間、平均睡眠時間は5.7~7.1時間だった…!
- 冬の方が1時間弱多く寝ていた…!
- 入眠は日没後2.5~4.4時間の間(平均3.3時間)で、起床は日の出前だった…!
- 入眠と起床のポイントは日照時間ではなく気温差だった…!
- 入眠は常に気温が下がった時、起床は毎日の最低温度近くになった時だった…!
って感じとなりましょう。
いや~かなり参考になりますね。
個人的考察
でご紹介した睡眠時間と大体同じになっているのも面白いですよね。
やっぱこの辺が一つ基準になりそうですな。