名著「ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿のルール」により、一躍注目を浴びることとなったブルーゾーン。
ブルーゾーンってのは健康長寿な方々が住んでいる地域のことで世界各地にいくつか存在しております。国籍や人種、気候など違いはたくさんあるのになぜブルーゾーンの方々は健康長寿なのか…。今回はその辺を調べた研究を見ていきます。



イカリア島で健康長寿の秘密を探ってみた…!

2011年のアテネ大学横断研究によると、イカリア島で健康長寿の秘密を探ってみたそうです。
そもそも世界の人口統計によると、80歳以上の高齢者はここ最近急速に増えているんだとか。んで、国連の世界人口ピラミッドは皆が想像するピラミッドの形から立方体へ移行しているらしい。理由は、色々考えられるものの、医学の進歩と妊娠・出産・乳幼児の死亡率の減少、栄養の改善なんじゃないかと考えられております。
そんな状況下の中、更にその範囲を超えて、長生きし、100歳を超えても活動しまくっているご長寿さんがいる地域が世界中に存在することが分かりました。
具体的には、


の4つの地域に住む人々です。
この4つの地域に住む人々の平均寿命は非常に高く、90歳以上の割合が先進国の平均寿命と比べても非常に高いんですよ。研究者はこれらの地域を「ブルーゾーン」と名付けております。因みにブルーゾーンの由来は海が近いから…!ではなく(笑)、研究者が地図にブルーゾーンの地域を丸で囲っていったんですが、その時のペンの色が青色で青丸で囲まれたから「ブルーゾーン」と呼ばれるようになったみたいです。
ブルーゾーンに住む人々は、人種や国籍、地域特性の違いがあるにも関わらず、行動やライフスタイルに共通点があるんですよね。ブルーゾーンの研究者たちによれば、

  • 家族のつながりが高い
  • タバコを吸わない
  • 野菜メインの食事が多い
  • 毎日適度な運動をしている
  • 社会的なつながりが高い

って感じだったそうな。
そしてこのブルーゾーンに新たに加わった地域がございます。
それが、


です。イカリア島は人口約8,000人の島で、伝統的な生活を守っている人が非常に多い地域とのこと。
ということで、今回研究者はこの5つ目のブルーゾーンに選ばれたイカリア島の80歳以上の高齢者の特徴を調べてみることにしたそうです。
この研究は2009年夏に行ったもので、イカリア島に住む成人男女を対象にしたと言うもの。
イカリア島の全地域から参加者を募り、結果、男性631人(平均年齢65±13歳)と女性699人(平均年齢64±13歳)が協力してくれることになったんだとか(因みに参加率は驚異の94%…!)。次にこの中から80歳以上の高齢者をピックアップしていったそうで、最終的に男性89人と女性98人(平均年齢84±4歳)の計187人が参加することになったそうな。この高齢者の方々のライフスタイルの特徴を知るべく様々なアンケートに答えてもらったらしい。
最後に集まったデータを統計処理した結果、以下のことが分かったそうです。
それでは平均寿命からチェックしていきましょう…!

  • 2009年当時、ギリシャの平均寿命は79.78歳で、80歳を超える人の割合が5%未満であった。
  • 2009年当時、世界的に見て80歳以上の高齢者は全人類の1%をわずかに超える程度だった。
  • 2009年当時、北アメリカで80歳以上の高齢者は人口の3%だった。
  • 2009年当時、ヨーロッパで80歳以上の高齢者は人口のほぼ3%(5%を超える国はスウェーデンのみ)だった。
  • 2009年当時、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海地域で80歳以上の高齢者は人口の0.9%未満だった。
  • 2009年当時、アフリカで80歳以上の高齢者は人口の0.4%未満だった。
  • イカリア島参加者で90歳以上の男性は1.6%だった…!
  • イカリア島参加者で90歳以上の女性は1.1%だった…!

う~ん。明らかに長寿率が高いですな。
またこの研究で面白いのが参加者の親についても調べておりまして、

  • イカリア島参加者の親の死亡年齢は、父親が76歳、母親が80歳だった。
  • 上記の年齢は19世紀後半に生まれた人々の平均寿命から見ると、現在のギリシャ国民の平均寿命(20世紀初頭の平均寿命)とほぼ同じ感じだった…!

とのこと。
参加者の親もこれまた長寿だったみたいですねー。
次に80歳以上の男女比ですが、こちらもちょっと面白い感じでして、

  • 2000年の国連の人口統計データに基づくと80歳以上の女性と男性の比率は約2:1だった。
  • イカリア島の比率ははるかにそれより低く、女性100:男性90又は女性1.1:男性1だった…!

って感じ。
つまり、イカリア島の男性は世界中の他の男性よりも長寿…!ってことですね。素晴らしい…。
次はイカリア島の方々の特徴についての結果をバーッと見ていきましょう。

  • 男性の大部分は既婚者だった。
  • 女性の大部分は既婚者だったが夫はすでに亡くなっていた。
  • 理由は古いギリシャの伝統のせい。つまり男性ははるかに若い女性(大体5〜15歳年下)と結婚するのが普通だから。
  • 参加した高齢者の約半分が低収入だった。つまり必要額より少ない収入しかなかった。
  • にもかかわらず大部分の人々、特に女性は年金受給を受けていなかった。
  • 子供や親戚などと一緒に自分の家に住んでいた
  • 男性の3.3%、女性の4.1%は未だに仕事をしていた
  • 男性の3.4%、女性の27.6%はガーデニングや家事など家の中で仕事をしていた。
  • 学歴が非常に低く、平均就学年数は7.4±3.4年で、そのうち20.3%が小学校を卒業していなかった。

他の研究でポイントになっている項目と同じ部分もあれば、あれまな結果となっている部分もありますね。例えば、他の人と一緒に住むことや仕事をしているのは分かりますが、収入の少なさはメンタルへの悪影響があるって話もありますし、学歴が低い場合も何かとその後に影響があることが多いんですが、寿命には関係ないんですかね…。幸福度とかには影響大だったのに。
それではメインであるライフスタイルの特徴を見ていきましょう…!

  • 男性は女性に比べて身体的に活動的だった。
  • 男性の10人中9人、女性の10人中7人が毎日活動(主に仕事)をしていた…!
  • これは先行研究でギリシャの8つの島とキプロス共和国の高齢者を調べたデータよりもはるかに高かった。
  • 参加者の男性の約半数と女性の4人に1人が身体的に活動的だった…!
  • 普通、加齢とともに歩行や活動は低下するはずなのに、90歳以上のイカリア島の参加者は10人中6人が依然として身体活動を続けていた(つまりNEATが非常に高い
  • 喫煙者は男性も女性もほとんどいなかった
  • 但し、ほぼ全ての男性(99%)と女性32%が過去にたばこを吸っていた。
  • 地中海式ダイエットを厳格に守っており伝統的な食習慣への強いこだわりがあった…!
  • うつ病の症状は男性よりも女性の方がはるかに高かった(これは他の地域と同じ)
  • にもかかわらず平均スコアは非常に低く、この年齢層で考えるとうつ病の症状が存在しないに等しかった…!
  • イカリア島のほぼ全ての参加者が定期的に昼寝をしていた…!
  • 90歳以上の参加者全員が正午に昼寝をしていた…!
  • 定期的に昼寝をしている人はそうでない人に比べうつ病スケールのスコアが低かった…!
  • ほとんどの参加者は配偶者や親戚と一緒に住んでいた…!
  • そのため孤独のダメージが最小限だったと思われた…!

いや~、なかなか勉強になりますね。
ではイカリア島の長寿の秘密をまとめてみましょうか。

  • 仕事や活動で身体を動かす…!
  • 健康的な食事をする…!
  • タバコは厳禁…!
  • しょっちゅう人とかかわる…!
  • 昼寝をする…!
  • ストレスを溜めない(うつ病の発症を抑える)…!

言うは易く行うは難しって思いますが、遺伝等に頼らず、自分でどうにかできる項目が多いのが救いでしょう。



個人的考察

最後に上記研究での食事情報を下記にまとめておきます。

  • 1日のカロリー摂取量:男性1425±532kcal:女性1087±460kcal
  • 1日の飲酒量:男性186±181mL:女性117±114.04mL
  • 1日のコーヒーの摂取量:男性339±260mL:女性293±228.25mL
  • 1日のお茶の摂取量:男性109±84mL:女性97±90.53mL
  • 以下、1週間当たりの各食品の摂取量
  • オリーブオイル:男性6.8±2.7:女性5.3±2.5
  • シリアル:男性1.7±2.5:女性0.9±1.7
  • 果物:男性5.5±3.1:女性3.9±2.7
  • 野菜:男性4.8±2.8:女性3.5±2.8
  • 豆類:男性2.0±1.5:女性1.3±1.1
  • :男性2.1±1.6:女性1.5±1.2
  • 根菜類:男性3.3±0.9:女性3.1±0.8
  • お菓子:男性1.2±2.4:女性1.3±2.1
  • 赤身肉:男性1.8±1.9:女性1.2±1.4

やっぱ地中海式ダイエットはおすすめだな…。
それとブルーゾーンのお話はウェルビーイングスーパーエイジャーにもつながる話なんで、その辺もぜひ押さえておきたいポイントです。



参考文献