【加筆内容】日本食研究を見てみよう! その4
日本食研究を見てみよう!シリーズの最終回です。
伝統的な日本食の健康リスクについて前向きコホート研究の系統的レビューとメタ分析を行ってみた…!
2022年の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の研究によると、伝統的な日本食の健康リスクについて前向きコホート研究の系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
なんでも伝統的な日本食の健康リスクについては1980年代から大規模なコホート研究が開始されたそうで、疾病予防や長寿に関係していそうなんだとか。
因みに伝統的な日本食ってのは、
- 2018年の京都大学の研究では、大豆・大豆製品、魚介類、野菜、米、味噌汁を食べるのが特徴だと報告していた
- 2020年の国立がん研究センター中央病院の研究では、肉、牛乳・乳製品、甘味料、果物の摂取量が少なく、魚介類、大豆、緑茶の摂取量が多いのが特徴だと報告していた
って感じ。確かにこんなイメージですよね。
また伝統的な日本食は地中海式ダイエットとの類似点もいくつかありまして、これが心血管疾患(CVD)リスクの低下にもつながっているかもしれないんですな。ということで今回この辺を調べてみることにしたらしい。
まず研究者たちは、2020年7月までに発表された該当研究をPubMed、コクラン、JDreamIII、医中誌Webで検索してみたそうです。すると、日本人を対象にした前向きコホート研究として
- PubMed:1,245件
- コクラン:501件
- JDreamIII:37件
- 医中誌Web:77件
の合計1,860件がヒットしたんだとか。
続いてこれらの研究を基準に従い精査、最終的に質の高い58件の研究をピックアップしたらしい。またメタ分析には日本人の食生活パターンの研究9件(総サンプル数469,190人)と特徴的な食品についての研究38件(総サンプル数2,668,238人)を使ったとのこと。
それでは結果をじっくり見ていきますかー。
伝統的な日本食を一番忠実に行っていた人たちは、一番忠実に行っていなかった人たちに比べて、
- 心血管疾患リスク:17%(RR0.83)低かった…!
- 脳卒中リスク:20%(RR0.80)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:19%(RR0.81)低かった…!
とのこと。
やっぱ伝統的な日本食は心臓や血管、脳の健康リスクを下げる働きがあるんですねー。
じゃあ、伝統的な日本食の何が良いのか…?ってことで食品を細かくチェックした物をバーッと見てみましょう…!
【野菜が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:15%(RR0.85)低かった…!
- 脳卒中リスク:11%(RR0.89)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:21%(RR0.79)低かった…!
【魚が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:14%(RR0.86)低かった…!
- 脳卒中リスク:13%(RR0.87)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:12%(RR0.88)低かった…!
【大豆製品が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:6%(RR0.94)低かった…!
- 脳卒中リスク:関係なし。
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:関係なし。
【緑茶が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:41%(RR0.59)低かった…!
- 脳卒中リスク:24%(RR0.76)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:25%(RR0.75)低かった…!
【牛乳・乳製品が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:7%(RR0.93)低かった…!
- 脳卒中リスク:19%(RR0.81)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:関係なし。
【米が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 脳卒中リスク:関係なし。
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:関係なし(男性だけリスクが下がるかも?)
【肉が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 脳卒中リスク:関係なし。
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:男性だけリスクが下がるかも?(34%(RR0.66)低かった)
【その他の食品が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 海藻の心血管疾患リスク:女性だけリスクが下がるかも?(28%(RR0.72)低かった)
- 卵の脳卒中リスク:もしかしたらリスクが下がるかも?(30%(RR0.70)低かった)
- 漬物の脳卒中リスク:もしかしたらリスクが下がるかも?(9%(RR0.91)低かった)
- 食事の多様性の心血管疾患リスク:食事の多様性が高まると女性のみリスクが下がるかも?(34%(RR0.66)低かった)
次は栄養素を細かくチェックした物をバーッと見てみます。
【食塩が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:18%(RR1.18)高かった…!
- 脳卒中・虚血性心疾患リスク:30%(RR1.30)高かった…!
- 虚血性心疾患リスク:関係なし。
- 2020年のNIPPON DATA 研究チームの研究によれば、1,000kcal摂取当たり塩分摂取量が2g増加すると、心血管疾患リスクが11%(RR1.11)、脳卒中リスクが12%(RR1.12)、虚血性心疾患リスクが25%(RR1.25)高くなっていた…!
- 上記結果は、塩分の摂取量が多いと野菜や果物、魚、緑茶などのメリットを打ち消す可能性がある事を示していた…!
【植物性タンパク質が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:19%(RR0.81)低かった…!
- 脳卒中リスク:25%(RR0.75)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:25%(RR0.75)低かった…!
- 2019年のNIPPON DATA 研究チームの研究によれば、植物性タンパク質の摂取量が1%増加すると、心血管疾患リスクが14%(RR0.86)、脳出血リスクが42%(RR0.58)低くなっていた…!
【炭水化物が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:よく分からない。
- 脳卒中リスク:関係なし。
【食物繊維が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:23%(RR0.77)低かった…!
- 脳卒中リスク:16%(RR0.84)低かった…!
- 心疾患・虚血性心疾患リスク:24%(RR0.76)低かった…!
【脂質が最も多い場合と最も少ない場合を比較した場合】
- 心血管疾患リスク:関係なし。
- 脳卒中リスク:31%(RR0.69)低かった…!
- 心筋梗塞リスク:関係なし。
- 脳梗塞リスク:64%(RR0.36)低かった…!
では上記を踏まえたまとめを見てみましょう…!
- 伝統的な日本食を忠実に守るほど、心血管疾患、脳卒中、心疾患・虚血性心疾患による死亡リスクは低くなる…!
- ポイントは、野菜、果物、魚、緑茶、牛乳・乳製品、食物繊維、植物性タンパク質であり、これらの摂取量が多くなるほど、心血管疾患、脳卒中、心疾患・虚血性心疾患のどれか、または全部の死亡リスクは低くなる…!
やっぱ伝統的な日本食は長寿と関係していそうですね。
個人的考察
ということで、伝統的な日本食も健康に良さそうな感じ。
欲を言えば、減塩をプラスするともっと良さそうです。