先週の続きです
今回はポケモンGOと身体活動の関係を調べたタイの研究を見てみましょう。



ポケモンGOで身体活動が増えるのか調べたけど先行研究と矛盾する結果になったぞ…!

2018年のワライラック大学観察研究によると、ポケモンGOで身体活動が増えるのかタイの大学生を対象に調べてみたそうです。
そもそも世界的にも運動不足ってのは問題になっていますが、それはタイでも同じ感じみたいでして、特に若者の運動不足が深刻化してきているんだとか。なんでも2016年のワライラック大学の研究によれば、タイの医大生(平均年齢20.93±1.82歳)のうちの半数以上(50.5%)があんまり運動していなかったらしいんですよね。
そこでこの問題にポケモンGOが使えるのか調べてみることにしたそうです。また3ヶ月にわたってポケモンGOの効果の持続性についても見てみたそうな。ポケモンGOと運動の関係を調べた長期の研究は貴重なんでありがたいですな。
この研究は、2015年にタイの南部にあるワライラック大学の医学部に所属していた大学生を対象にしておりまして、3つのキャンパス(ナコーンシータマラート、トラン、プーケット)で実施したとのこと。
参加者は1年生と4年生を除いた2,3,5,6年生でして(1~3年生はナコーンシータマラートキャンパスで、4~6年生はトラン又はプーケットキャンパスに通うため、それぞれのキャンパスの1年目は除かれた)、まず全員(189人)に協力を依頼してみたそうな。
次に協力をOKしてくれた人の中から、ポケモンGOを最低1ヶ月以上プレイしている人をピックアップしていったらしい。
その結果、健康な医大生26人がサンプルとして選ばれたそうです。因みにこのうちの19人が男性で7人が女性ということでした。また平均年齢は22.04±1.70歳で、14人(約半数、53.8%)の方が健康的な体重だったとのこと。
この参加者たちに、

  • プロフィール(学歴、性別、生年月日、身長、体重、お小遣い、住所、基礎疾患の有無)
  • ポケモンGOのプレイ状況(総プレイ時間、プレイ中の移動方法、プレイする理由、プレイ中のケガ)
  • 身体活動状況(Global Physical Activity Questionnaire(GPAQ)のタイ版でチェック)

といったアンケートに答えてもらったらしい。
因みにGlobal Physical Activity Questionnaire(GPAQ)ってのは、日本語に訳すと「世界標準化身体活動質問票」と言いまして、以前に紹介した国際標準化身体活動質問票(IPAQ)と並ぶ、世界的に有名な身体活動量の評価方法(普段の運動量の評価方法)なんですな。
どんなものなんか気になる方は下記をご覧ください。


これらのアンケートを、実験開始時、ポケモンGOをダウンロードしてプレイしてから1ヶ月後(2016年9月)、3ヶ月後に収集したそうで、最後に集まったデータを統計処理したみたい。
その結果がこちら。

  • スタート時と1ヶ月後、1ヶ月後と3ヶ月後の間にカロリー消費量の有意な違いはなかった。
  • スタート時の座り時間の中央値は週480分だったが、1ヶ月後は週270分と大幅に減少していた…!
  • 3ヶ月後には座り時間の中央値が週300分になっていたが、これは1ヶ月後の結果と有意さはなかった。
  • スタート時、1ヶ月後、3ヶ月後の座り時間の減少は有意さがあった…!
  • 参加者26人中24人(92.3%)が週に少なくとも3~5日ポケモンGOをしていた。
  • 1週間の平均プレイ時間は360分だった。
  • ポケモンGOをする主な理由は、楽しいから(22人・84.6%)、暇つぶしになるから(21人・80.9%)、ストレス解消になるから(20人・76.9%)だった。
  • ポケモンGOの仕方は、歩いて(23人・88.5%)、車で(18人・61.5%)、バイクで(13人・50%)、走って(6人・23.1%)、自転車で(3人・11.5%)だった。
  • ケガをした人は1ヶ月後にはいなかった。
  • 3ヶ月後、ポケモンGOを続けている人は26人中11人だけだった。
  • 11人中7人(63.6%)が週1~2日プレイ、11人中4人(36.4%)が週3~5日プレイしていた。
  • 1週間の平均プレイ時間は60分だった。
  • ポケモンGOをする主な理由は、暇つぶしになるから(9人・81.8%)、ストレス解消になるから(9人・81.8%)だった。
  • ポケモンGOの仕方は、歩いて(5人・45.4%)、車で(5人・45.4%)、バイクで(2人・18.2%)、走って(1人・9.1%)だった。
  • ケガをした人は3ヶ月後にはいなかった。

んで、ここからカロリー消費量・座り時間・ポケモンGOのプレイ時間の関係を見てみると、

  • 1ヶ月後と3ヶ月後の両方で、カロリー消費量とポケモンGOのプレイ時間の間に有意な関係はなかった
  • 1ヶ月後と3ヶ月後の両方で、座り時間とポケモンGOのプレイ時間の間に有意な関係はなかった

って感じ。
つまり、

  • 3ヶ月見てみたけど、ポケモンGOで運動を増やしたり、ダイエットは出来ないのでは…?
  • まぁ、ポケモンGOに関係なく、何故か座り時間はめっちゃ減ったけど…。

という、先行研究と矛盾する結果となりました。
あれま…!な感じですね~。
この理由について研究者曰く、

  • 先行研究は4~6週間で調べていたけど、今回、3ヶ月で調べたからではないか…?
  • ポケモンGOをする主な理由が運動ではなかったから(運動目的の人は1ヶ月後は7人、3ヶ月後は2人しかいなかった)ではないか…?

とのこと。
従来の研究の倍の期間で調べたことにより、ポケモンGOプレイヤーが大幅に減少していたんですよね。そんで残った人を見ても頻度も時間もモチベも全部下がっていたと。
確かに、これまでみてきたように先行研究では時間の経過とともに身体活動が減ってきていましたし、目的によってその効果を得られる…!って研究もあったんで納得ですね。
因みにこの結果を受けて研究者は、

  • ポケモンGOとモチベーションアップ法や社会的サポート(友達とする、集団で行うなど)をプラスすると、上手くいくんじゃないか…?

とアドバイスをしておられました。
確かに習慣化するにはポケモンGOだけではきついかもしれんですな。



個人的考察

もちろんこの研究にも弱点があって、例えば、観察研究であったり、サンプル数がわずか26人であったり、自己申告アンケートに基づいていたりしております。
但し個人的には、この結果は納得でして、やはりポケモンGO(位置情報ゲーム)は運動のきっかけとして使い、効果は1ヶ月ぐらいできれる、それまでに習慣化のテクニックを使って習慣化するか、モチベーションアップ法を使い、モチベを維持向上していくのが良いのかな~と思っております。



参考文献